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あるカワウソの物語  作者: Nihon_Kawauso
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幸せな出会い

第6章 幸せな出会い


それからの日々、オッティガの孤独はますます耐え難いものになりました。彼がまだ孤児だったときに危険を避けるために採用した孤独な習慣は、間違いなく彼の命を何度も救いました。しかし、カワウソは家族で暮らす動物であり、オッティガの子供時代をとても幸せにしていた皆んなで遊ぶこと、互いに対する愛着、それらによって彼は家族生活に戻ることを切望していました。何ヶ月もの間、オッティガは森を旅しながら、他のカワウソの気配を観察し、遊び相手や仲間を探しました。小川に沿って 10マイルから15マイルごとに、すべてのカワウソや他の多くの動物が利用する路傍の上陸場所(pulling-out places-wayside stations)がありました。ここでは通常、川の曲がり角でカワウソが水から上がって近道をし、途中で止まって砂の中で体を乾かしたり、急な川岸を滑り降りたりしていました。それぞれの上陸場所(pulling-out places)で、オティガは他のカワウソの匂いを熱心に嗅ぎました。そして、彼が通り過ぎたことを示すために、乾いた葉をかき集め、その上に自分の糞を載せました。


オッティガは希望を失ったことはありませんが、その頃には森や小川を歩き回るカワウソはほとんどいなくなっていました。人間は、毛皮への欲望と、カワウソが自分達の魚を食べてしまうのではないかという誤った恐怖から、手当たり次第にカワウソを殺しました。そして、カワウソは親になるまでの成長が遅いため、毎年わずかな赤ちゃんしか生まれませんでした。それでもオティガは森の小道でカワウソの気配をよく見つけました。そして時々、静かな沼地やさざなみの小川を下ると、父、母、そして幼獣達が狩りをしたり遊んだりしているカワウソの家族を目にすることがありました。彼の心臓は興奮でドキドキし、憧れのチャックル音(chuckle)を出し、水面を越えて呼びかけました。大抵の場合、彼は失望する運命にありました。用心深い父親は、この見知らぬ若い雄カワウソを疑い、オッティガに無愛想な警告を送り、家族を遠ざけました。


春が訪れた今年は、これまで以上に寂しい日々でした。オッティガは現在3歳で、完全に成獣になった雄であり、自分の家族を持つ時が来ました。クロウタドリやブルーバードが夏に向けて巣を作るために戻ってくるのを見て、彼の心は重たく沈んでいました。ガチョウやカモも北に飛び去っていました。旅をしたいという内なる衝動に再び従い、オッティガは南東に通じる最初の小さな小川に陸路で向かいました。彼は湖を次々と旅し、それぞれの湖に1日以上滞在することはありませんでした。4月初旬、彼はオントナゴン川の支流に到達しました。美しい日々でした。それぞれの湖が前のものよりも愛らしく見え、シュラッター湖の近くにある子供の頃の家を何度も思い出しました。


ある涼しく明るい日、太陽の光が松林を通り抜けていました。昔の思い出が彼の心に溢れ、オントナゴン湖の中を悲しげに漂いながら、一緒に遊んでくれる者、チャックル音を返してくれる者、自分の巣を共有してくれる者を心から望みました。ミシガン州ウォータースミートの北にある川の深い池に来ると、彼は水に乱れがあるのに気づきました。何頭かの動物が飛び込んだところでした - おそらく迷子のビーバーかマスクラットだったのでしょう。オッティガは油断せず、じっとしていました。すぐに、彼が今まで見た中で最も美しく、最も滑らかな雌のカワウソが、カエルと一緒に丸太の上を這い出しました。その時彼は知りませんでしたが、彼女の名前はビューティでした。彼女は自分の獲物に集中していたので、池の上端にいるオッティガに気付きませんでした。しかし、やがて風が渦を巻き、彼女は彼の匂いを嗅ぎつけました。


