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透明色  作者: 神木駿
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最終話星の色

その後私は一人電車に揺られながら、彼のことを思い出す。初めて見たときは違和感しかなかった。だって感情の色が視えないから。その日からずっと私は君を見ていたんだ。そしたら私は君がボーっと人を見ていることに気が付いた。

それがきっかけで、君は私と同じものが視えているんじゃないかなって思い始めた。多分その時から私は君のことが気になっていたんだと思う。だからあの雨の日に君を見つけたとき、気付いてくれると思ってわざとこけたんだ。

こんな女の子嫌だったよね。でも君はやっぱり見つけてくれた。あの時君が声をかけてくれたから私の物語は始まったんだよ。

私が君に恋する物語

「そうだったんだ」

ふいに周りが真っ白になって彼の声が聞こえた。

「えっ?葵君?どこ?どこにいるの?!」

「こっちこっち、後ろだよってうわっ」

私は後ろを振り向くと君が転んでいた。

「あははこけちゃった」

あの日とは逆だった。

「え?なんで?」

私がそう言うと君は立ち上がって答える。

「いや、あの時の最後、僕の名前を言った後の言葉が気になって」

私は君に会えた喜びで泣き叫びそうだった。でもそれをこらえて会話を続ける。

「最後まで聞いてなかったの?葵君ってたまに抜けてるよね」

彼が聞きたい最後の言葉を言ってしまうと、もう二度と会えなくなってしまう気がして少し怒った。

「ごめんね。あの時は耳がほとんど聞こえてなかったんだ」

「そっか…。じゃあ最後の言葉を言う前に少しだけいいかな」

私がそう言うと君は優しくうなずく。

「私もね葵君と出会えて楽しかったんだ。葵君のことだけは何も視えなかった。だけど葵君が優しくて誰かのために一生懸命になれるいい人だってすぐに分かった」

色の見えない君だけど、優しい人。

「みんなで初めて行った海でも、自分の命を顧みず子供を助けに行ったよね。私もあの色は視えていたけど怖くて動けなかった。あの時の葵君はかっこよかったよ」

色の見えない君だけど、かっこいい人。

「あの後その子のお母さんに彼女だって勘違いされたとき、恥ずかしくて君の方を向けなかったんだ。葵君は夕日のせいかなって顔してたけど、私の顔は真っ赤だったよ」

色の見えない君だけど、私が好きになった人。

「旅行に行った時も同じ部屋ですっごいドキドキしたんだ。夜、二人であの子と遊んだときも本当の家族みたいだなって思ってた。遊園地の時も君に会えて、桃と秋人君のこと思いっきり忘れちゃってたんだ。あの後桃にどこ行ってたのって怒られちゃった」

色の見えない君だけど、私が愛してる人。

私は君との思い出を最高の笑顔で話した。私の話を聞く間、君は優しい笑顔で私を見つめる。

「私も葵君と会ってからすっごく楽しかった。ずっと一緒にいられると思ってた」

溢れそうになる涙を必死にこらえて私は葵君に話す。もうこれで、本当にお別れのような気がして。

「ごめんね……一緒にいられなくて……」

君はそうつぶやいた。最後まで他人のことを気に掛ける君に涙が溢れそうになった。

「もっといっぱい話してたかった……けどもうそろそろみたい。聞かせてくれる?最後の言葉」

君は消えかかる自分の体を見てそう言った。私はうなずき一度大きく息を吸い深呼吸した。

「じゃあ言うよ。葵君、私も君のことがずっとすきでした。これがあの時言った私の言葉」

私がその言葉を言い終わると君は笑ってこう言った。

「ありがとう聞かせてくれて。じゃあね……渚さん」

学校で分かれる時のように普通に、まるでまた会えるかのように手を振った。私は必死に涙をこらえ笑顔で返した。

「またね、葵君」

その瞬間私は電車の中に戻った。戻ったとたん私の目から涙がとめどなく落ちた。周りに人がいるけれど今の私は何も視えない。涙で滲む視界はまるで私の心のようにぐちゃぐちゃで、もうどうしようもなくなっている。

君にはもう二度と会えない。けど絶対に私は君を忘れない。あの透き通るほどきれいな透明な色と一緒に。

「重要なお願い」続きが気になる!とか面白い!とか思われた方はぜひブックマークや星で評価を頂けると嬉しいです!

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