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あるカワウソの物語  作者: Nihon_Kawauso
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家族の再会

第25章 家族の再会


5月末までにトマとネセダはパイン川の河口に到着しました。そして、ウィスコンシン州の広い海に出たとき、彼らの心は喜びのあまり飛び跳ねました。ここは、前年の夏、彼らが家族とともにとても幸せに旅した場所でした。そして今、彼らのすべての希望が甦りました。最初にやって来た上陸場所(pulling-out place)で、彼らは熱心に注意深くすべての葉や茂みの匂いを嗅ぎました。興奮した大きな声で、ネセダはトマを彼が調べている場所に呼びました。そして、子供達が熱心に匂いを嗅ぐと、微かだが紛れもないオッティガの匂いが漂ってきました。


それは古い匂いだったし、オッティガはもう遠くにいるに違いありませんでした。しかし、少なくとも彼らは、彼が最近この地域に来たことを知りました。彼らはウィスコンシン川を下りながら熱心に観察し、匂いを嗅ぎました。そして、ほとんどすべての上陸場所(pulling-out place)で、彼らはオッティガの香りを見つけました、そのたびに少しずつ強くなりました。彼らは着実に前進し、ボスコベルの下のカワウソの滑り台でブラックホークとオライタの匂いも見つけました。


トマとネセダは幸せな期待で有頂天になり、川を駆け下り、お腹が空いて続けられなくなった時だけ、ザリガニを獲るために止まりました。彼らは、川の曲がり角に来る度にその向こうで、そして島に来る度にその反対側で家族と会えると期待し続けましたが、何度も失望するだけでした。


彼らが、多くの茂みのある小さな島の一つで、とても新鮮なカワウソの標識を見つけたのは、ミシシッピ川に注ぐウィスコンシン川の河口近くにいた時でした。それはブラックホークの標識でした、疑いの余地はありませんでした。そしてトマが興奮してチャックル音を上げながらネセダに来いと合図すると、彼等の下方の水辺から嬉しそうなチャックル音が聞こえてきました。トマとネセダは驚いて向きを変え、岸辺の頂上に駆け上がりました。すると川にはブラックホークがいて、水の中で立ち上がって、誰が呼んだのかを見ようとしていました。


3頭の兄弟はお互いに挨拶しながら、幸せな叫び声を上げ、鼻を小突き合い、そして狂ったように飛び跳ねました。数分後、眠そうなオライタがこの騒ぎは一体何なのか見るために、土手の上から顔を覗かせました。行方不明だった二人の兄弟が奇跡的に戻って来たのを見て、彼女は愛と幸福の叫びを上げながら彼らに駆け寄り、彼らの周りをはしゃぎ回ったり、妹らしい愛情を込めて彼らの鼻にキスしました。そしてオッティガ自身が、眠っていた土手から現れました。


オッティガは、長らく行方不明だった子供達が、元気な姿で駆け寄って自分に会いに来るのを見たとき、自分はまだ眠っていて夢を見ているのだと思いました。しかし、トマとネセダが嬉しそうに鼻を擦り付け、愛撫したので、すぐにそれが本物であると確信しました。彼等は、あまりにも夢中になって飛びかかったので父親をひっくり返しそうになりましたが、すぐにオッティガは大喜びの狂乱の中で、一度に4頭の子供達全員とはしゃぎ、取っ組み合いを始めました。彼らは土手に沿って走ったり飛び跳ねたり、泥の滑り台を滑り落ちたり、水中で夢中で宙返りしたりして、川が水しぶきで湧き立ち、暖かい5月の夕方に彼らの幸せな叫び声がこだました。


最初の喜びの爆発が終わった後、トマとネセダはすぐに「ビューティーはどこにいるの?」と尋ねました。そして彼らは、彼女を見つけようと、島の巣穴の匂いを嗅ぎ始めました。しかし、オッティガは彼らを思いとどまらせました。トマとネセダには、非常に不思議でしたが、オッティガは、母親を探したり、足跡をたどろうとしたりしてはいけないことを理解させようとしているように見えました。


トマとネセダはとても失望し、混乱しました。ビューティに会って、また川岸で一緒に遊ぶことを切望していたからです。彼らがブラックホークとオライタに彼女について尋ねても、彼らもそれ以上のことを知りませんでした。オッティガとビューティ、ブラックホークとオライタは、ミシシッピ川底のテレグラフ島で長い冬を一緒に過ごしました。2月下旬、ビューティは姿を消し、オッティガはブラックホークとオライタに彼女を追わせませんでした。


それ以来、オッティガは2頭の子供達を連れてウィスコンシン川の下流を上り下りし、ザリガニが豊富にいる所で餌を獲り、キカプー川の河口から遠く離れることはありませんでした。時々、オッティガは失踪することがあり、それは一度に何日も続くこともありました。そして、そうしたかったのですが、ブラックホークとオライタは、オッティガが自分を捜してほしくないことを知っていました。彼らは自分達だけで暮らすことに慣れていました。そして、トマとネセダは自分たちの冒険と数カ月間独立して生活したことを自慢していましたが、ブラックホークとオライタも彼らとほぼ同じくらい独立していました。


オッティガは何日もの間、4頭の子供達と一緒に過ごし、彼らと同じぐらい陽気で楽しく、彼らのゲームや狩の遠征に加わりました。それからある日、彼は姿を消し、一週間近くも音沙汰がありませんでした。彼らは彼の心強い存在が恋しかったのですが、彼等は今では立派な若いカワウソであり、一人でいる感覚を心から楽しみました。


