プロローグ
見切り発車です。
なんでもない普通の授業中。
高校二年生という、来年になれば大学受験で忙しくなるっていうそんな年の夏。
俺の所属する2-Aは突如としてよくわからない現象に巻き込まれた。
授業が終わるチャイムを聞いたかと思えば、不思議な真っ白な空間に居たのだ。クラスメイト四十人と、そして担任とで。
「何だ、ここ!?」
「何が起こっているの?」
声を上げるものも沢山居た。それはそうだろう。
俺--日向彪牙ももちろん、この状況には驚いている。ただあたりを観察した。何が起きているかわからない状況において、周りを見て、どういう状況か確認する事は重要だとそんな風に思っているからだ。
しかしいくら周りを見渡してもその場に存在するのは慌てふためくクラスメイトたちと担任。そして何処までも広がる真っ白な世界。
これは夢なのではないかと疑いたくなるほどの、非現実的な光景しか目の前には広がっていない。
頬を抓る。
痛みは確かにあった。
そんなこんなしているうちに、その場に声が響いた。
『そなたたちには異世界に行ってもらう』
そんな、理解不能な声が。
「どういうことだよ!」
「異世界って何よ」
「あんたなんだよ!」
声を上げるのはクラスの中でも中心的な男女たちだ。あとは大体状況が呑み込めないといった様子でぽかんとしている。
『我が世界に刺激を与えるために異世界の住民であるお前たちを我が世界にやることにしたのだ』
よくわからない存在は、こちらの話を一切聞く気はないらしい。何とも自分勝手なものである。
『そなたらに一つずつスキルを与えよう』
またよくわからない事を言われた。スキルってあれか? ゲームとかであるような奴か?
やっぱり現実的ではない。
でもこれが現実だとして、俺たちは全員異世界に送られるらしい。一つのスキルを与えられて。
理由は世界に刺激を与えるためと言っていたか。小説とかであるような勇者召喚とかそういうものとは違い、明確な理由はないのだろうか。
となると、このこちらに向かって声を発している存在―――何者かはわからないが、こんな大それたことを出来るのだから神か何かなのかもしれない――は、ただ世界に刺激を与えたいだけであって、俺たちが死のうがどうでもいいという事だろう。
『ステータスでそれは確認できる。では、我が世界で楽しい人生を』
などとそれだけを告げられたかと思えば、目の前が光った。
そして次の瞬間、俺は、というか、俺たちは森の中へと居た。
「本当に異世界?」
「帰れないの?」
「なんで、こんな――」
「みなさん、落ち着いてください!」
困惑の声をあげるクラスメイトたち。そして落ち着かせようとする担任である三森先生。
周りの声を聞きながらも俺は「ステータスで確認できる」といっていたことを思う。あれは、ゲームみたいに出るということだろうか?
「ステータス」
とためしに言ってみるが出てこない。
「……ステータス、オープン」
次にそこまで言ってみる。そうすれば出てきた。
日向彪牙
レベル1
種族 人間
年齢 十七歳
HP 10
MP 15
STR(筋力値) 10
VIT(防御値) 11
INT(知力値) 27
DEX(器用値) 40
AGI(俊敏値) 7
LUC(運値) 15
CHARM(魅力値) 12
ユニークスキル
《土操手レベル1》
そんなステータスが現れた。
《土操手》---それが、俺に与えられたスキルらしかった。