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あるカワウソの物語  作者: Nihon_Kawauso
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森林の夏

第2章 森林の夏


オッティガと彼の姉妹が最初に父親と知り合ったのは、このビーバーの池でした。父のイタトマは、体重が50ポンド近くもある大きなカワウソでした。彼は遠くから家族を見守っていましたが、母親が喜んで彼を受け入れるのを待っていましたが、その時が来ました。彼はとても大きくて堂々たる風貌だったので、子供達は最初この恐ろしそうな見知らぬ人を恐れていました。しかし、彼等はすぐに、彼が常に親切で優しいことを知りました。彼は子供達のゲームに参加するのが大好きで、彼等と同じくらい陽気に松葉の上で転がったりレスリングしたりしました。


しかし、彼は子供達にゲーム以上のものを教えました。オッティガと彼の姉妹は、少しずつ陸上を走るのと同じくらい簡単に泳げるようになり、毎日父と母の後を追い、川に沿って遠くまで進みました。彼等は、息を止めて尾を舵として使い、水中で潜ったり泳いだりすることを学びました。イタトマは、ザリガニやカエルを食べる方法を彼らに教え、池の底に沿って泳ぎながら獲物を追ったり、岸辺沿いの隠れ場所に潜んでいる獲物を探したりしました。


イタトマはいつも誰よりも沢山のザリガニやカエルを見つけ、みんなで食べるのに十分ありました。彼は熟練したハンターであり、彼の鋭い目と鋭い嗅覚は、食べ物がどこにあり、どこに行くのが安全かをいつも彼に教えているようでした。子供達と鬼ごっこをしたり、小川で狩りをしたりする時でさえ、彼の感覚は家族を守るために常に研ぎ澄まされていました。


ある日、家族がシュラッター湖を渡ろうとしていたとき、イタトマは水面に大きな影があることに気付きました。彼は鼻を鳴らして警戒音を出しました。カワウソ達が見上げるた丁度その時、空から大きな白頭ワシが急降下してきました。子供達と母親は一斉に潜りましたが、イタトマは潜りませんでした。彼は起き上がり、立ち泳ぎをしながらワシに向かって叫びました。驚いたワシは急降下をやめ、イタトマに届く直前に回避しました。そして、水上を飛行し、最も近い木に止まりました。ワシはおそらくカワウソ達を水面をうろついている魚の群れだと思っていたのでしょう。しかし、イタトマが家族を勇敢に守ったので、彼はそうではないことがわかりました。


その夏は、オッティガと彼の姉妹にとって幸せな夏でした。彼らは水遊びをしたり、ザリガニを捕まえたり、カエルを追いかけたり、湖で丸太を転がしたりしてとても楽しい時間を過ごしました。彼等の両親はシュラッター湖に出入りする側流に子供達を連れて行き、多くの旅をしました。彼等が初めてスペリオル湖まで旅をしたとき、子供達はスペリオル湖の岩の多い海岸に打ち寄せる波の大きな轟音におびえました。彼等は、ビーバー池のそばの静かな森で、これほど大きな波を見たことも、騒音を聞いたこともありませんでした。彼等が勇気を出して父母と一緒に波に飛び込むまでには、長い時間がかかりました。しかし、大きな波に慣れると、彼等はしばしばスペリオルの海岸に沿って泳ぎ、時にはベテ・グリス湾まで南下することもありました。


彼等は毎日、キーウィノー半島を遠くまで歩き回りました。子供達は、美しい小川と静かな池、広葉樹の森、四方を取り囲む背の高い真っ直ぐな松になじみ、それが好きになりました。春の終わりにはエンレイソウが丘の中腹に咲き、6月にはスギの沼地が繊細なピンクレディースリッパ(訳註:北アメリカ北東部原産の野生の蘭の一種)で華やかに彩られました。ブルーベリーの大きな花園が砂浜に生え、シンブルベリー(訳註:北米東部の低木様キイチゴ)とブラックラズベリーの茂みがいたるところにありました。カワウソ達は、夜に狩をしたり魚を捕らえたりする方がより安全だと感じたので、夏の暑い日中はほとんど寝て過ごしました。午後遅く、オッティガと彼の姉妹達は喜びに満ちて目を覚まし、涼しげな青い海に飛び込み、土手を登って暖かく甘い香りのする松葉の中を転がりました。


半島のこの北端は非常に近づき難いので、人間が訪れることは滅多にありませんでした。オッティガは、後に恐れることを覚えた人間という動物にまだ遭遇していませんでした。しかし、彼は毎日、鹿、マスクラット、ミンク、ビーバー、およびこの荒野の楽園を共有する他の動物に出会いました。春の終わりに一度、彼が沼地を走っていると、母親のトウヒライチョウがいわれもないのに怯え、巣から飛び出して翼を羽ばたかせました。そして時折、彼はアカライチョウがコツコツ叩く奇妙な音が遠雷のように鳴り響くのを聞きました。


