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ぼくに気づいた君はぼく

作者: 有機

 茜色に染まった木目の床をぼおっと眺める。管楽器の鳴き声や運動部の喧騒を意識の端に感じる。開きっぱなしの窓から生暖かい風が桜の花びらと舞い込んでくる。


「ゆうりくんってさあ、ほんとーはゆうりくんじゃないんでしょ」


 身長が小学生ほどしか無い女の子、夕張遊離が不安げに僕にそう話しかける。まるで化物を見るような目つきで、獣に話しかけるような口調で。


「どういうことかな。ごめんね、よくわかんないよ」と話しかける。

「僕が僕じゃないって、どういうことかな」


 この女の子は見た目に反して馬鹿ではないので、何かしら意味は持たせてあるのだろう。そして、こういう分かりにくい文章は自分で単語を補完することで分かりやすくなることがある。つまり、僕(の今の性格、行動)が僕(彼女が思っている僕のイメージ)じゃない、みたいな。あるいは僕の名前が本当はゆうりでは無くて、例えばヘルツェゴビナだったりしても彼女の言葉は正しくなる。他にも何通りか考えられるけれど、こういう場合は発言した本人に聞くのが一番早い。勝手にこちらが想像していてもエネルギーの無駄だ。会話は将棋ではない。


「さいきんゆうりくんはおかしいよ。おかしすぎるよおかめはちもくだよ」

「岡目八目にこの状況に沿うような意味なんてないよ…」


 語感だけで発言してやがる…、ラッパーか貴様は。むしろ脳内パラッパラッパーか。

 と言うか、発言が漠然としすぎている。もっと詳細を聞きたいのだ。


「最近、おかしい?具体的に教えてくれるかな。そんなに怖がらなくても良いから、落ち着いて。取り敢えず、座って」


 他人の席の背を掴み、彼女側に向けて置いてやる。彼女は躊躇いつつも座面を払い、ちょこんと座る。少し清涼剤の匂いが香る。僕が促すと、彼女は話し始めた。


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