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第7話 打開策

「このままではいかん!」


 軍人議員の重鎮、マルキエスは先ほど上がってきた報告を聞き、そう声を上げた。その報告の内容は『サガン王、ハン帝国に対して降伏を宣言』というものだった。

 王都が陥落したのは既に知っている事であったがまさかサガン王国が抵抗も見せずに呆気なく降伏する事は予想外であった。ハン帝国は王都を迅速に落として以降はサガン国内の占領を行っているがそれも何時まで続くかはわからない。サガン王の降伏宣言でそれも直ぐに収まる事になるだろう。そうなればハン帝国は満を持してロマ共和国に流れ込んでくるはずであり、今のロマ共和国がそれを防ぐ事はほぼ出来ないだろう。何しろ元老院はいまだに集まりが悪く、派兵すら決定できていない状況にあるのだから。

 それをどうにかしようにも軍人議員は基本的に他の元老院議員から嫌われている。軍人とは卑しい存在であり、そんな者が自分たちと同じ議員だと思いたくなどない。そう考えている議員がいるせいであり、たとえそう思っていない人物がいようと積極的に交流を深めれば嫌がらせをされる事もあった。そのため、軍人議員たちは若干浮いた存在となりつつあったのだ。その分軍人議員の結束はとても高く、全員が纏まる事で一定の勢力となっていた。


「どうしますか? このままでは我が国が侵攻されるのも時間の問題ですよ?」

「分かっている。故に、我らで解決するしかない」

「ですが我らだけで出来る事などたかが知れていますよ?」

「ああ、だからあれを復活させるのだ」

「あれ、ですか?」

「ん? 分からんか? 有事の際に発令され、権力を一人に集中できる方法だ」


 若手の軍人議員たちは何を言われているのか理解できていなかった。更に言えば老年の者でさえ分からない者がいるほどそれは発令されてなく久しいものだった。


「ま、まさか!? 独裁官か!?」

「そうだ。あれを使えばロマ共和国は流動的に動く事が出来る」

「独裁官? それは一体……」

「元老院議員で独裁官一人を指名する。指名された者は半年間だけロマ共和国における()()()()()()()()()()

「すべての? それは何処まで……」

「文字通り全てだ。この状況でいえば将軍の指名、徴兵の改定、将軍への権利増減……。ありとあらゆる事を独裁官一人で行う事が出来る」

「っ!? それは……!」


 若手の軍人議員たちはそれがどれだけの事なのかが理解できてしまった。他国における絶対王政がこの共和国で半年だけだが存在する事になるのだ。当然ながら国の動きは格段に良くなるだろう。


「王政を嫌い、元老院による共和制を取る我が国はそれゆえに意思決定が遅くなってしまう。それだけは不測の事態に動く事などできない。だからこそ独裁官を指名し、事態の収束を行えるようにするのだ」

「ですが、それではその者が王を目指したら……」

「そうならないように任期は半年と決められている。それ以上はどれだけ粘っても不可能となっている。当然、独裁官周りの改正も不可能になっている。半年で事態が収束しないのなら再び元老院で独裁官を指名する。だが一度選ばれた者は二度と選ばれる事はない。権力の集中を防ぐためにな」

「成程……」


 若手の軍人議員は祖国はそこまでして共和制を維持したいのか、と思ってしまったが口には出すことはなかった。


「ならば我らはその独裁官を指名するように元老院に働きかけるのですね?」

「そうだ。独裁官の指名は国家存亡の危機にある事、元老院が6割以上揃っている事だ。条件はそろっている。後は誰を独裁官にするかだがそれについてはちょうどいい人材がいる。お前たちは他の議員に根回しをしておくんだ。この独裁官の発令を見事通すためにな」

「「「「「おおぉぉぉっ!!!」」」」」


 軍人議員たちは動き始める。祖国の未来の為に。


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