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デート否より(3)

新谷のデート?!


若干書き加え、修正しました。


約60分前……





 杏子の聞いてはいけない話を聞いた後、新谷はタバコを吸うサヤカを見ながら、食事をしていた。サヤカの手を見つめる。サヤカのタバコを吸う姿が見慣れてきた新谷は、銘柄など聞くべきなのだろうか?などと考えていた。

「あのさ、いつからタバコ吸ってるの?」

とりあえず新谷は、銘柄の話題は避けてタバコ歴を訪ねてみる。そこから高校時代の話などにシフトできると思ったからだ。


「高校からよ」

サヤカは新谷に目を合わせて言った。煙が立ちこめる。


「へぇ~そうなんだ。やっぱり友達の影響?」



「う~んそうかなぁ~……でも新谷くんだから言うけど元カレの影響かな?」


少しタメを作ったあと、サヤカは言った。

 ラーメン屋のおじさんのほら吹きめ!新谷はそう思いながら朝の会話を思い浮かんだ。


「……へぇ~そうなんだ…やっぱり先輩とか?」

新谷は動揺しながらも、続けた。


「大学生かな~その時、アタシが17歳でその人22歳だったから…」

サヤカが言った。

なんか泣けてくる、新谷は思った。思わず犯罪?と言いたくなるがグッとこらえる。でもこんなこと話してくれると言うことは…俺を信頼してくれている!新谷は心の中で、前向きになろうと努力した。

「…でも、あんまりこれ以上は話したくないな…ごめんね」

サヤカは笑顔をつくった。やっぱり笑うとかわいいな、新谷は思う。


「いやいいんだよ」新谷は真剣な顔で言った。まあとりあえず…


「ほかに好きな映画とかある?」


新谷は話を続けた。もっと彼女と向き合おう!新谷はその時、そう思った。



その後、会話は弾んだ。お互いの出身高校のこと、新谷が実は浪人生であること、サヤカの隣の部屋の話し声が聞こえてうるさいこと、などなど。



「はははっ~そうだね」

サヤカはすっかり新谷に心を開いたようだった。新谷はうれしかったし、楽しかった。


「私、ちょっとお手洗い言ってくるね」

サヤカは席をたった。新谷はいつの間にかタバコの臭いが気にならなくなっていた。

 一安心した新谷はさっきの重い話題を話していた自分の背中側にいる杏子と男のほうへ耳をすました。壁に耳アリ…

 なにかまだ話し合いをしている。さっきよりも穏やかに杏子は話しているようだ。おそらく新谷達の存在には気づいていない。ボソボソと聞き取りずらい。



「やっぱり、過去を水に流してもう1度やりなおさない?」



 杏子の相手の男が優しく言ったのが聞こえた。


「なにを今更…」

杏子の動揺が声からわかる。新谷はその背後から事の次第を見守っていた。




「…おまたせ!」


その時、サヤカが席に戻ってきた。


「あ、ああ~全然まってないよ」

新谷は意識を彼女にもどした。



「俺もお手洗い言ってくるね~水飲み過ぎたみたいだよ」

新谷は言うと席を立った。


「フフッ、わかった」

サヤカは笑ったのがわかった。

 席を立ち、重苦しい空気のカップルの前を通り、新谷はトイレに向かった。

 用を足し、トイレからでると、新谷は知っている声に呼び止められた。




「なんでここにいるの?」

目の前にはポニーテールにこのお店の店員の服装を着ている新谷の同級生、ユウコがそこにいた。白いシャツに、首もとに赤いリボン、黒いスカートにエプロンの姿だ。普段、大学ではみられないほとんどモノトーンの服装で、ユウコの姿勢の良さとスタイルの良さが目立った。


