第二話家族の色
僕と秋人の降りる駅に着いた。
「じゃあ僕たちはここだから」
「うん。じゃあまた学校で」
手を振りながら君は微笑んだ。扉が閉まり進行方向に向かう電車を見送って、僕たちはホームの階段を上がっていく。
「かわいかったな星月さん」
「うん。ちょっとドジみたいだけどね。ていうか秋人は顔見れてないだろ」
「雰囲気だよ雰囲気。なんとなくの」
秋人とそんな会話をしながら家までの道を歩いた。秋人とは住んでいる場所が近い。幼なじみなのだから当然と言えば当然か。だからこうして一緒に帰ることがたまにある。この時間は案外楽しかった。秋人は運動神経抜群で背も高く僕とは正反対の位置にいる。秋人は感情と表に出る態度が同じだから、気を遣わずに話ができる唯一の親友だ。
「じゃあここで」
「おう、また明日学校でな」
僕たちは手を振り別れる。僕の家は秋人と別れる道のすぐそばにある。
「ただいま」
僕は家に帰って靴を脱ぎリビングへ向かった。リビングには夕飯の支度をしている母さんと、それを待ちどおしにしている弟がいた。
「おかえりなさい、もうすぐご飯できるよ」
「兄ちゃん早くしてね。僕おなかすいてるから」
「分かった分かった。荷物置いたらすぐ来るよ」
星月さんの色が視えない原因はまた後でかな。僕は自分の部屋に入り、荷物をベットの上に放り投げてリビングへ向かった。リビングの扉を開けると、食卓の上に彩り豊かな料理が並んでいた。
「今日のご飯は鳥の照り焼きとレタスとゴマのスープ、それと生ハムサラダよ」
「すごくおいしそう、兄ちゃん早く早く」
僕は自分の椅子に座りいただきますと言ってご飯を食べ始めた。
「最近学校はどうなの?秋人君とは仲良くしてるの?」
「うん、まあ仲良くしてるよ今日だって帰り一緒だったし。クラスの方はそれなりに」
「兄ちゃん彼女できないの?」
「そうよ。高校生活も二年経つんだからそろそろ彼女の一人ぐらいできてもいいころじゃない」
「そんな話はないよ。大体高二になったからって彼女ができるわけじゃないし」
「それはそうだけど」
「まあ君が出来たらちゃんと報告するからそんなに焦らせないで。ごちそうさまでした。このお皿も向こう持ってちゃうよ」
「うん。ありがとう助かるわ」
僕は自分のお皿と照り焼きが乗っていた大皿をキッチンに持って行った。
「お風呂沸いてるから入るなら先に入っていいよ」
「ん、分かった入ってくる」
そう言って僕は風呂場に向かい服を脱いでシャワーを浴びた。夕飯を食べている間も星月さんのことが頭から離れなかった。なぜ視えないのか、なんで透明なのか。
原因を探してもこんなことは過去に一度もなかったことだから分からない。誰かに相談することはできないし、どうしようもなかった。湯船につかりながらならいい考えが浮かぶかと思ったけど全く出てこなかった。むしろリラックスしすぎて頭が回らなくなっていた。
風呂から上がったら、テレビを見ながらまったりするのが僕の日課。今日やっていたテレビは心霊系のドッキリ番組だった。こういう嘘くさいドッキリに本当に引っかかるのかなんて考えながら見ていると、出演者の俳優が借りてきた猫のような感じの棒読みで話す。
「僕、霊感があって幽霊が視えるんですよ」
本当は見えていないくせに。こういう白々しい演技はテレビを楽しむ時には邪魔なものになってしまう。実際本当に視える人はいると思っている。僕もたまに視ることがあるし。
片側二車線のメイン通りで信号待ちをしていたら、向こう側に小学校低学年ぐらいの子が二人いた。楽しそうにおしゃべりしているのを見ていたら車が目の前を横切った。次に向こう側が見えたときにはその子たちは跡形もなく消えていた。周りには隠れられる場所は無く、一瞬で見えなくなることはあり得ない。あとからその場所を調べてみると交通事故で二人の小学生が無くなっていることが分かった。
他にも踏切で向こう側にいたおじいさんがいて電車が通った後にいなくなったとか。後になってあれは幽霊だったのかもって思うこともあった。けど、どの霊も害はなさそうだったからあまり気にしていない。
さっきの俳優は嘘をついているときの色が視えるし、何よりこのドッキリに引っかかっている時点でバレバレだ。そんなくだらない嘘はつかなきゃいいのにと思ってしまうが、テレビにでる有名人だから仕方ないのだろう。番組自体は出演者のリアクションや司会の回し方が面白かったから夢中で見ていた。
時計を見ると結構な時間が過ぎて、もうそろそろ十一時になるころだった。もうこんな時間かと思い、自分の部屋に戻ってベッドに入った。僕は君の顔を思い浮かべながら目をそっと閉じる。
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