第1話 幼馴染との再会
仕事を終えた海斗は、いつものように自分の暮らしているギルドから徒歩3分くらいにある定食屋に向かっていた。
「さて、この後は特に依頼もないし、とりあえずは魔道結晶や食糧などを買っておくか」
海斗がそんな独り言を話していると、前から黒いショートヘアーで変わった格好をした16,7歳ほどの少女が歩いているのが見えた。
そして、その少女は海斗の6歩ぐらい手前で急に倒れた。
「なっ!」
海斗は少女が地面に倒れる前に素早く近づき抱きかかえた。
「おい、大丈夫か!」
海斗はその少女に質問したが、少女の意識はすでに無かった。
海斗はとりあえず、近くにいた住民たちに近くに休める場所を用意させ、医者を呼ばせた。
それから、すぐに近くの家で少女を休ませた海斗はそれから、数分後にやってきた医者に少女の容態を聞いた。
「こいつの様子はどうなんだ」
「疲労と空腹により倒れたのでしょう。少し寝れば回復すると思いますが、少し栄養失調気味なので彼女が起きたら栄養のあるものも食べさせたほうがいいでしょう」
「そうか。助かったよ、ありがとう。代金はいくらだ」
海斗は懐から財布を取り出しながら言った。
「いえ、代金は結構です。カイト様にはいつもお世話になっていますし、この町の住民は皆カイト様のおかげで毎日何事も無く暮らすことができているのです。これはお礼でございます」
「いや、俺はそんなにたいそうな奴じゃないし、この町が平和なのは他のマスターやこの町に住む住民たちが頑張っているからだ」
「いえいえ、カイト様のおかげですよ。それに私はただ診察しただけです。これといった治療模してないのに代金をいただくわけにはいきません」
「そうか、わかった。ありがとう。もし、何かあったらいつでも俺を頼ってきてくれ」
「わかりました。何かあったときは宜しくお願いします。では、私は他の患者が来るといけないので病院に戻ります」
医者はそう言うと、海斗に頭を下げ、家を出た。
海斗は医者を見送ると、この家の持ち主である女性に話しかけた。
「迷惑をかけてすまないな」
「いえいえ、この子は私が看ているのでカイト様は戻られたほうがいいじゃないのですか」
「すまない。あとでお礼の品を贈らせてもらうよ。あと、できればこの子が目を覚ましたらもう少しだけ休ませてから俺のところに連れてきてほしいんだが、頼めるか」
「わかりました。任せてくださいな」
「それじゃあ、あとは任せた」
海斗は家をでた。
その後、海斗は遅めの昼食を食べ、その後足りなくなった魔道結晶や食料の他に、仕事で使うナイフやポーション、エーテルなどの回復アイテムとそれを強化するためのマジックハーブや妖精の粉などを買い家に帰った。
海斗は家に着くと、コピータグと呼ばれる魔法を封じ込め、いつでも使える札に回復系統の魔法をコピーさせる作業を始めた。
ここでこの世界の職業について説明しよう。
この世界の職業は主に戦闘職の他にもいろいろとあり、オーソドックスな剣士や魔術師の他に鍛冶職人や商人、薬剤師などといった、バラエティーに富んだラインナップであり、能力もジョブによって影響がある。
ちなみに、現在の海斗の職業はアークビショップと言う、魔法職の中で最高ランクの職業だ。
この職業に就くための条件は、魔術師、僧侶、賢者、占い師の四つのジョブを極めること。
その他にも、特別なアイテム女神の聖杯と時見の鏡、そして天使の羽と呼ばれる三つのレアアイテムを入手した状態で、北大陸にあるととある神殿で職業を変えることが条件だ。
この職業はほぼ全ての魔法を使うことができ、さらには自分の能力を10分の間だけ3倍にすることのできる特殊なエンチャットや大天使や悪魔を召還する魔法、属性を無視した特殊な属性《無属性》を使用することができるなど、大人気の職業だが実際にこの職業になれたプレイヤーは少なかった。
なぜなら、二つ目の条件であるレアアイテムをドロップするモンスターとエンカウントすることが難しく、たとえエンカウントすることができたとしても、そのアイテムを落とすことがあまり無いため、実際にこの職業に就くために一番必要なのは運である。
海斗は大体の回復魔法をコピーさせると次にエンチャットのコピーを始め、それが終わると無属性の攻撃魔法を中心的にコピーをし、大体のコピーが終わる頃には海斗のMPはほぼ0に近いくらいになった。
「さてと、MPもほぼなくなったしそろそろ夕食の支度でもするか」
それから、2時間ほどが過ぎ時刻は夜の8時過ぎになった。
海斗はリビングで明日の依頼内容を確認していた。
「まずは、中央通りの薬局でエクスポーションの配合の手伝いで、次に薬局から三軒となりの鍛冶屋で武器の性能調査、最後は教会の雨漏れ直しか・・・・。本当に俺って異世界まで来て何やっているんだろうな・・・・」
海斗が依頼書を読み返しているとギルドの呼び鈴がなった。
海斗は2回にあるリビングから一回のロビーまで下りギルドのドアを開けた。
すると、そこには昼に助けた少女が立っていた。
少女は海斗の顔を見たとたん、表情が変わった。
「やあ、久しぶりと言ったほうがいいかな」
海斗は茶化しながら言うと、少女は声に怒気を含ませながら言った。
「な、何であんたがここにいるのよ。あんたは4年前に行方不明になったんじゃ」
「まあ、その話は中でするから」
海斗はそう言うと、少女をギルドの中に入れた。
海斗は少女をギルドのロビーのソファーに座らせると、二人分のお茶を運び少女に渡した。
少女は受け取ったお茶を一口飲むと海斗に視線を戻した。
「とりあえず、何から聞きたい。てか、俺も聞きたいことあるけど、まあ先に俺が話したほうがいいだろ」
「当たり前でしょ。4年前に行方不明になったと思ったら、今度は異世界で再会なって洒落になってないし。てか、あんた本物の海斗なの」
「ああ、間違いなく本物の篠崎海斗だよ。てか、お前こそ本物なのかよ」
「はあ~?幼馴染の私小川優希の顔を忘れたって言うの」
「よかった本物の優希だ。てか、お前あの時からあまり変わってないな。最初16,7ぐらいだと思ったぞ」
「4年も経っているのにあまり成長してなくて悪かったわね」
「てか、ちょっと待て。もしかして俺って4年間も行方不明になっているのか」
「さっきからそう言っているじゃない」
「なるほど、こっちの世界の時間と俺の世界の時間は同じなのか・・・・それじゃあここは、平行世界なのか」
海斗がそう言って考え込むと、優希は海斗の頭を殴りつけた。
「グッ・・・ガチで痛い。何も殴ることは無いと思うんですがね。優希さん」
「あたしを無視した罰よ。そんなことよりもあたしの質問に答えなさい」
「はい・・・・」
こうして、海斗は異世界で元の世界の幼馴染の優希と再会を果たしたのだった。




