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俺は異世界でも平和に暮らしていたい  作者: 夜乃
変わり始めた日常
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第6話 海斗の旧友

優希がギルド《ヘルパー》の従業員になってから1ヶ月が過ぎ、海斗はギルドマスターから頼まれたある依頼書を眺めながら、溜息をついた。


「どうしたのよ?さっきから溜息ばかりついて」


優希は今日の仕事であった、ギルドの帳簿をつける作業の手を一旦休め海斗に質問した。


「ああ、ギルドマスターから頼まれた依頼なんだけどさ・・・」


海斗はそう言いながら、優希に依頼書を見せた。


「ええと、聖ライラス学園の臨時講師。別にいいじゃない、教師の仕事ぐらい。どうせ、この世界のほぼ全ての知識を知っているんでしょ」


「ほんの2、3歳しかかわらない奴らの勉強を見るって凄いプレッシャーだよ・・・」


「てか、聖ライラス学園ってどんな学校なの」


「まさか、知らないのか・・・」


海斗は呆れたように優希を見つめた。


「知らないものはしょうがないでしょ」


「この国で一番優秀な教育を受けられるところだ」


「例えばどんなことを教えるの」


「そうだな、普通の学習から、モンスターの知識・戦闘訓練・魔法の学習・武器の扱い方・スキル習得などかな」


「魔法については海斗に適任じゃない」


「まあ、そうだな」


「でも、流石に武器の扱い方やスキル習得は苦手でしょ」


「いや、そうでもない」


「え・・・、なんで?」


「おい、俺は魔法職の他にも、アサシン、忍者、罠師(トラップメーカー)のスキルは全部習得しているぞ」


「そうなんだ」


「当たり前だ。ソロの魔法職にとって、アサシンの隠密スキルや忍者の投擲スキル、罠師の罠発見スキルなどはとても便利だからな」


「なるほど」


「まあ、それのおかげて色々な剣士職を体験しているから武器の扱いも完璧だぜ!」


「なおさら、適任じゃない」


「ですよねー。ハァ~、まあいいか。それに向こうに行くならあいつにも会えるだろうし」


「あいつ?」


「うん、俺の親友の・・・・」


「それは俺のことかな」


海斗が名前を言おうとした瞬間、一人の男が仕事部屋に入ってきた。


「え~と、どちら様でしょうか」


優希は困惑しながら部屋に入ってきた男に話しかけた。

海斗と部屋に入ってきた男はありえないものを見た顔になった。


「え・・・、僕を知らないの・・・?」


「おい、優希・・・・冗談だろ」


「え、いや、ハハハ。海斗説明して」


「ハァ~、こいつは俺の親友で、ミローネの人間側の代表者(マスター)をやっている、シルフィス・エンハルトだよ」


「あ、そう言えば、海斗の部屋にある写真で見かけたような」


「おい・・・・。少しはこの国について勉強しような」


海斗は優希にそう言いながら、部屋に入ってきた男、シルフィスのほうを向いた。


「で、シルは一体何しに来たんだ」


「ああ、久々に親友の顔を見に来たんだよ。でも、驚いたよ、こんな可愛い彼女を作っていたなんてね」


「彼女じゃなくて、幼馴染で今このギルドの従業員をやってもらっているだけだし」


「へぇ~。それじゃあ、この子も別の世界から」


「え・・・。どうしてそれを」


優希はシルフィスの言った言葉に反応した。

海斗は優希の反応を見て思い出したように言った。


「ああ、そう言えば、まだ優希に入ってなかったか。実は俺が異世界人であることはこの国で俺と親しい奴全員に話してあるんだよ」


「聞いてないんだけど・・・」


「うん。今言ったからな」


「本当にカイは偶にだけど抜けているよね。あの時もそうだったし」


「仕方ないだろ、俺だって人間だ」


「とりあえず、場所を移動したほうがいいんじゃない」


優希がそう提案すると二人はうなずいた。

三人はリビングまで移動した。

そのあと、優希は三人分のお茶とお茶菓子を持って来る為に、キッチンに移動した。

海斗とシルフィスはそれを見送ると、向き合い話を始めた。


「カイ、あの子ってもしかして」


「ああ、前に南大陸で勇者召還の時に間違って呼ばれたそうだ」


「でも、南からよくここまでこれたね」


「あいつも、俺と同じように能力を引き継いでいるから、不思議じゃないだろう」


「そうなんだ。まあ、それは置いといて、本題なんだけど・・・・魔人たちが動き始めたらしい」


「ふ~ん。まあ、勇者が召還されたんだからそろそろだとは思っていたんだが」


「とりあえず、まだ確証は無いけどそれらしい動きを見たとの報告は何件か上がっているから気をつけてほしいんだ」


「でも、俺なんかに教えていいのか」


「ハァ~、何を言っているんだい。この大陸いや、この世界の中で最強のくせに」


「え~~、そこまで強くないぞ」


「嘘つけ、1年前の魔軍の進軍があった時、一人で戦場にいる敵をほぼ全滅させて、さらには魔人も何体か仕留めたくせに」


「あの時は若かったよな・・・・」


「今も若いだろうが・・・・。まあ、とりあえず頭の片隅に置いといてくれ」


「了解したよ」


「あと、俺からの依頼は届いているかい?」


「依頼?」


海斗は首をかしげた。


「お前から依頼って受けたっけ?」


「ほら、聖ライラス学院の教師の件」


「お前の依頼かよ・・・・。で、何であの依頼を俺に?」


「実は、高等部1-Sの生徒たちに色々と問題があって、教師たちが可哀相なんだよ」


「どんな・・・・?」


「生徒たちが優秀すぎて能力の低いの教師たちを次々と担当からやめさせているんだよ・・・・・」


「生徒たちもそうだが、まずは教師たちの能力を何とかしろよ・・・・」


「そんな時間が無いからお前に頼んでるんだよ。まあ、ついでに教師たちの強化なども追加で頼むわ」


海斗は頭に手を当てた。

シルフィスはそう言いながら、苦笑いを浮かべた。

そして、二人はほぼ同時に溜息をついた。


「まあ、仕事の話はこれくらいにしようか」


「だな。そろそろ、優希の奴もお茶を持ってくるだろうし」


カイとがそう言うのと、ほぼ同時にドアが開き、お茶のセットを持ってきた優希が中に入ってきた。

優希は持ってきたお茶を海斗とシルフィスの前に、そして残った一つのカップを自分が座る場所の前に置き席に着いた。


その後、三人は仕事とは関係の無い世間話や海斗やシルフィスの出会いの話、そして優希がこの世界に来た時の話などで盛り上がったのだった。


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