デート否より(5)
新谷たちの話
少しこの話しで使われる表現を不快に思われる読者の方が、いらしたら申し訳ありませんm(_ _)m
悪役を引き立たせるための表現ですのでご了承ください。不快でしたらごめんなさいm(_ _)m
大変恐縮ですが、ラストに向かって一気に話は進みます
書き加え、修正版です。ラストの堤、ジローの台詞が少し増えました。
よろしくお願いしますm(_ _)m
ドタンドタンドタン
再び、足音が近づいてくる。新谷が視線を向けると、ラーメン屋のおじさんは状況が飲み込めずにオロオロとしている。奥さんの様子は落ち着いていた。
「おいっ!あれナイフだろ!バ、バカやろうーあっ!杏子ちゃんが…な、なんでだ」
おじさんはデカい声で話した。
「落ち着いてください」
奥さんは子供を諭すように、おじさんを黙らせた。
「わ、わぁたよ~黙ってるよ」
おじさんが反省の色をみせる。
「よしよぉ~し」
奥さんはおじさんの頭を撫でた。
「バ、バカやろう~ お、オマエうれしいじゃ…」
そこまで言い掛けたところでおじさんの口を奥さんが手で塞いだ。動きかけたおじさんの口は止まる。
新谷とユウコはその光景を呆れて見ていた。杏子も、そしてナイフを持つ柏木も。新谷に肩を抱かれているサヤカの目には涙が…
気が付くと足音が止み、再び人影が二つ入ってきた。新谷は催涙ガス来るならこい!と、息を止め、サヤカの肩を強く握ると、目をつぶる用意をした。
「いたいたぁ」
ジローが言った。
「杏子~まだ生きてるぅ~?」
堤が軽く言った。
「センパイ!!」
「ジローくん!!」
「何やってんの?堤! 追試は?」
杏子は言った。
「ようぅ~杏子~それから安心しろユウコちゃん!軍隊の戦車に乗ってきたからな!」
ジローは言った。戦車!催涙ガスどころじゃない!新谷は辺りを見回した。
「ぐ、軍隊じゃない。軍用な、おおげさだな、ハマーに乗ってきたんだろ!根岸の~しかも戦車じゃないし」
堤が言った。
「そうそうアレはデカい。燃費はどうなんだろう?」
ジローは言った。
「てぇ~とあれかい?」
おじさんが話しに入ろうとデカい声を張り上げた。人質もなにもあったもんじゃない。
「それって、タブダブのズボン履いて踊るヤツだろ!MC…グフっ」
言い終わる前に、奥さんがおじさんの口をふさいだ。シ~、 今は2000年代よ静かにね、新谷には、奥さんの小声が聞こえた。おじさんはふてくされている。
羽交い締めにされながら、杏子は話しに入ろうと、声を発しようとした。ヒっ!その瞬間、冷たいナイフが首もとにふれ思わず体に力が入る。鮮やかな血が首筋を滴る。
「全員、ダマレ」
冷たい声、首から鮮やかな血がまた流れ杏子の服を赤に染めていった。
「…ひ」
「杏子!」
柏木はサヤカにナイフを突きつけられたことで、正気を失っているようだ。手には、力が入っていた。
「なあ?…なんで杏子なんだ?しかも君はさっきまでこちらにいるお嬢様に殺されそうになった」
新谷に抱えられたサヤカを見ながら、ジローは言った。
「よるな!この女、スゲー良かった!だけど俺を、う、裏切った 。きっと、その女もよかったけど、その内、俺を裏切る!」
柏木の手に力が入る。杏子の体が強ばった。彼女は震えている。
「だから…こうしたのか」
堤が言った。
「裏切らないように従わせるんだよぉ~腕力に任せりゃオトコの方が強い~なんだってできる、ふふふ」
杏子のカラダを触りながら、柏木は言った。目が血走り、額の汗が照明に照らされている。あれは不味い…新谷は思った。クスリでもやっているのか?
サヤカに目を移すと、自分のやったことと、柏木の剣幕に対してなのか、青ざめ震えていた。
「ア…アナタは女性のことをどう思っているの?カラダ目当て…そ、それだけ?」
ユウコが言った。声は震えているが姿勢がいい。
「そうだよ、そうだ、そうですよ、セフレ!カラダだけ!こんないいカラダしてぇ~なあ~メスブタだろ」
柏木は満面の笑顔でユウコを見据えた。
柏木は下から上までなめ回すようにユウコを見た。
「………」
ユウコは言葉を失った。
「…おい?聞いたか?ジローさん」
堤が会話に割り込んだ。
「ああ、聞いたよ!