オッティガが再び姿を現したのは、穏やかな6月の夜でした。4頭の若いカワウソは、島の巣穴近くの沼地でザリガニを捕まえていました。オライタは、水飛沫を上げすぎてザリガニを怖がらせ、穴に入れてしまったトマを叱っていました。


オッティガは彼らに泳いで近づき、謎に満ちたチャックル音を上げながら、皆んなに自分について来るように言いました。彼らは、オッティガの奇妙な態度に興奮し、好奇心を抱きながら、夏の夕暮れの中、一列に並んで上流へ向かいました。キカプー川の河口で、オッティガは彼らを先導して狭い岸辺を登り、川の多くの屈曲部を迂回し、木々の生えた近道を通りました。彼らは着実に川を上っていき、さらに森やイバラの生えた下草の奥深くへと進んで行きました。ついに彼らは柳の木の向こうにある小さな空き地に着きました。そしてオッティガは土手の上に上がると、静かなチャックル音を上げました。すぐに、楽しそうな囀り声が聞こえました。そして川岸沿いの岩棚の下から、ビューティが駆け出して来ました。


ビューティは、4頭の若いカワウソ達が自分に向かって突進してくるのを見た時、混乱と不安に襲われてしばらくうずくまりました。それから、彼女はそれが自分の子供達だとわかり、チャックル声を上げ、子供達に向かって飛ぶように走り寄り、夢中になって子供達を鼻で突いたりキスをし、喜びで興奮しながらトマとネセダの匂いを頭から尻尾までを嗅ぎました。彼女は喜んで飛び跳ね、子供達の間を次から次へと走り回り、そしてオッティガと鼻を触れ合い、幸せを分かち合いました。


突然、ビューティーは立ち止まり、走り去り、岩棚の下に消えました。すぐに彼女は、今度はゆっくりと、再び姿を現しました。そして母鶏のようにこっこっと鳴きながら再び空き地に進んで来ました。そして、若いカワウソ達は毛皮で覆われた小さな物体が3頭彼女の後ろをヨタヨタとついてくるのを目にしました。


オライタは喜びの鳴き声を上げながら彼らに向かって走り、興奮した兄弟達は勇んで彼女の後を追いました。ビューティは誇らしげに、そして優しく、3つの小さな毛玉をアバウトな列に並べました。彼女は家族全員を幸せそうに見回し、新しい妹達と弟を紹介しました。オッティガは彼ら全員の周りを行ったり来たりしながら、赤ん坊達に次々と鼻面で優しく触れ、幸せで夢中になりました。彼は自分の素晴らしい大家族を誇りに思い、赤ん坊達全員を鼻で愛撫せずにはいられませんでした。


トマとネセダ、オライタとブラックホークは、可愛らしい赤ちゃんを見て大喜びしました。そしてすぐに、誰が泳ぎを教え、誰が魚獲りに連れて行くかで口論になりました。赤ちゃん達も、自分達が注目されていると知って喜びました。そして、2頭の小さな雌と1頭の小さな雄は、転がったり、転がったり、円を描いて走ったりして、ついには、細い小さな足がくず折れて体の下敷きになってしまいました。


赤ちゃんたちは水泳を習う準備がほぼ整っており、すぐにでも家族全員が一緒に旅行出来ました。年長の子達は、年少の子達と遊べる幸せな時間が来るのを待ち望んでいました。そして、ビューティとオッティガは、2組の健康な子供達を見て満足していました。


とうとうビューティは眠そうな赤ちゃん達を岩棚の下の巣に戻しました。そしてオッティガは川にある島に戻るよう他の子供達に呼びかけました。柔らかな月明かりの下、キカプー川を泳ぎながら、オッティガは1歳になった子供達を愛情を込めて見守りました。今、彼らは幸せで興奮しており、ビューティと赤ちゃん達が彼等と一緒に暮らせる日を待ち望んでいました。しかしオッティガはそれでも彼らが満足しないことを知っていました。


これらの若者達は、あまりにも大きくて活発だったので、自分のペースを赤ちゃんのペースに合わせて遅らせることを考えていませんでした。そして、彼らは新しい兄弟や姉妹、そして両親を愛していましたが、オッティガは彼らが長くは一緒にいられないことを知っていました。彼等は自分だけで生きることの味を知り、そして一人で旅することへの誘惑を知っていました。そして、オッティガが彼等に合わせてあまりにもノロノロと動いたとき、すでに彼らはイライラした様子を見せました。


それは自然の摂理であり、あるべき姿でした。1歳の子供達は成長しつつあり、その理由はわかりませんでしたが、すでに同じ年齢の他のカワウソを探す必要性を感じていました。来春までに彼らは伴侶を見つけて自分たちの家族を築くでしょう。そして、彼らは両親と生まれたばかりの赤ちゃんを愛していましたが、彼ら自身の独立した生活を始める準備が出来ていました。


オッティガはこれらのことを理解し、それを受け入れるのに十分賢明でした。そして若者達と一緒に川で泳ぎながら、彼は平安を感じました。やがて家族は再び別れ、それぞれの道を歩むことになるでしょう。しかし、穏やかに流れる小川に沿って、そして時折湿地帯や紺碧の湖で、彼らは皆再び出会い、再び1つの家族になり、以前のように一緒に潜ったり一緒に遊んだりして過ごすでしょう。

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