14.魔法2
「ヒューガさんは土属性の相性がとてもいいですね」
見事に相性が良い属性が土だけだった。《土操手》なんていうユニークスキルを持っているぐらいだから、そうじゃないかという思いはあった。あったけれど、《異世界人》なのだからもう少し面白みがあったりしないかなとはちょっと思っていた。
「ただ、他の属性への相性がほぼないですね」
少し言いにくそうに言われた。
本で見た限りでは相性がいい属性の色が前面に出ると書いてあって、二属性と相性がいい場合は二属性の色が前面に出る。他の属性の相性も少しはあっているならその色が小さいが見えたりするらしい。俺の場合土属性の相性は良いが、他の属性の相性が皆無のようだ。
これは……、頑張れば他の属性の魔法も使えるにせよ、とりあえずは《土魔法》を覚えて余裕が出来たら他の魔法を覚えるといった形が良いな。下手にあれこれ手を出すなんて無謀だ。
第一魔法なんてものが存在しない世界からきた俺が魔法をすぐ覚えられるとも思っていない。
「そうですか」
「はい。でも落ち込む必要はありません。土属性魔法の相性がここまでいい人ははじめて見ましたから。そこをきわめて行けば凄い魔法使いになれると思います」
「そうなんですか?」
「ええ、そうです。例えば……」
ウーヤさんが目の前で水晶に触れた。
ウーヤさんの触れた水晶の反応は、俺のものとは違った。なんていうか、割と色とりどりだった。その中でも一番強いのは赤。で、他にも水色とかも映っていた。
「私は火属性と一番相性がいいのがわかるでしょう? ヒューガ様の色が私の色以上濃いのもわかると思います。色の濃さはその属性との相性を表しますから、ヒューガ様は土属性と驚くほどに相性が良いことになります。相性が良いという事は魔法も覚えやすいという事になります」
「へぇ……なら俺は土属性なら覚えやすいってことですか」
「ええ。これだけ相性が良いのでしたらすぐに使えるようになると思います」
「……どの属性が覚えやすいかって才能が大きいんですね」
「それはそうですよ。完全にこれは才能の問題です。どうしようもできません」
バッサリ言われた。なんとも夢がない。まぁ、頑張れば相性をよくすることが出来るってだけでも夢があるといえばあるといえるのだろうか。
「そうですか。では魔法を覚えるための方法は?」
「そうですね。魔法スキルを持っている方に習う事も手ですが、ギルド内で魔法書も持ち出しは不可ですがあるのでそれで訓練場で練習をするのも手ですよ。どうなさいますか?」
「魔法スキルもちにならう場合はお金はどのくらいかかりますか?」
「そうですね、本当に世間一般的に魔法使いとして認められている方を雇うとなると一日白銀貨五枚はくだらないです。それ以外の方に習うにしても、金貨五枚はかかります」
「高いですね」
「それはそうです。初心者が魔法を学ぶ場合は暴走する場合もありますし、教える側も結構大変なんですよ。魔法をはじめて覚えたものはすぐに魔法を使いたがり、それで騒動になることも珍しくありませんし、その場合魔法を教えた師への非難も起こったりもしますし……それも含めての高額の報酬です」
「そうなんですか」
「はい。そうです。ですからヒューガ様も魔法を覚えたとしても街の中でむやみに発動させたり、自分の身の丈にあわない依頼をうけて仲間に迷惑をかけたりしないようにしてくださいね」
「そんな人もいるんですか?」
「過去に居ました。それで、どうなさいますか? 雇いたいというのならば斡旋させていただきますが」
「魔法書を借りる場合はお金は?」
「一日金貨一枚になります」
「結構高いですね」
「それはそうです。貴重なものなので。ちなみに破損した場合は白銀貨2枚の賠償金になりますので気を付けてください」
魔法書は貴重なものだからといって賠償金が高すぎる気もするが、まぁそれだけ払わないように慎重に扱ってくださいということなのだろう。
異世界においてもお金というのは重要である。お金を借りられる人もいないし、闇金とかに手を出したら明らかにやばいし、お金の管理はきちんとしようと俺は思った。
「えーと、じゃあとりあえず一日借りていいですか」
「はい。大丈夫です。それでしたら手続きをしますのでカウンターに戻りましょう」
それにしてもウーヤさんは丁寧である。というか、この街の人々は基本的に丁寧で、優しい人が多い。が、正直これが異世界にとって普通かと考えると違うと思う。だって、こんなのが普通とかありえないと思う。
此処は異世界であるのだから地球よりはキツイ世界である。少なくとも魔物なんて危険生物がいる時点で命の危険に脅かされているわけで、この街にいる間はともかく外の街に行くのならばもっと注意する必要もあるだろう。尤もこの街も優しいだけではないだろうから、注意は必要だが。
「はい。金貨一枚受け取りました。魔法取得頑張ってくださいね」
「はい」
でもまぁ、この優しい受付嬢のウーヤさんの事は信用できると思っている。




