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日常生活の次に 2

 百合の両親そろっての記憶は、それはそれは微笑ましいものだ。

 23歳の若旦那と21歳の新妻は仲が良かった。それは百合が生まれても変わらず、幸せな家庭だった。

 百合が小学6年生、12歳の時、妹の向日葵が生まれた。

 そして母は消えた。

 消えた、という表現で正しいと百合は認識している。

 家から突然いなくなった彼女の行方を父親は一切教えてはくれなかったのだから。


 そこから壊れた。


 父は仕事が軌道に乗り忙しくなっていた。

 百合は反抗期真っ盛りでイラついていた。

 生後まもない向日葵は母親の残像を求めて泣き続けた。

 それでもまだよかった。父親は時間の許す限り帰ってきてくれた。

 お金も家にいれてくれたし、ご飯も作ってくれた。

 母が消えてから1年はそうやってすごした。

 1年が過ぎたころから、父の態度が悪化した。

 帰ってこない、ならまだいい。被害がないから。

 大変なのは帰ってきた日の方だ。

 家具は壊れる。食器は割れる。

 百合を母親と比べて怒鳴る。

 向日葵に罵詈雑言を浴びせる。

 それだけ暴れれば普通のマンションでは苦情が出る。


 百合が中学2年生の時、住んでいる所を追い出された。

 新しい住まいは父親が見つけてきた。それがそのまま今の家になる。

 引っ越してからは父は全く帰ってこなくなった。

 帰ってきても今日のように2人がいない時だけである。荒れた部屋でその存在の訪問を知る。―――――その時にはすでに「帰宅」ですらなくなっていた。


 百合が中学3年生の秋から、父親は家賃、学費以外の入金をしてくれなくなった。

 受験生だったが百合はバイトを始めた。3歳の向日葵は、まだ父親がマシだった時に保育園に入れてあったので心配なかった。

 百合は志望校のランクを2つ下げた。

 私立の特待をねらうのならばもう少しレベルの高い高校にも行けたが、そのために勉強する時間が受験前にも入学後にもなかった。

 卒業式に百合は父の姿を学校はおろか家でさえ見かけていない。


 高校の合格通知をこれ見よがしにパンフレットと共に机の上においていたら、数日後銀行に入学金が振り込まれた。

 けれど義務教育じゃないからか、学費は全額の半分しか払われなくなった。

 百合はどんなに体がきつくても真面目に授業を聞いた。奨学金を得るために成績は落とせなかった。

 バイトは高校生になったので自給のいいものにかえた。

 学校が終わってから向日葵の通う保育園が預かってくれる時間のギリギリまでのと朝4時から6時半までの2つをかけもちしている。

 本当は深夜のバイトの方が条件はいいのだが、それでは都合が悪い。

 こんなセキュリティの不安な家にまだ4歳の向日葵を1人で一晩中置いておくわけにはいかない。






 そのようにして百合の日常は形成されていった。


細かい金銭は気にしない方向で。

とにかく百合ちゃんは大変、父親は非道。

それが伝わればOKです。

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