14話 優希さんのお仕事その3
優希の放った《罪と罰》によってサーベルリザたちは全滅した。
「さて、これで依頼完了かな・・・」
優希はそう言うと、他にサーベルリザがいないか調べるため、気配探知スキルを発動させた。
結果はこの洞窟内には、他に生き物がいないことがわかった。
「よし、これで完全に依頼完了。さて、サーベルリザたちの魔素はすでにデータカードに回収されているから問題ないでしょう」
ここで、データカードと魔素について説明
データカードとは所有者のレベルからステータスまでを現すカードのことで、そのカードはこの世界にいる住民なら誰でも呼び出すことの出来るアイテムだ。
ちなみに、データカードを改竄する魔法も存在している。
次に魔素とはモンスターや人を殺した時に出てくる魔力の粒子の事を魔素と呼ぶ。
そして、放出された魔素はモンスターや人を殺した人物が吸収することが出来、レベルを上げるために必要な経験値の代りにもなっている。
ちなみに、討伐依頼で討伐対象になっているモンスターの魔素は体に吸収されず、ギルドカードに吸収され、討伐モンスターの討伐がギルドで正式に確認されてから体に吸収される。
ちなみに、魔素の量はモンスターのレベルとそのモンスター自体の強さ、人の場合はレベルと職業の強さによって放出される魔素の量は変わってくる。
ちなみに、病気や事故で死んだ場合は魔素はその死んだ人の一番近くにいた人に吸収される。
ちなみに、もし海斗が死んだ時に放出される魔素の量は魔王以上に多い。
優希の場合も、海斗には及ばないが魔王よりも多いと推測される。
最後に、レベルがこれ以上上がらない場合魔素は吸収した人のMPの回復になる。
優希はとりあえず、部屋の中を見回してみた。
すると、優希は奥の壁に突き刺さっていた巨大な爪を見つけた。
優希はその爪がどのモンスターのものかを調べるため爪に近づいた。
その爪は先が壁に突き刺さっていたが、大きさは優希よりも大きいものだった。
「見た目はドラゴンの爪よね。てか、ここまで大きいとキングドラゴンの爪が正解かな」
優希はそう呟くと、爪が刺さっている付近に岩で大半が塞がっているが人が一人ぐらいなら通れそうなスペースを見つけた。
優希は、迷わずそのスペースに足を踏み入れた。
なぜなら、もしこの洞窟が昔はキングドラゴンの巣であった場合、ドラゴンのお宝を集める習性によってこの先に何かお宝があるのかもしれないと思ったからだ。
優希は物欲を全快にしながら進んでいった。
岩が塞いでいたのは入り口だけだったらしく、それ以外はかなり広い通路になっていた。
それから約15分ほど進むと、目の前に大きな扉が見えた。
優希はこの扉をどこかで見たような記憶があったが、思い出せずその扉を開き中に足を踏み入れてしまった。
そして、その扉は優希が扉の向こうにあった部屋に完全に入ると同時に閉まった。
優希は急に扉が閉まったことに驚き、扉を開けようとしたがビクともしなかった。
そこで、優希は何のための扉なのかを思い出し、冷や汗をかいた。
「思い出した。さっきの扉って・・・・ボス部屋の扉じゃない」
優希は振り返り、部屋の中の状況を確認した。
部屋の中は奥のほうに玉座があり、その玉座の上に巨大な水晶のようなものが乗っているだけだった。
優希は玉座の上に乗っている水晶がボスキャラだと思い、魔法で攻撃を開始した。
「《ホーリーランス》」
優希の魔法陣から太い槍の形をした一筋の閃光がが放たれた。
水晶は閃光に貫かれ、そのまま砕け散った。
「あ、あれ?あの水晶がボスじゃないの」
優希がそういうのと同時に、部屋の中央に黒い霧が集まり、ドラゴンの形を形成していった。
そして、霧は完全にドラゴンの形に変わりその姿を現した。
優希はその姿を見た瞬間、大きな悲鳴を上げた。
「キャァァァァ!!」
なぜなら、そのドラゴンの姿はあまりにも歪だったからだ。
まず、片目は無く、本来目があった所には黒い窪みになっており、残った片目は完全に生気が感じられず、鱗は傷つき所々変色しており、中には腐っているものもある。
他にも、爪が一本欠け、残った爪もボロボロで所々罅が入っている。
そして、一番酷いのが所々腐敗している所である。
そのため、体全体から腐敗臭が漂ってくる。
優希はこのモンスターの存在を知らなかった。
いや、モンスターの存在は知っていたし、戦ったこともあるがわからなかったのだ。
このモンスター《アンデットドラゴン》は優希がゲームの中で戦う前にデザインが変更されていたからだ。
もし、優希ではなく海斗がこの場にいた場合はこのモンスターのデザインを懐かしむだろう。
ちなみに、後日優希は《アンデットドラゴン》のデザインが変更された理由を知るがこれは別の話だ。
優希は目の前にいるモンスターに絶賛パニックを起こし、こちらに向かってくるアンデットドラゴンから逃げ回っていた。
「ギャァァァァァ!!こっちくんな~~~!!」
「ギャォォォォ」
そして、逃げ回ること約5分、急に優希は立ち止まり不気味に笑い出した。
「フフフフフフ、アハハハハハハ!!」
笑っている優希の目の中にはすでに正気はなく、狂気が支配していた。
某邪神がでてくる、神話の物語で例えるなら優希のSAN値は0になっている。
そして、優希は通常の優希からは想像できないほど高速で魔法陣を複数描き、呪文を放った。
「《ホーリーブレス》」
優希がそう言うと、複数の魔法陣から光でできた炎が放たれ、アンデットドラゴンを飲み込んだ。
アンデットドラゴンはそのまま、光の炎に飲み込まれ消滅した。
そして、優希はアンデットドラゴンを倒し終えた後も適当に光属性の魔法を放ち続けた。
そして、魔力の残量が残り1割ほどになった所でようやく正気に戻った。
「あ、あれ?私は一体?」
優希は先ほど自分の身に起きたことを整理した。
そして整理が終わり、辺りを見回してみた。
そこは最早見る影も無かった。
玉座はすでに残骸とになり、壁のあちらこちらには巨大な穴が開いていた。
そんな中で、優希はアンデットドラゴンがいたと思われる場所に、一本の剣が刺さっていることに気がついた。
優希は近くにより、それを引き抜いた。
その剣は柄に髑髏の装飾が施され、刀身の色は黄金に輝いていた。
優希はその剣をゲートに放り込むと、他に何か戦利品が残ってないか探したが、特に何も無かったため、そのまま帰路に着いたのだった。




