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崖っぷち(3)

ジローは試験をうけられるのだろうか?

追試、試験官の伊達は何を目撃したのか?

 追試テストの試験官の伊達ダテはボーッと時計を眺めていた。はっとして、自分の口が空いているのに気がついた。口を結び直す。

 後30分で一科目の倫理学の試験が終了する。彼の目の前には追試者が20人。本当は21人のはずだが…




 学生たちは机に向かい、一生懸命詰め込んだ知識とそれをフルに使って試験問題に望んでいた。  可愛そうに…普通の大学生はもう既に休みだ。恋人と遊んだり、合コンしたり、友人と旅行にいったり、できるはずなのにこの2週間あまりを彼らは追試の勉強に費やしてきた。「留年」、と言う2文字のために…




同情する。




 なぜなら、自分も4年前までその立場だったからだ。今の伊達の大学での役職は客員講師、雇われた講師だ。担当は社会学と経済学で、大学で教えている。自分の学生の頃はやっぱり遊びたい盛りだった。勉強はそれなりに、いろんな遊びに行き、とにかくお金がないと喚いていた気がする。

 まあ後になって気づくと女の尻ばかり追いかけてないで、勉強しておけばよかったと後悔だけが残るのだが…

それもまた青春だ。



伊達は息を深く吸い込む。



「試験時間は残り30分です!」



息を吐き、広い教室に響くように大きな声を出す。何人かの学生が、手元にある時計で時間を確認しているのがわかる。なぜか伊達はその光景がおかしかった。




ガラガラガラガラ




その時、教室のドアが開き、180ぐらいの身長の男が静寂を壊した。その男の呼吸は荒い。ショルダーバックを背負い、髪の毛はボサボサで乱れていた。汗が額からでている。



はぁはぁはぁはぁ




「……高橋です、高橋信次郎です。遅くなりました。し、試験を受けさせてください!」



伊達はたじろく。気を取り直して何を言おうか少し考える。試験を受けているだれかが、ジロー!と言う声がした。



「寝坊かい?」



「そ、そんなとこです」



「そうか。大事な試験なんだ。頑張れよ」

そういうと、手元にある、追試の学生の写真とジロー、と言う男の顔を交互に照合した。試験問題を渡した。

証明となる領収書を受け取る。


「あと30分ないぞ。いそげ!」


「はい!ありがとうございます」


そう急かすと、ジローと呼ばれる学生はは急いで席に着くと、バックから急いで筆記用具を取り出すと、試験問題に取りかかったようだ。



「右上に名前と学籍番号な!わすれるなよ」

伊達はジローの様子を見て言った。ジローは指示に従い、急いで答案用紙の右上に名前を書き始めたようだ。

 他の学生も答案用紙の右上に、終始目線を移したのが、伊達にはわかった。伊達にはその光景が、おもしろかった。

 

 少し汗くさいぞ、高橋!そう思ったが、伊達は口に出さないことにする。




試験終了まであと20分……

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