ある6月の夕方、カワウソ達が泳いだり潜ったり、朝食用にカエルやザリガニを捕ったりしていると、グラティオット湖の流出口にあるビーバーダムの真ん中にある隆起した小島に、生後わずか1週間の子鹿が立っているのが見えました。母鹿が子鹿の世話をするには奇妙な場所に思えたが、野良犬やオオカミから子鹿を守るためにそこに置いたのは間違いありませんでした。ダムの両端は水の流れが速いため、襲ってくる敵を寄せ付けませんでした。最初に子鹿を見つけたとき、オッティガと彼の姉妹達は調査したかったのですが、賢いイタトマパパが彼らを呼び止めました。彼の信条は、自分も生き他人も生かせよ、だったので、いつも他の動物のことを考え、子供達が他の動物の母親やその赤ん坊に干渉することを、決して許可しませんでした。


しかし、カワウソの家族は、自分の面倒を見ることができる母親とその赤ちゃんに一度だけ会いました。彼等はクロクマの母親と3頭の子グマでした。ある朝、イタトマと彼の妻は子供達を連れてメドラ湖に向かう小川に向かい、サッカー(sucker、訳註:吸盤を持った底生魚)を獲っていました。そして、子供達が楽しんでいる間、両親は自分たちの餌を獲りました。子供達が土手に楽しそうに転がっていると、突然大きな母クロクマが小川の曲がり角に現れ、浅い水の中をゆっくりと歩き、前足で魚を引っ掛け、土手に放り投げて転がしました。彼女の2頭の若い子熊が岸辺に沿って続き、彼女が魚を放り出すのと同時に魚をむさぼり食いました。


クマを一目見たとき、イタトマは家族に警告を発しました。しかし、母親のクマが魚獲りを共有することをいとわないようだったので、イタトマはそのままいても安全だと判断しました。カワウソの子供達は、見知らぬ3頭の若い余所者に好奇心旺盛で、すぐに子グマ達に近づきました。オッティガが最初に行き、匂いを嗅ぎ、後退し、探るようなチャックル音(chuckling)をあげました。一方、子グマ達も彼を不審そうな様子で見ました。彼等は自分たちがどのように行動すべきか手がかりを求めて母親に目を向けましたが、年老いたクマは気にせずに魚獲りをしたり食べたりしていました。


子グマ達は座り込み、オッティガがすぐ近くに来るまで黙って見ていました。そして1頭が前足を上げて興味深そうに彼に触れました。するとオッティガはびっくりして小川に飛び込みました。しかしすぐに勇気を振り絞ってまた近づきました。そして最後には、4頭のカワウソの子全員が小さなクマの周りを走り回り、遊びに誘いました。ついに子グマは誘いに逆らえなくなりました。そして彼等は興奮して地面を転がり、カワウソの子達と乱暴なレスリングの試合に参加しました。


1時間近く、7頭のカワウソ達と子グマ達が走ったり、跳んだり、ボクシングをしたり、転がったりしました。唸り声をあげ、悲鳴を上げる毛皮の塊になり、どれがカワウソでどれがクマなのか見分けるのが困難なほどでした。カワウソ達はクマを小川に誘い込んで水の中での鬼ごっこをしようとしました。そしてクマ達はその辺にあるすべての木に登って見せびらかしました。しかし、ほとんどの場合、息が切れて疲れ果ててしまうまで、彼らは格闘し、鬼ごっこをしました。オッティガの母親は心配そうに見守っていました。これらの子グマ達がどれほど乱暴に遊んでるかわからなかったので。母親クマは、うっかり足の間に転がって来た子グマの1頭に平手打ちをした以外は、まったく注意を払いませんでした。


とうとうイタトマが子供たちに、もう行く時間だと呼びかけた時、彼らは新しい友達と離れるのをためらいました。その後の何日かの間、オッティガはいつも三つ子の子熊たちに会えることを願っていましたが、二度と会うことはありませんでした。ヤマザクラが実をつけた8月の終わり頃、彼はクロクマが近隣だけでなく遠方からも食べに来るのを見ましたが、3頭の若い友達がその中にいるかどうかはわかりませんでした。


森の中で、カワウソはミンクの母親がザリガニを子供達に与えているのを見ました。彼等は森の小道をよちよち歩くとげのあるヤマアラシに出会いました。彼らは、その地域の松の尾根に住んでいたミシガン州で唯一のペアである珍しいテンのペアの近くを通り過ぎたこともありました。子供達が成長し、強くなるにつれ、猛禽類の攻撃を恐れる必要はなくなりました。そして夏が終わりに近づいたとき、カワウソの家族は半島のすべての生き物と幸せに平和に暮らしていました。ザリガニとカエル、そして時によりサッカー(sucker。訳註:吸盤のある底生魚)、またはブルヘッド(bullhead、訳註:頭の大きな魚の総称)を餌にし、まだ人間や人間が仕掛けた罠や銃、そして彼等の犬には出会っていませんでした。

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