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崖っぷち(5)

堤のテストは?

 追試テストの試験官の伊達ダテは再びボーッと時計を眺めていた。はっとして、自分の口が空いているのに気がついた。口を結び直す。本日最後の試験監督だ。

 今回の受験者は30人。割と試験のレベルの高い科目だったらしい。



 学生たちは机に向かい、一生懸命詰め込んだ知識とそれをフルに使って試験問題に望んでいた。

 少しだけ同情したい気持ちは変わらない。「留年」、と言う2文字のために…




 まあ今は早く仕事を終えて、帰宅したい気持ちが強い。独り身の伊達は、グルメで食にはうるさい。今日の夕飯はどうしようかと、考える。


そういえば、サービス券があったな!伊達は試験時間の書かれた黒板の前でそれを思い出す。


 教壇のイスに座りながら、真剣に試験に取り組む学生にばれないように、財布の中身をチェックする。

 これは期限切れてるだろ~う~ん~これはまだ!……あった!


行くしかないでしょ!伊達は少しだけテンションが上がった。割引券のことで喧嘩となり、別れたカノジョのことなど頭にない。


残り10分でこの試験管も終わりだ。教授に答案用紙を届けておさらば!



最後に試験監督らしいことをしようとサービス券をポケットにしまい、伊達は立ち上がった。



教壇から講義用の机に向かう生徒たちの間をゆっくり歩く。手が止まっているもの、まだ頑張るもの、様々だ。あきらめるなよ!伊達は思った。


「あと試験時間5分な!しっかりな!」

伊達は声を張り上げた。



フとある学生が使っている試験問題用紙に目が止まった。この学生は字か綺麗だ。伊達は思う。


 そして伊達は気づいた。確かこの席は堤くんだ。さっきの試験もいたな!肉付きがよく、おなかの出てる。さっきの高橋の友達の…



伊達はゆっくりとその学生の顔を見た。



…!!





「き、君は?…や…」

なにかに気づくと伊達はその学生にそっと訪ねようとした。



「つ、つ、堤です」

その学生は言った。



「そ、そうか。ご、ごくろうさん…」伊達は静かに言うと、ポケットから、さっき夕飯のために取ってあったサービス券を、学生の机にソッと置くと、



「俺も学生のころ、一回だけ、な!内緒だ」


と伊達は静かに学生に言うと伊達は教壇にゆっくりと戻って行った。






『替え玉1回サービス』



伊達が机に置いて行ったそのラーメン屋のサービス券を見ながら、山下は苦笑いをした。根岸のマイカーのハマーを借り、杏子達のもとへ向かったジローと堤はどうしただろう?山下は思った。



「ありがとうございます」



追試試験は、ブジに終わった

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