序文
あるカワウソの物語(An Otter's Story)
Emil E. Liers
1953
私の友であるカワウソ達へ贈る。
この物語の読者がこれらの小さな生き物の愛らしさと知性に心を動かされることを祈って。
これは、2頭のカワウソとその両親、そして幼獣達の実話です。それぞれの事件は実際に起きた事実に基づいており、私が知っているカワウソ達に実際に起きたことです。オッティガとビューティーは、私が罠にかけ、狩りをした地域に住んでいました。希望する人は誰でも、ミシガンとウィスコンシンの水路に沿った実際の旅を辿ることができます。カワウソは、すべての動物の中で最も中傷され、誤解されています。彼等が行った莫大な量の善は、彼等が引き起こした小さな害を遥かに上回ります。私の祖父は、カワウソ達は魚を食べて生きていて、漁師の仕事を台無しにしていると言います。百科事典では、「彼等は私達の湖や小川に生息し、魚を殺戮する凶暴な動物です」と書かれています。寝言も休み休み言って欲しい。私は30年以上カワウソ達と暮らし、野生と飼育下の両方のカワウソを観察してきました。魚だけを与え続けるとカワウソは死に、ザリガニが彼等の主食であることがわかりました。
ミネソタ大学の故ロバート・グリーン博士は、カワウソに生魚を1ポンド与えるごとに、カワウソが蓄えている重要なビタミン B1の3万単位が失われることを発見しました。ミシガン州立大学とミシガン大学のオステンセン博士とラグラー博士は、冬におけるカワウソの食事の中で魚は40%未満であることを発見し、ミシガン州保護委員会にカワウソを保護するよう助言しました。
森や川のカワウソを保護する必要があるのは、経済的および生物学的な理由だけではありません。Ernest Thompson Seton(訳註:シートン動物記の作者)は次のように語りました。
「私がその命を語ろうとしたすべての獣の中で際立ったものがいます。それは恐れもせず非の打ちどころもない、荒野のシュヴァリエ・バヤード(Chevalier Bayard、訳注:フランスの国民的英雄である有名な騎士の名前)です。それがカワウソです。楽しく、鋭敏で、恐れを知らないカワウソです。温和で同族に対しては愛情深く、小川の隣人に対しては優しい;彼の人生は遊び心と喜びに満ち、苦難の中でも勇気に満ち溢れ;彼の棲家では理想的であり、死にも動じず;森の中を四足で歩んだ者達の中で最も高貴な小さな魂です」。