第3話 次の日の朝
海斗はこの世界に来てからはいつも大体朝の7時半から8時の間に起きるようにしている。
この日も海斗はいつもと変わらず、その時間帯に起きた。
「ふあぁぁぁ~」
海斗は大きな欠伸を掻きながら、ベットから起き上がり体を伸ばした。
「さて、着替えて朝食でも作るか。あ、今日は二人分か」
海斗はそう言うと、自室のドアを開け下の階にあるキッチンに移動し、適当に買っておいたパンに合いそうなおかずを簡単に作り、テーブルに並べるとまだ寝ているはずの優希を起こしに向かおうとした、丁度その時キッチンのドアが開き優希が中に入ってきた。
「おはよう、優希」
「おはよう」
「今、朝食が出来上がって呼びに行こうとしていたところだったんだが」
「ふ~ん。てか、あんた料理できたの?」
「さすがに一人暮らしだし、料理ぐらいできなくちゃね」
「そうなんだ。まあ、出来上がっているならもう食べていい?」
「どうぞ」
「それじゃあ、いただきます」
優希はテーブルに着き、両手を合わせてからパンを一口食べた。
「おいしい」
「だろ。最近できたばかりのパン屋で買ったんだ」
「へぇ~」
「まあ、とりあえずあの部屋はお前の好きに使っていいから?」
「マジで?」
「マジマジ。まあ、それはよしとして、お前これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「だから、仕事とかしないのかって聞いてるんだ?」
「う~ん。仕事はするけど、まだ考え中ね。あと、冒険者ギルドにも一応登録しておきたい」
「え・・・」
海斗はありえないものを見るように優希を見た。
「べ、別にそんな顔しなくてもいいじゃない」
「いや、普通は最初に登録しておくべきだろ。俺だってこの世界に来てから一番最初にしたことは冒険者ギルドの登録だぞ。てか、登録してないのにここまでよく来れたな・・・・」
「仕方ないじゃない。元々勇者の手伝いをさせられていたんだし」
「仕方ないな」
海斗はそう言うと、椅子から立ち上がり自室に戻り、数枚の紙を取ってきた。
「これ何?」
「マスターの特権でお前のギルドのランクを最初からAランクになるように身分証明と推薦状を書いてるんだよ」
「本当にいいの?」
「仕方ないだろ。お前のレベルでDランクから始めたら、他のDランクの冒険者たちが可愛そうだ。それにお前のレベルならSランクでも大丈夫そうだが、まだ実力ががよくわからないからSランク推薦はできないぞ」
「大丈夫よ。そこからは自分の力で頑張るわ」
「そうか。あと、お前武器は持ってないのか?」
「武器ならゲームのときは持っていたけど、今は持っていないわ」
「え・・・このゲームやっていたのか」
「当たり前でしょ。だからレベルが800を超えてるんじゃない」
「そうか、ならゲートを使えばいいんじゃないのか」
「ゲート?」
「うん。ほら、ゲームのときもあっただろ。アイテムを収納するときに使ったあの呪文。俺もこの世界に来たときは分からなかったんだけど、この世界でもそれができるんだよ」
「でも、アイテム収納できたとしても、何か意味があるの」
「だから、そこに使っていた装備一式やアイテム、お金が入ってるんだよ」
「そうなの?」
優希は疑いながらもゲートを発動させ中に何か入っているかを確認した。
そこには優希がゲームで使っていた職業の時に使っていた装備や溜めたお金、アイテムなどが入っていた。
優希はとりあえず、自分が使っていた装備品を装備した。
「職業が変わっていたけど装備できた」
「剣士職で二本の剣が装備できて防具は軽めのものだから、ブレイドダンサーだったのか、優希」
「よくわかったわね」
「大体の防具を見ればわかるよ。でも、意外だな」
「何がよ?」
「いや、ブレイドダンサーって剣士職の中でも素早さが高くて二本の剣が装備できて手数の多い超上級で人気のある剣士職じゃん。でも転職条件も俺のアークビショップよりは簡単だけど、それでも複数の剣士職を極めなきゃいけないから、この職業の奴は廃人プレイヤーって呼ばれているくらいだぜ。それをゲームをあまりしてなかったはずのお前がなっているとは」
「う、うるさいわね。別にいいでしょ。人がどんな職業についていようが」
「まあ、そうだな。てか、俺も人のこと言えないぐらいこのゲームをやっていたし」
海斗はそう言いながら笑った。
優希はそれを見ながら溜息をついた。
「うん?どうした、優希」
「なんでもないわよ」
「そうか。っとこれでできたと」
海斗はそう言うと、優希に三枚の紙を渡した。
「とりあえず、ギルドの推薦状とこの町の住民権だよ。あと、ついでにギルドから頼まれた調査書も持って行ってくれ」
「わかった」
「さて、さっさと朝食を食べて仕事に行こうか」
「それじゃあ、私もさっさと食べて買い物に行ってくるわ」
二人はそう言うと、朝食を食べるのを再開した。