「そ、そっちこそ?」

急な不意打ちに新谷は動揺を隠せない。それと普段はあまりみられない彼女の服装と化粧で思わずドキリとさせられた。先輩のジローの彼女だ。ジローが羨ましく思えた。


「私はアルバイトよ。ちょうどさっきシフトの時間になったんだ。今日ジローくんは追試だけど、私たちは、ないじゃない」

ユウコは言った。

「そっちは?」



「お、俺は…」



「あっ、わかった。サヤカとデートでしょ?さっきトイレの前ですれ違ったもん~」



「いっ!そ、そうだよ」


新谷にサヤカを紹介したのはユウコだ。


「さっきすれ違って、ナイフかフォークくださいって来たのがちょうどサヤカで、デートなんだって教えてくれた…相手は教えてくれなかったけど、君だったんだ~」

ユウコはニヤニヤした。笑うと八重歯が見える。


「まあね~先輩達には内緒ね」


「もう知れ渡ってるわよ」



「…そういえばさ、杏子先輩もいるの知ってる?」

どうしても誰かに話したい衝動を押さえられない新谷は先ほどの杏子たちの事をユウコに話した。



「そうなんだ…」

ユウコは落ち着いていた。



「え?…驚かないの?だって元カレとの間に子供だよ。しかもその…」


新谷は、言の葉に詰まった。


「……知ってるわよ。聞いたわ。杏子さんから…」


「ガールズトークか」


「そんなものよ。昔、付き合ってた年上の彼氏との間にできた。でも相手の男はその子供を降ろさせ……杏子さんを捨てて逃げた…」



「別れたのかな?」



「杏子さんの意志に関係なく一方的だって」


「……」


「めんどくさくなった。そう言われたらしいわ…」


「……」


「よくある話、多分みんなそう言う。けど、当の本人は相当ショックだったらしいわ。一度は相手を殺してやろう、そう思ったこともあるらしいわ」



「そうか。じゃあ今合ってるのは?」

新谷は思わず唾を飲み込んだ。

「そう、都合良くもう一度、やり直した言ってきたらしいわよ。それで今日、私の働いてるこの店で決着をつけるんだって」



「杏子さんが?…でもそれって何というか…すごく辛くないか?」



「多分、辛いわよ。でも女は強いわよ。男なんかよりずっとね。とくに杏子さんは…」

ユウコは言った。杏子の気持ちを代弁しているようだ。





ガシャン!バリン!




そこまで話した時、耳をつんざくような音が喫煙室から響いた。新谷はなんとなくヤな感じがした。



「なんだろ?」

ユウコと新谷は急いで喫煙室の方へ行く。





「コロシテヤル!よくも…」女の声は冷たい。食事用のナイフを持った女性が、さっきまで杏子が話していた男性を羽交い締めにし、首もとにナイフを突き立てていた。首元からは血が滴っている。その光景が目に入ってくる。


「く、くるしい…許してくれ…」

男は内股気味で女性に羽交い締めにされている。頼りなさそうだ。華奢で身長の低さが目立つ。


「落ち着いて!」

その光景を前にして女性がそれをなだめている。おそらくなだめているのは、サヤカだろう。そして杏子があの男を……無理もない。

新谷はユウコの話からそう思いながら、状況把握に努めた。





「あれ?アンタたち、何やってるの?」なだめていた女性の聞き覚えのある声がする。胸を強調した服、杏子だ。

じゃああのナイフをもった女性は?




新谷は女性の足下からゆっくりと視線を動かした。男の体が力なくだれている。その男の首には細いてで羽交い締めにした手が巻き付いていた。恨みのこもった顔、すごい形相だ。それはさっきまで、新谷と映画の話で盛り上がり、タバコをふかしたお嬢さま、サヤカの顔だった。




「…あれ?サヤカちゃん、未成年?…」

新谷はかすれた声で呟いた。


「い、いや今関係ないでしょ?」


新谷は、ユウコの言うことに頷いた。新谷の頭の中に、ゆっくりとアドレナリンが出始めた、気がした。


冷たい汗が出てきた。

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