また逢えたのなら
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
すいません。めっちゃしんどい。辛い。
神様と定義される存在は、大層に気まぐれで、此方の意向なんざ聞いて下さらない方が殆どだ。御自分がどう思い、どうしたしたいかに重きを置かれる。ただ出自が人間だった場合、この限りではない。
高校時代、とても好きな人が居た。その人は頭が良くて、私が知らない様々な事を知っていた。本好きだったら、お勧めの本も沢山聞いた。
その頃の私は、そんな彼に抱く感情がなんだったのか分からないままに、時を過ごした。だから特に何か愛情表現をしたりだとか、思いを伝える事はなく過ごした。
そうして時が過ぎ去り、社会人になった。繰り返される毎日に飽き、高校時代のアオハルを浮かべる事が増えてきた。そんなとき、別の世界が見たくなって、本棚の蔵書を漁ったのだ。
見つけたのは一冊の文庫本。一冊で平均的な文庫本三冊分の分厚い本。それは誰でもない、あの時の彼が勧めてくれたものだ。
――スチームパンクにハマってて、良ければ読んでみると面白いかも知れません。
背表紙に触れると、そんな言葉が蘇り、なんとも言えない気持ちになった。あの時に、戻りたいな……。今、あの人何してるのかな……。
そう思ったら早かった。スマホを出し、彼の連絡先を確認する。そうしてメアドをタップしようとしたその時、ふと思いとどまった。
何しているか、分からないのだ。どんな状態かも、分からないのだ。彼女がいるかも知れない。結婚しているかも知れない。そんな相手に私から連絡をしたら、迷惑でも何でもない。
その不安は胸を侵食し、結局はスマホを放り投げて、部屋の隅で蹲る事しか出来なかった。
翌日、私は週間である神様の元に訪れて、そんな事を願った。
――あの、あのですね、あの人に、先輩に、また……逢いたいんです。何でもない会話がしたいんです。いいえ……逢えなくても構わない。連絡があるだけで……それだけで……。
私から連絡が出来る筈がない。それは絶対的な禁忌である。もし恋人がいたら、あの人にそんな迷惑掛けられない。だから……我儘だけれど、あの人から……あの人から……連絡が……。
無茶な願いだった。もう数十年も前の話になる。相手側が連絡先を消去していてもおかしな話じゃない。忘れられていても不思議じゃない。
そんな最後まで他人任せな私の願いは、歪な形で叶えられる事になった。
私はホールにいた。沢山の人々が、餞の言葉を贈り、涙を流している。
――今まで有難う。
――お世話になりました。
――進路どこ?
それは卒業式。此処で全ての分岐が始まる決定的な日。その日に、私は先輩を見つけた。
あの時と変わらない柔和な顔。目が悪いと言っていて、得意な眼鏡をかけている。恩師と話していて、お礼を言っている。
「先輩……!!」
「おや、お久しぶりです。部活引退してから、最後に会ったのは何時でしょうか」
「本当に……お久しぶりです……。逢えて良かった。逢えて……本当にお元気そうで……」
そんな言葉を欠けた時、不意に目が覚める。存在するのは敬愛する先輩の存在ではなく、優しいクッションの心地で、あれは甘い夢のなのだと知った。
「……ぅ……あああ!! わああああああ!!」
それから暫く泣きじゃくった。叶えられたのだ。先輩に逢いたいという、私の願いは。最も残酷な形で。余りにも甘く、苦しい結末で。
――有難う御座います。分かっているんです。これが貴方様が出来る最大限の譲歩だと。それ以上は無理だと。その最善策がこれだと。だから……本当に有難う御座います。
逢えて、言葉を交わせただけで、それだけで良い。それが例え、甘く残酷な夢であっても。
瑠衣が好きそうだな。この話。
瑠衣にとっては因果応報、勧善懲悪な気がするので。
『自分で動かなきゃ、何も叶えられない』
という一種の教訓めいた話。
高校時代の先輩にまた逢いたいと思っても、今の現状を知らないから、連絡一つ出来ない。
だから神様に縋って叶えて貰おうとした。
でもね、神様って万能ではあるけれど、全能じゃないです。
無理な願いを完全な形で叶える事は出来ないんですよ。
どんな強い方であっても。
だから結末として物凄く残酷。
現実の貴方に逢いたいのに、そうじゃなかったから。
『好きだった』って言葉の一つも言えなかったから。
でも、例え夢だとしても、逢えて良かった。
というのがこの話。
恋した子ってこんな感じなのかな。
見てて辛いんですが。