第十一話:運命の選択――理性的な安息への帰還(シリウス・ルート)
1.理性的な安息への帰還
ヴィオラは、ガルムの熱が自身の理性を溶かしかけたことを自覚し、再び冷静な分析に戻った。彼女が長年求めてきたのは、予測可能な秩序と、裏切りのない安全である。
アズリエルは最高の支配を与えるが、その裏には永遠の責任が伴う。ガルムの愛は自由だが、あまりにも無計画で、彼女の理性を乱す。
(私は、誰にも脅かされない場所で、私の理性が守られることを望んでいる。私の使命は終わった。今、私に必要なのは、戦いではなく、絶対的な安息だわ)
ヴィオラは、「誰にも邪魔されない、完璧な安寧」を提示した騎士シリウスの元へ向かうことを決めた。彼女の理性が選んだ、最も安全で確実な未来だった。
2.忠誠と揺るぎない安寧の選択
ヴィオラがシリウスの護衛室の前に立つと、彼はすぐに扉を開けた。彼の顔は疲労を隠しきれていなかったが、その姿勢は崩れていない。
「ヴィオラ様。貴女様のご決断は……」
ヴィオラは、彼の生真面目な瞳を真っ直ぐに見つめた。
「シリウス卿。あなたの愛は、最も合理的で、最も確実よ。私は、アズリエル様の重い契約も、ガルムの無計画な自由も選ばない。私は、使命と責任から解放された、絶対的な安全の中で生きたい」
彼女は、シリウスの引き締まった腕に、そっと手を置いた。
「シリウス。私は、あなたに『主』としてではなく、『伴侶』として、永遠の忠誠を誓ってほしいの。あなたと共に、秩序と安全の中で、私の理性が守られる人生を歩みたい」
シリウスの瞳に、初めて驚愕と歓喜の色が走った。彼は、すぐに片膝をつき、ヴィオラの手を恭しく取った。
彼の顔は、騎士としての誇りと愛する女性を選べた歓喜で震えていた。
「ヴィオラ様……私のような者が、貴女様の『伴侶』など恐れ多い。しかし、貴女様が望まれるのであれば、私の命も、魂も、そしてこの忠誠心も、貴女様のものです。私の全てを懸けて、永遠の安寧をお誓いします」
彼は、ヴィオラの指先に顔を寄せ、忠誠の誓いを込めた口づけを落とした。
ヴィオラの心は、絶対的な安心感に満たされていくのを感じた。




