43.家族
気がつくとまだ見慣れていない天井だった。
周りを見ると雑魚寝している人が沢山いる。
ボクの隣にはミレイさんが丸まっている。
この建物は最初に作った作業する人達が寝泊まりする建物だ。
皆ここに酔っ払って寝たみたい。
ボクもあんまり覚えてないけど。
今日ぐらいは休んでもいいかもなぁ。
外に出ると、中とは違い新鮮な空気がボクの肺を綺麗にする。
朝日がボクの目を刺激する。
だけど、温かい心地のいい日だ。
朝の香りが漂い。ちょっと昨日の屋台と酒の匂いが周りには漂っている。
というのも片付けがまだ済んでいないからだ。
子供達は流石に一旦家に帰ったみたい。
ただ『覇』領から来た家のなかった子達は引き取った。
この建物の端っこに寝ていたのが目に入ったので、大丈夫だと思う。
この前作ったため池に字力を流して水を発生させる。溢れた水を掬って顔に持っていく。
冷たい水が顔をしめあげる。これで気が引き締まった。はぁ。片付けしようかな。
そう思ったが、後ろから物音がした。
振り返ると子供が二人立っている。
昨日引き取った子供たちだ。
この子達は兄妹なのかな?
ちゃんと聞かなかったな。
上は十歳くらい、下の子が六か七歳くらいかな。
「おはよう。もしかしてお腹すいた?」
その質問には兄がコクリと頷いた。
その辺の屋台にあったパンと野菜と肉を挟んで器にのせる。それを二つ用意するとテーブルに乗せた。
「ここに座って食べな」
水を器に汲んで出してあげるとそれを美味しそうに飲んでいた。
向かい側に座る。
「君たちは兄妹なのかな?」
首を傾げる兄。
もしかして、それさえ分からないのか?
でも、面倒をみていたのか?
可哀想だから?
そう合点がいくとボクの胸から込み上げてくるものを抑えることができなかった。
「なんで泣いてるの?」
目頭を抑えながら目から出るものを抑えようとするが中々抑えられない。
「いや……ごめんね。君は立派だね。その子を見てあげてたんだろう?」
「うん。一人でかわいそう。僕と同じ」
「そうか。これからはボクと一緒に過ごさないか。こうやってご飯を食べられるよ?」
その言葉に兄は少し躊躇ったようだった。
「僕達、何もできない」
「それだったら、これからできることを増やしていこう」
「僕は強くなりたい。この子を守りたい」
兄は妹のようなその女の子を守りたいと言った。女の子の孤児は売られることが多い。もしかしたら、この兄が守っていたから免れたのかもしれない。
「わかった。ボクが戦い方を教える。一緒に強くなろう。そして、この子を守ってあげるといい」
「有難う。どうして?」
どうしてそこまでしてくれるんだと言う意味だろう。
「実はね、ボクも君たちと同じだったんだ。その辺にあるゴミを拾うことで生活していた。それをミレイさんとタイガさんという兄妹に拾ってもらったんだ」
「同じ?」
「そう。同じなんだ。だから、ボクも同じような子達がいたら助けたい。そう思ってたんだよ」
ボロボロのこの子達に服をあげたい。色んなことを教えてあげたい。ボクがしてもらったみたいに。
二人はサンドイッチを平らげると水を飲み干した。
「君たち、名前は?」
「しらない。この子は話さないから分からない」
女の子は喋ることさえしないみたいだ。言葉を発することさえできないのかもしれない。
精神的なものだろうか。
ボクには分からないな。
「そっか。ボクが名前をつけてもいいかな? その方が君たちを呼びやすい」
「ボクはいいよ。どう?」
女の子に対して聞くような素振りを見せると、その女の子は頷いた。
一応言葉を認識はしているみたい。
「じゃあ、君にはオウルという名前をあげる。妹にはサクラ」
兄には皆に好かれる王になって欲しいから。
妹はピンクの髪が桜という花のようだったから。『粋』領にしかない花らしいんだけどね。
「カッコイイ……」
「気に入ってくれたか? サクラはどうだ?」
コクリと頷いてくれた。
この子達の為にもいい所にしたいな。
「じゃあ、早速だけど、片付け手伝ってくれるか?」
「うん」
「じゃあ、二人でこの布を使ってこの辺のテーブルを拭いてくれるか?」
「いいよ」
布を二枚受け取るとサクラと一緒に拭き始めた。
その様子が微笑ましくてなんだかまた目から込み上げてくるものがある。
なんかボク、最近よく涙が出てくる体になっちゃったな。
「あれー? シュウイ、その子たち誰?」
「覚えてないの? ボクと暮らすことになった孤児だよ。こっちがオウルでこっちがサクラ」
「えぇー。可愛いぃぃぃ。私はミレイだよ?」
オウガの前にいって自分の名前をアピールしている。今は一生懸命テーブルを拭いてくれているからあまり話を聞いてないみたいだ。
「ねぇぇぇ?」
「ミレイさん、今一生懸命手伝ってくれてるから後にしよ?」
「むぅぅぅぅ! 朝ご飯食べる!」
「はいはい」
ダダを捏ね始めたミレイさんは放っておくの面倒なので、さっき作ったサンドイッチを作って出してあげる。
「はい。どうぞ」
「わぁーい! 有難う!」
ムシャムシャ食べ始めるのを見ていたオウルが口を開いた。
「あの人も子供?」
「はははっ。うーん。大人みたいな子供だね」
「誰がこどもだぁー!」
ボクたちの話が聞こえたようで口から色んなものを飛ばしながら怒鳴っていた。
こうして、家族が増えた。