彼女は食べるのをやめ、周りを見回しました。オッティガは喜びに圧倒され、チャックル音を上げながら、彼女が自分のような余所者カワウソをどう扱うか全く考えずに、美しい雌カワウソが座っている場所に泳いで行きました。彼女は、持っていたカエルのことをすっかり忘れて突然水に飛び込み、そのまま川を泳いで行ってしまいました。ビューティーはオッティガから離れようとして跳び跳ねましたが、オッティガはピッタリ彼女のそばにいました。彼女は怯えて彼に向かって叫びましたが、オティガは彼女を安心させるために甲高い短い音(chattering)を出しました。しばらくして、彼女はマナーを完全に忘れ、彼を噛もうとしました。オッティガは仕返しはしませんでした。ビューティーが浅い砂州に乗り上がり、追い詰められて立っている間、彼はとても静かに鳴き声を上げました。


オッティガはビューティーに興味がないふりをすることにしました。彼はチャックル音を上げながら、無関心を装い、泳いで池に戻りました。これは、彼が彼女を追いかけ続けた場合よりも、ビューティーを混乱させました。彼女は、岸辺に駆け寄り、彼女がカエルを食べていた丸太にオッティガが登るのをじっと見つめました。彼女は彼がどれほどハンサムであるかに気づかずにはいられませんでした - 体長は約5フィートで、美しい、均整のとれた体と、逞しく、優雅な背中を持っていました。彼の滑らかなこげ茶色の毛皮は、日光に輝いていました。ビューティは立ち上がり、強い関心を持って彼を見ました。彼女はオッティガより1歳年下で、体格はオッティガの約半分で、体重は彼の45ポンドに対して25ポンドでした。しかし、彼女は彼と同じくらいしなやかで滑らかで、少しだけ黒く、細かい毛皮で覆われていました。森の池のそばに立ってお互いを見つめ合っていたのは、ミシガン州で最も美しい2頭のカワウソでした。


オッティガは水に飛び込み、ビューティがまだ立って見ている土手に渡りました。今回はオッティガが近づいてもビューティーは逃げることなく、彼の友好的なチャックル音に応えました。


オッティガが、ずっと甘いさえずり音(chirping)を上げながら、松の葉で体をこすりながら体を伸ばし、最初はお腹の上を転がり、次に横と背中を転がるのを、彼女はうっとりと見ていました。ビューティはおずおずと彼の方へ向かいましたが、彼は気づいていないようでした。彼女はさらに近づくと、彼のそばにある松葉と葉の上を転がり始めました。オッティガは彼女に鼻で軽く触れました。幸せ一杯のビューティーは、円を描いて走り回り、前肢を胸まで押し上げて、土手から水に滑り落ちました。


オッティガは彼女の後に続いて滑り落ち、2頭のカワウソは潜り、流れの真ん中で一緒になって浮かびました。ビューティーはオッティガの鼻をそっと突つきました。しばらくの間、彼らはお互いに優しくキスをし、水の中で鼻を鳴らしたり、チャックル音を上げました。それから彼らは熱狂的な遊びの衝動に捉えられました。彼らは水を離れて岸に走り上がりました。最初にオッティガがリードし、次にビューティーがリードしました。彼らは水の内外でお互いを追いかけ、イルカのようにはしゃぎながら、冷たいきらめく池にジャンプし、飛び込みました。


一緒にいる幸せの中で、彼らは過去の悲しみをすべて忘れてしまいますが、ビューティはオッティガと同じように、多くの孤独な時間を過ごしてきました。オッティガが罠猟師によって家族をを失ったのと同じようにして、彼女は兄弟姉妹を失いました。それから彼女の母親はまた別の一腹の子供達を産んだので、ビューティーは出て行かなければなりませんでした。しかし、オッティガとビューティが出会った今、すべての困難と孤独な日々は過去のものとなりました。それぞれが忠実で真の配偶者を見つけました。太陽が輝き、鳥が歌いました。そして、ネコヤナギは、このカワウソ達がとても幸せであるのを見て、うれしそうにうなずきました。

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