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あるカワウソの物語  作者: Nihon_Kawauso
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ひとりぼっち

第4章 ひとりぼっち


次の春の初め、オッティガはシュラッター湖にある彼の古い家を訪れるという誘惑に抵抗出来ませんでした。彼は近道を取り、コッパーハーバーの東でスペリオル湖に流れ込む小川をたどりました。彼は岩だらけの丘を通り抜け、滝の周りを一周し、一晩で子供の頃の遊び場に戻りました。彼がスペリオル湖の岸をたどっていたら、1週間かそれ以上かかったでしょう。


オッティガがグラティオット湖を流れる小川の入り口まで南に移動したとき、氷はまだ多くの池を覆っていました。ビーバーのほとんどが密猟者によって殺されていたため、この地域のどこのビーバーダムの周りにも、生き物の兆候はほとんどありませんでした。しかし、オッティガは、下流にあるビーバー池で、池がグラティオット湖で産卵しようとしているゲンゲ(eel-pout)、または淡水タラで溢れていることを発見しました。彼は魚を追って潜水し、氷の上に運び、彼の強い歯で貪り食って素晴らしい饗宴を楽しみました。数百匹がプールや川の上流に群がり、グラティオット湖に卵を産み付けたいという自然の欲求に応えていました。


オッティガは寂しい夏を半島の昔のたまり場で過ごしました。森と沼地は相変わらず美しかったのですが、すべての小道と池、それぞれのビーバー池と川岸が彼に幸せな日々を思い出させました。ある日、スペリオル湖でニシンの群れを追っているときに、彼は夢中になって、今まで泳いだことのない距離まで泳ぎました。そのあたりの品定めをするために停止すると、少し離れた所に島がありました。マニトウ島でした。探検することを決心したオッティガは、泳いでやって来ました。それは岩だらけの海岸のある小さな島で、片側に小さな湖が隠れていました。そこは静かで、コケに覆われた岩の上に横たわり、日光浴をしているオッティガは、とても穏やかな気持ちでした。彼は本土に戻る前に、この人里離れた静かな隠れ家に1週間以上滞在しました。


オッティガは、この2度目の夏の間に大きくなり、力も増し、日を追うごとに食べ物を探すのが上手になり、森の伝承(lore of the woods)についても賢くなりました。秋になり、黒いアヒルと素早く飛ぶ青い翼のコガモが南に出発したとき、彼はコッパーハーバーに戻ってきました。そこで彼は二度目の冬を過ごしました。次の春、彼が2歳になったとき、彼は探検への衝動を完全に目覚めさせました。理由もよくわからないまま、彼はこのよく知った地域を離れ、新しい池や沼地を探し、刺激的で未知の湖や小川を発見しなければならないと感じました。


彼はスペリオル湖の岸に沿って西から南へと歩き始め、砂浜に流れ出る小川にたどり着きました。彼はこの透き通った小川をたどり、沼地やハンノキの茂みを曲がりくねって進み、途中で食べ物を捕まえました。高速道路に出たとき、彼は道路をまっすぐ横切り、小川に戻りました。すぐに、彼は氷の池に通じる小川の支流に来ました。ここで彼は、カワウソの味覚にとってとても大切なカエルや甲殻類をたくさん見つけました。お腹いっぱい食べた後、彼は本流に戻り、源流までたどりました。そこでは、水が次第に消え、地下水源に消えていました。


オッティガはスペリオル湖に戻ろうかと考えながら、立ち止まって休みました。しかし、彼には戻るべき家族はいませんでした。半島の北側は彼にとって今では孤独だけを意味していました。彼を彷徨う旅に駆り立ててきた本能に従い、オッティガは干上がった流れ(dry run)を伝って尾根沿いに突き進みました。尾根を越えて分水嶺の反対側を下ると、干上がった流れが彼をリンデン湖近くのトーチ湖に導きました。彼は湖の岸辺を泳ぎながら、人間が使用する波止場や船着き場を注意深く偵察しました。


トーチ湖上流の波止場で、オティガは両親と姉妹を亡くして以来初めての遊び相手を見つけました。ある日、彼が波止場の下を鼻と髭を使ってザリガニを探しまわっていると、小さな男の子と犬が魚釣り竿を持って波止場で釣りをしようとやってきました。茶色と白の小さなフォックステリア、ラグルは、すぐにオッティガのにおいを嗅ぎつけました。彼は波止場の割れ目から興奮して吠え、水面に駆け下りました。


最初、オッティガは驚いて、水の中に留まっていました。しかしやがて、ラグルズの鳴き声は喜びに満ちた友好的な挨拶であると確信しました。その犬は彼を遊びに誘っていました。彼は尾を「イップ、イップ、イップ」と3回振り、オッティガは嬉しそうなチャックル音(chuckling)を上げました。彼は幸せそうにイルカのように水中から空中に飛び出してまた潜ったり、宙返りをして見せ、テリアに水に入って一緒の遊ぶよう促しました。


