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12.冒険者3

 ケイリンさんに二日間、冒険者としての在り方を教わった。魔物討伐における基礎は、駆け足でだが、色々教わることが出来た。

 二日間しか教われなかったのは本当に残念な事だが、お金がないのだから仕方がない。

 少しずつ稼ぎの中から貯金をして、そしてこの街から出ることも目標としているのだから無駄遣いは出来ない。

 そのために一人で生きていくための術をもっと身に付ける必要がある。

 ケイリンさんと一緒の魔物討伐で少しはコツをつかめた気がするので、あれから少しずつだが、魔物討伐をこなしたらEランクには上がることが出来た。

 秋田たちのパーティーはもうすぐCランクらしい。ランクを上げるスピードが速すぎるだろと思わなくもないが、俺も含めて異世界人は《ユニークスキル》と呼ばれるものを所持しているのだ。それだけ現地の人々に比べて強者でいられるということでもある。

 特に秋田たちの《ユニークスキル》は戦闘でも役に立てるようなものである。……俺の《ユニークスキル》は正直最近使っていないのもあり、やっぱりよくわからない。

 今は《剣》のスキルのレベルを上げる方が効率が良い。が、もう少し余裕が出来たらせっかくの《ユニークスキル》なのだから色々試してみようと思っている。

「ヒューガさん、お疲れ様です」

 冒険者ギルドに顔を出したらウーヤさんが俺の事を迎え入れてくれた。受付係はほかにもいるのだが、いつもウーヤさんが俺の対応をしている。

 この前なんでか聞いたらこの冒険者ギルドの中でも古株であるウーヤさんが渡り人である俺を含めた冒険者になった者たちの面倒を見ることになったらしい。というか、ウーヤさんって、種族が人間でないのもあって年齢不詳である。でも受付の中には見た感じ人間でいう四十代もいるし、若く見えてもウーヤさんはそれなりに年がいっているのであろう。

 ちょっと種族間のギャップにやられてしまいそうになる。でもよく考えてみたら俺も、寿命が延びているらしいから(実感はわかないが)、そういうギャップにもっと慣れなければならないなと思う。

「ウーヤさん、依頼の魔物以外もたまたま倒せて解体して持ってきたんですけど」

「まぁ、そうなんですか? それでしたらそちらも一緒に買取口にお出しください。懇意にしている防具屋などがありましたらそちらに素材を持っていき、防具を作ってもらうこともできますが」

「《アイテムボックス》を持っていないので保存が出来ないんで売ります」

 それにしても冒険者の中には《アイテムボックス》を買えないものも結構いて、普通の皮袋とかに詰めている死体とかそこそこにおうのだが、笑顔で迎え入れるウーヤさんは受付のプロだと思う。

 お金がたまったら《アイテムボックス》を買いたいものだが、とりあえず第一にこの街から出る事も目標にしている。

「ウーヤさん、騎士になった者たち、派手にやっているんですよね?」

 その理由の一つが騎士になった竜崎たちである。

「ああ、そうね。新しく騎士になった渡り人たちは一定基準鍛えてから王都へと向かうそうなのだけれど、その鍛錬の中で一際目立つ存在たちが居るらしいの」

 王都とこの街はそこそこ離れている。この街で騎士たちがある程度渡り人を鍛えてから王都に向かうことになっているのは、それなりに道中が厳しいからであるらしい。正直渡り人としてこの世界に落ちてすぐの存在を連れて行っても途中で死亡者が出る可能性もあるらしい。いくらこちらでいうチート能力を持っていたとしても、経験不足な存在を連れて行ってもどうしようもないだろう。

 あと、王宮だと権力争いとかも結構あるからもう少し落ち着いてから連れて行くっぽいかな、話聞いた限り。

 やっぱり騎士になるとか選ばなくてよかった。そういうのに関わるのも正直面倒だし、ずっとクラスメイトたちと一緒に行動するのも疲れるし。

 竜崎たちは《ユニークスキル》を使うための鍛錬をしていて、その中で既に目立ってきているのだ。いつまでもこの町に留まっていたら、竜崎たちと一緒に来た渡り人だと注目されて面倒なことになりそうだ。

 王宮に保護されている騎士たちはともかく、俺は一人だし、利用されたらたまったものではない。

 そのためにも俺自身も変な争いとかに巻き込まれないように力をつけなければ。

 とりあえずこの世界でどう生きていくかをもっと考えて行動しなければ。

「……その頃には俺も他の街に行きたいんですが、どこの街なら行きやすいかなどありますか?」

「そうねぇ。近くには二つ街があるわ。一つは漁業の盛んなサチラン。もう一つは鍛冶師の街と呼ばれているドワン。ただドワンの方は、村を五つほど経由していかなければならないからちょっと遠いわね。それと他の街に行くのなら商隊などに乗せてもらって移動したほうがいいわ。一人での移動は危険ですもの。ヒューガ様は冒険者ですから護衛の一人として一緒に行くのが安全だと思うわ」

 ウーヤさんは俺の質問にすらすら答えてくれた。

 近いのはサチランか。異世界の魚料理も中々気になるが……。それより鍛冶師の街というのに何だかひかれる。この世界にやってきてから全然できていないが、俺は何かを作ったりするのは好きなのだ。地球にいたころから自分で色々作っていたのだ。というか、作れるものは割と何でも作りたいって思っていたため、時計を作ってみたり、裁縫もして服を作ってみたり、工作をして椅子を組み立ててみたりとか結構色々やっていた。流石に鍛冶の経験はない。異世界でそれができるのなら正直やってみたいと思った。

 異世界人に鍛冶を習ってみたいが、そういう場合「教えてください」って頼み込めばいけるんだろうか? ちょっと考えたら少しだけわくわくしてきた。何か思いっきり作ってみたい気になってくる。

「ドワンの方に行きたいです」

「そう。ならそちらに向かう依頼がないか探しておくわね」

「ありがとうございます」

 お礼を告げて俺は冒険者ギルドを後にするのであった。





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