堤くん」
ジローが答える。
「あッ?」柏木が声を出す。その声には苛立ちと、怒りが込められているのがよくわかる。
ジローと堤はゆっくりと柏木に歩みよって行った。
パタン!
ジローのサンダルの音が響く
「メスブタだってよ」
堤。
「メス!豚か!」
ジロー。
「いやいや、メスブタね」
パタン
「メス、豚だな!」
パタン、パタン
「だ~か~らメスブタな」
パタンパタン
「わかってるよ~!
メス、豚だな。手術するんだろ!豚を!」
パタン
「…だからお医者さんが使うのがメスな。この場合は雌なメス…マークあるでしょ?」
「ああ~メスね♀~でも豚は豚だぞ!豚肉のバラ肉が好きだ」
「あのクソ野郎が言ってんのはな、人間の女性のことを…その~」
「メス豚?!」
「そ、そうだよ」
「チっ!ダマレ殺すぞ」
柏木は怒鳴る。杏子の足の方まで血が滴っている。
2人は無視して続けた。
「同じ、ほ乳類だけど俺たちはホモサピエンスだ!豚じゃない!人間だ」
パタン!
「例えだ!例え!」
堤は呆れた。新谷は何かに気づいた。
「人間も、豚も、かわいそうだ!例えに使われて…」
「ああそう」
堤はまた呆れた。
「あ…!!そうか!そのたとえなら、俺らはオスブタだな!」
「オスブタだ、オスブタだ!」
パタン!!!!!!!!
「オスブタ野郎なんて言わないだろう」
「オっス!ブタ野郎~」
ジローは言った。
「はぁ~小学生?」
堤。
「でもな~俺らは生物学的にはオスだ」
「ああ~そだね」
「オスはメスを守らなくちゃな!」
パタン!!!!!!
ジローと堤は柏木の目の前に立った。
「えっ?」
杏子が2人を見ながら声を出した
「チっ!ふざけやがって!」
柏木のナイフが杏子の首元にほぼ垂直に立てられる。
「こんな風にさぁ!」
ジローはその瞬間、左足を思いっきり柏木、目がけて前に蹴り上げた
蹴り上げたジローの足は空を切った
足は…
ジローの重心が余りに後ろにかかったため、振り上げた足は 伸びきった状態になる
そしてその足に装着されていたサンダルがジローの足を離れる
そのサンダルは、杏子の顔のよこにある柏木の顔に…
ガスッ
鈍い音を立て当たった
「ぐっ!」
柏木は声を出してひるんだ。杏子は呆然としている。
そのスキに堤は杏子の首元に突き立てられているナイフをもつ柏木の右手にしがみつく
「きゃ!」
杏子は急いで柏木から離れる。血が滴る
ナイフが地面に転がった
カラン
柏木はそれを必死に拾おうとする
グゴーっ
その声は声ならない
堤は巨艦で柏木に多い被さろうとしたが、柏木の腕力に振り払われる
柏木はナイフに手を伸ばした
コロシテヤルよ
柏木が振り返りながら言った。
コロス
しかしそこには堤の姿はない。
そこには、ジローがいた
ぱあああん!
ジローは力いっぱい柏木のスネを蹴った
その一点を打ち抜くように
アグァっ!
柏木はあまりの痛みに自分のスネを押さえ倒れ込む
その瞬間、堤、おじさん、新谷、が柏木のカラダを押さえ込んだ。そしてジローも裸足で彼を抑えた。ナイフは床をころがって行った
「ああああああアああああアアっ離せ!あああああっクソがぁ」
「アタシに二度と近寄らないで!」杏子が柏木に目を合わせハッキリと言った。
「あああ?このメスブタ野郎!」
柏木は吐き捨てた。
「『野郎』は男に使うもんだ!オマエの日本語は間違ってる。メスに、ブタに、野郎、おかしくないか?」
ジローが自信満々に言い切った。
「………」
柏木は言葉を失った。杏子は首スジを押さえながら、そのやりとりを見て少し微笑んだ。
柏木はしばらく、激しくのたうち回ったが、大人4人の力には勝てず、観念したようだ。
「警察だ!」
私服警官と制服警官が店に入り乱れて入ってきた。誰かが異変に気づいたのだろう。
「はあはあはあはあ、お、おそい!」
ジローは呼吸の整わぬ声で、叫んだ。
「リ、リモコン下駄?」
新谷は、柏木を押さえながら落ちているサンダルを見て呟いた。
「リモートコントロール下駄、…だ!」
ジローは新谷に向かっていった。
どちらでもいい、新谷は思った。
そして新谷は、ユウコと一緒に震えているサヤカのことを思った。