しかしラグルスは水に入るのを怖がっていました。彼は浜辺を走り、オッティガに水から出てくるように吠えました。オッティガは彼のやり方に従うことにしましたが、ラグルズが駆け寄ってくると立ち止まりました。浜辺で5mほど近づくと、犬の鼻とカワウソの鼻が熱狂的に匂いを嗅ぎながら、お互いに用心深く近づきました。すぐに彼らの鼻が触れ、オッティガが動く前に、ラグルズは大喜びで空中に飛び上がり、オッティガの背中を飛び越えました。それから遊びが始まりました。彼らは砂の上を走り、杭をぐるぐる回りました。オッティガはボートに飛び乗り、ラグルズが彼を見つけるまで隠れていました。それから滑り出てくると、波止場でラグルズと一緒に騒ごうと急いで走って行きました。小さな男の子のフレディは、彼らのおどけた仕草に笑い、金切り声を上げました。


毎日、午後になると必ずかくれんぼと鬼ごっこが行われました。学校が終わるとすぐに、フレディはラッグルズと一緒にドックに急いで行き、カワウソの友達に会い、ゲームをしました。フレディの家族や友人もよく見に来ていましたが、遊んでる最中にオッティガが近づくことを許したのはフレディだけでした。夏から秋にかけて、オッティガはトーチ湖にとどまり、ここ数ヶ月の間で最も幸せでした。湖に氷が形成された後も、テリアの友達と離れたくなかったので留まりました。


感謝祭の日、フレディと彼の家族全員がホッケーの試合に行きました。数日前からラグルズとオッティガがはしゃいでいるのを強欲そうな目で観察していた新しい警備員を除いて、周りには誰もいませんでした。彼はオッティガの美しい毛皮のコートに目をつけ、それがもたらすお金に目が眩み、奪い取ることを計画していました。感謝祭の日に、彼はチャンスが来たと判断しました。午後遅く、ラグルズが波止場に駆け寄ったとき、警備員が彼のそばについて追いかけました。オッティガは水から挨拶の口笛音を鳴らし、すぐに彼とラグルズはレスリングをし、楽しそうに一緒に走りました。警備員はできる限りこっそりと波止場に忍び寄りました。オッティガは彼を見ましたが、彼はこの波止場では人間の匂いを恐れないことを学んでいました。過去4か月間、多くの友好的な人間が彼等のプレーを見に来ましたが、誰も彼に危害を加えませんでした。


警備員は可能な限り近づき、そしてホルスターからリボルバーを引き抜きました。彼はカワウソの優美な体に注意深く狙いを定めたが、引き金を引いた瞬間、ラグルズとオッティガが体を入れ替えました。哀れなラグルズは弾丸を頭に受けました。一瞬のうちにオッティガは波止場から飛び降り、氷に開いた穴に飛び込み、男が再び彼を狙う前に氷の下を泳ぎ去りました。警備員は自分のしたことに愕然としました。彼の雇用主であるフレディの父親が真実を知ったら、彼の仕事はなくなることを彼は知っていました。人目を忍びそして急いで、彼はラグルズの遺体を家に運び、炉の熱い火の中に投げ入れました。それから彼は、11月の寒い夕暮れに波止場から血をこすり落とすために戻りました。


フレディが最初にラグルスがいないのに気づいたのは翌朝でした。彼は何度も呼びましたが、ラグルズは現れませんでした。警備員は質問されましたが、犬に何が起こったのか何も知らない、と彼は言いました。フレディと彼の父親は、あちこちを探し舞したが、見つかりませんでした。最後に、彼等は波止場の端に湿った場所があることに気付き、よく見ると、血の痕跡が見つかりました。最初、フレディの父親は、オッティガがラグルズを殺し、氷の下を巣穴まで引きずって行ったと思いました。しかし、フレディは、カワウソと犬が愛情を込めて遊んでいるのをあまりにも頻繁に見ていたので、その可能性を信じることが出来ませんでした。


彼らは捜索を続け、波止場を綿密に調べました。そしてフレディの父親はついに、何が起こったのかをはっきりと告げる発見をしました。波止場の端にある直立した厚板の隅に、彼は銃弾の穴を見つけ、その穴の周りにいくつかの白い毛がありました。この手がかりから全貌が明らかになりました。そしてこの動かぬ証拠を前にした警備員は自白しました。


謎が解け、オッティガの疑惑が晴れました。しかし、それでラグルズを生き返らせることは出来ませんでした。オッティガは二度と波止場に戻ることはありませんでした。その日の午後、彼が泳ぎ去ったとき、彼は氷の下を通って近くの巣、湖岸にあるマスクラットの古い巣穴に逃げました。次の夜、彼はトーチ湖を永遠に去りました。その後の寒い日の間に、彼はポーテージ湖まで泳ぎ、スタージョン川の河口を渡り、川を遡ってオッター湖まで行き、そこで冬を過ごすことにしました。テリアの遊び仲間の死を悼み、オッティガはこれまで以上に孤独でした。しかし、彼は新しい教訓を学びました。罠猟師しか知らなかったときに彼が考えていたように、すべての人間が悪いわけではありません。そしてその夏に間違って信じ込んだように、全ての人間が善人であるわけでもありません。そうではなくて、個々の人間はその行動によって別々に判断されなければなりませんでした。

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