いつも一緒
第7章 いつも一緒
オッティガとビューティは、疲れ果てるまで遊んだ後、さらに遊びました。彼等はオントナゴン湖を北にたどり、小さな側流に沿って迂回し、楽しく気ままな道を辿りました。これらの側流は彼等を多くの湖に導き、湖から湖へ、池から池へと彼等は彷徨いました。それは最高に幸せな夏でした。黄金の日々が過ぎると、彼等は南に戻り、分水界を越えてウィスコンシン川の源流域に入りました。ウォータースミートから遠く離れた場所を旅する彼らは、どこまでも果てのない湖、水晶のように澄んだ青い湖、葦に縁取られた神秘的で濁った湖、向こうが見えないほど大きな湖、そして松の木の奥深くに隠された宝石のような小さな湖を見つけました。それらのほとんどすべてで、カワウソの餌が豊富にありました。
秋になると、オッティガとビューティーはウィスコンシン州の北東部にあるウルフ川の上流にいました。ここではザリガニがこれまで以上に豊富で、彼らの喜びを台無しにするものは何もありませんでした。少なくとも、罠猟師が罠を仕掛け始めるまでは何もありませんでした。しかし、オッティガとビューティーは今では罠についてよく知っていました。悲劇は、生き残るための多くの教訓を彼等に教えました。彼らは水から上がったときにどこに足を踏み入れるかについて非常に注意を払い、鋭い鼻と耳は常に異常な匂いや障害物に注意を払っていました。彼らは、1つの場所に2日間滞在することはめったにありませんでした。その方が安全であることを知っていたので。それは彼らにとって難しいことではありませんでした。流れる小川と打ち寄せる波がいつも彼らを呼んでいて、彼らは放浪生活を愛していました。
彼らは一晩で遠くまで移動することは滅多にありませんでしたが、常に移動していました。時々、彼らは大きな張り出した木の下や、高潮や洪水時に根の下が洗い流されて空洞になった空間で寝ました。他の夜は、茂みの中の草や葉の巣で、夜空の下で寝ました。彼らが古いビーバーの家や中空の丸太や木を見つけたとき、それは完璧な休息場所になりました。
10月下旬、彼らは、深くて流れの遅い小川が蛇行する大きな杉の湿地を見つけました。他の小川や湖は凍っていましたが、この小川は11月まで水面が開いていて、ザリガニが沢山いました。そこはまさに荒野のエデンでした。低く垂れ下がった杉の枝の間や下には、鹿やウサギの小道が交差していました。鹿の狩猟シーズンが始まる11月の終わりまで、多くの種類の野生生物がこの沼地で平和に豊かに暮らしていました。狩猟が始まるとすぐに、多くのシカが沼地の真ん中に避難しました。そこでは、湿地帯が絡み合った倒木に覆われ、立ち木が密集して生い茂り、枝が低く垂れ下がって遠くが見えないようになっていました。唯一の開口部は狭い牧草地で、小川が何度も曲がりくねって流れていました。
ある日、オッティガとビューティーは、縁が凍っている小川の曲がり角を横切って氷の上を滑ったり、餌を食べながら楽しく遊んでいました。早朝から雪が降り、見渡す限り真っ白でした。新雪は彼等を狂喜乱舞の世界に陥らせ、彼等は全てを忘却の彼方に追いやって、鬼ごっこをし、雪の中を転がり回りました。ビューティーは仰向けに転がり、足を空中に蹴り上げ、オッティガは彼女に向かって滑り込み、まるで獲物に食いつくかのように、激しく飛びかかりました。彼らがお互いに転がり、格闘している間、オッティガは深く喉を鳴らし、ビューティはひどく傷つけているふりをして大袈裟に鳴き声を上げました。
彼らがこのゲームに飽きた時、ビューティは深い雪の下にトンネルを掘って完全に姿を消しました。そして、突然雪から頭を突き出し、彼女を探し回っているふりをしているオッティガを笑いながら見ていました。すぐに彼らは水に転がり込みました。そこでは、浮遊する雪の島が流れに沿って漂い、後ろに隠れるために格好の小さな小山が出来ていました。雪はほとんど止みましたが、彼等の遊びは続きました。
オーティとオッティガは向かい合い、立ち泳ぎをしたりレスリングしたりしながら、噛み合う真似をしました。その時、オッティガは遊びの最中に危険を察知し、15mほど離れている草地に立っている見慣れぬ姿に気づきました。それがほんの少し動いた時、彼は稲妻のように素早く警告を鼻で鳴らし、水中に身を潜めました。ビューティも反射的に身をかがめ、わずかでも遅れると危ない所でした。ちょうどその瞬間、弾丸が彼らを外れて水に突き刺さりました。
オッティガが見たのは、彼らに銃で狙いをつけていた鹿猟師でした。猟師は3頭の鹿を追い、湿地に入り込みました。雌鹿を追っている2頭の大きな牡鹿のうちの1頭を仕留めようとしていました。猟師は柔らかい雪の中を忍び寄り、慎重に進みました。沼地は彼の体重を支えられるほど凍っていたので、彼は一歩一歩ゆっくりと進み、木々の間の狭い隙間から雄鹿の1頭を探しました。
猟師はカワウソを目にする前に彼等が騒ぎ立てている音を聞きつけましたが、何がそんなに騒いでいるのか想像できませんでした。彼が動物達を見つけた後でも、それが何の動物であるかわかりませんでした。しかし、多くのハンターがそうであるように、その動物の毛皮が高価なものであるを期待して、彼はとにかく彼らを撃つことに決めました。貪欲の、またはカワウソに親切な「神の摂理」が(訳註:もし弾が当たって2頭同時に獲れれば漁師に取って貪欲、しかし狙いをつけるのに時間がかかり、弾を外したのでカワウソにとってラッキー)、両方の動物を一撃で殺そうとするよう彼を説得しました。彼は一瞬だけ狙いを付け直し、その隙に危険を察知したオッティガとビューティは逃げ去りました。
彼らは深く潜りました。彼らは水中をかなりの距離泳ぎ、曲がりくねった小川をたどり、沼地の奥へと進んでいきました。とうとう彼らは自分たちの巣穴にたどり着きました。それは大きな中空の杉の木で、唯一の入り口は水中にありました。ここなら人間から安全であることを彼等は知っていました。沼地は、雪を積んだ低い杉の枝がごちゃまぜになり、落ちた枝が密集し、倒れた丸太の迷路の中から新しい枝が生え出てきていて、ほとんど侵入できませんでした。最も賢い森の男でさえ、その沼地で彼等見つけることは不可能でした。
オッティガとビューティーは巣の中で寄り添うとチャックル音を出し合いましたが、どちらにも相手の声は聞こえませんでした。弾丸が耳の近くの水水面に当たったときの恐ろしい衝撃で、一時的に耳が聞こえなくなっていました。数週間、彼らは巣穴の近くに留まり、沼地の最も密度の高い場所から出ませんでした。その間に徐々に聴力が戻ってきました。
12月中旬になると、天気はさらに寒くなり、ビューティーは落ち着きがなくなりました。彼女は理解できない奇妙な動揺を感じていました。どういうわけか、暖かくて乾燥していて、いくつかの入り口があり、森の他のすべての生き物や人間から保護されている、より大きな巣穴を見つけたいと思っていました。ある夜、彼女とオッティガは巣穴を離れ、枝が絡み合った沼地を渡り、カラスが飛ぶように数マイル移動した後、ウルフ川の源流にあるパイン湖の近くに戻ってきました。