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第5話:触手魔獣との「捕食」グラビア

 この世界の芸能界は、常に過激な刺激を求める。

 事務職が出した次号の企画は、その中でも一際異彩を放っていた。

 「触手魔獣との『捕食』グラビア」。生きた触手モンスターに絡まれながら、極限の恐怖と官能を表現するという、まさに「エログロ」の真骨頂だった。

 撮影現場は、薄暗い洞窟スタジオ。天井からはおぞましい粘液が滴り落ち、地面には魔獣の出す不気味な脈動が響いている。今回の共演者である「ヘドロ・テンタクルス」は、通常の魔力を無効化する特殊な体質を持つ、非常に危険な魔獣だ。


 「きゃああああああっ!」


 最初の犠牲者は、エルフの新人モデルだった。魔獣の粘着性のある触手が彼女の肢体に巻き付いた瞬間、恐怖で魔力が暴走し、無意識に防御魔法を展開してしまう。

 しかし、ヘドロ・テンタクルスはその魔法を嘲笑うかのように弾き返し、彼女を洞窟の壁へと叩きつけた。

 次々と続くモデルたちの悲鳴。皆、本能的な恐怖に抗えず、無様な姿を晒していく。プロデューサーは舌打ちし、カメラマンはため息をついた。


「おい、ゼノ。こいつは無理だ。うちの子たちには荷が重すぎる。……これじゃただの『魔獣に襲われる素人』だ」


 ゼノは険しい顔で美優を見た。彼女の順番が、次に迫っていた。


「美優……無理だと思ったら、すぐに中止していい。命がけの仕事じゃないんだ」

「大丈夫だよ」


 美優は、緊張した面持ちのゼノに、ニカッと笑いかけた。その瞳には、恐怖ではなく、未知の体験への好奇心が宿っているように見えた。

 美優が洞窟の中央に進み出た瞬間、ヘドロ・テンタクルスは他のモデルに見せたような「威嚇」を一切せず、獲物を吟味するような、遅鈍な動きで触手を伸ばし始めた。


「……ひゃっ!?」


 一本の触手が、美優のウエストに優しく絡みつく。粘液の冷たい感触が肌を滑り、美優は思わず声を漏らした。

 次の瞬間、さらに数本の触手が彼女の二の腕、太もも、そして胸へと這い上がってくる。


「……っ、ふふ……くすぐったい……!」


 美優は笑った。それは恐怖からくる引き攣った笑いではない。本当に「くすぐったい」という、生理的な反応だった。

 触手は、まるで美優の身体の柔らかさや温かさに戸惑っているかのように、ゆっくりと、しかし確かな力で彼女の肢体を締め上げていく。

 粘液が、彼女の小麦色の肌に艶やかな光沢を与え、ビキニの隙間からこぼれ落ちそうな豊満なバストを強調する。


「うわ! 何これ、ぐにゅぐにゅしてる……っ、あ、そこ感度いいからダメぇ!」


 美優は、バカっぽく叫んだ。その声には恐怖の欠片もなく、むしろ触手の絡みつきを楽しむかのような、無邪気な快活さがみなぎっている。

 彼女は、魔法を使うでも、力で振り払うでもなく、ひたすら肉体の「しなり」だけで魔獣を翻弄し始めた。

 触手が右に引っ張れば、左へ流れる。腕を締め上げられれば、その反動で胸を反らす。それは、ダンサーが踊るかのような、しなやかで、官能的な動きだった。

 そして、その動きが、ヘドロ・テンタクルスにとって「予想外の刺激」だった。

 魔獣は、美優の「生身の体温」と「肌の質感」に、まるでメロメロになったかのように、これまでに見せたことのない、うっとりとした挙動を見せ始めたのだ。

 触手は、もはや獲物を捕食する攻撃性を持っていなかった。

 それは、美優の身体を優しく撫で、その曲線美をなぞり、最も美しく見えるであろう角度へと、彼女の肢体を自在にいざなっていく。


「……ああ、この子、魔獣を飼いならしてる!」

「なんだ、このグラビアは……!?」


 プロデューサーが息を呑み、カメラマンは無我夢中でシャッターを切り続けた。

 数分後。

 美優は、全身に粘液を纏い、髪は乱れ、顔は上気していた。だが、その表情には一片の疲労もなく、充実した達成感が満ち溢れている。

 そして、彼女の周囲には、完全に「骨抜き」にされたヘドロ・テンタクルスが、巨大な触手をだらりと垂らし、まるで子犬が飼い主を見上げるかのような、愛らしい瞳で美優を見つめていた。

 その光景は、戦慄すべき魔獣との対決ではなく、まるで美しい少女と、巨大なペットの戯れを映し出しているようだった。


「……ねえ、ゼノ。この子、案外可愛いよ?」


 美優が笑うと、ヘドロ・テンタクルスは嬉しそうに、美優の頬にぬるぬるした触手を擦り寄せた。

 その日、グラビア雑誌の歴史に残る、伝説の「絡みカット」が生まれた。

 美優は、触手魔獣の「捕食」すらも、己の肉体と生命力で「交歓」へと変えてしまったのだ。

 プロデューサーは美優を見つめ、確信した。


「……これは、歴史に残る。まさに嬢王の器だ。」


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