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復讐の勇者II

ガタンゴトンと馬車に揺られる音が響く。

あの日からまるで一人きりしかいない真っ暗な海で浮いている、そんな現実味のない気分がした。

俺はバニアに連れられて疎開先の隣国へと向かった。

瞼を閉じればあの惨状を思い出す。頬に被ったあの気持ち悪い温もりの液体が。切った感触が。

あの勇者は今何をしているのだろう。愛しき彼女を奪ったあいつ、あいつだけは自分の手で。

疎開先の国は俺が人殺しだというのに暖かく受け入れてくれた。どうやらバニアが上手く取り合ってくれたようだ。バニアはそこで知り合いがいるという村に案内してくれた。村の人々は優しかった。心身ともに疲れていた俺を休ませるようにそっとしてくれた。そして家もなかった俺に要らないからと空き家もくれた。いつか恩返しをしないとそんなことを思っていた。

何もできぬまま数ヶ月が経った。ある新聞が届いた。

【隣国で1年間続いた戦争が終結】

俺は久しぶりに泣いた。声を上げて泣いた。国を捨てて逃げ出した俺が言うべきではない。でも、俺が、アビスが、皆が、守った国は。守った意味は?何故人が死ななければならなかった?何故俺が殺さなければならなかった?誰かに怒りをぶつけたい。全部、全部あいつのせいだ。そう思わないと全てが壊れてしまいそうで。

あの日空は綺麗だった。辺鄙な村に旅人が訪れた。旅人は俺を知っていた。勇者としてではなくあの戦争の俺を。そのために来たのだという。彼は俺に甘い提案を持ち掛けた。

「お前の復讐の手伝いをしてやろうか。」

あぁ。これで彼女が、皆が救われるなら簡単なものだ。俺は二つ返事でうなづいた。彼の手を取ったのだ。

そこからは急だった。旅人に引きずられ荷物を持たないまま、旅に出ると手紙を残して、村人に感謝を伝えて、俺はここに来た時のように馬車で揺られていた。

旅人は金持ちらしい。他は何を聞いてもはぐらかされた。でも名前は教えてくれた。

確か名前は、

「僕の名前はワルツ、ワルツ・アノミー。」

ワルツというらしい。

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