長い旅
第11章 長い旅
カワウソはこの池に2週間滞在しました。一方、オッティガはウルフ川を何度も往復し、より定住にふさわしい場所を探しました。一度彼は捜索に2日以上費やしたこともありました。彼が戻ってきたとき、子供たちは大喜びしましたが、チャックル音を上げて子供達と少し遊んだ後、彼とビューティーはカワウソ語で真剣な話をして多くの時間を費やしました。
その夜、彼らは巣を出てウルフ川を下り始めました。彼等はのんびりと移動し、途中でゆっくりと食事をしました。彼らが川の急流にやって来ると、騒音が子供達を怖がらせました。ビューティーは水を離れ、子供達と一緒に海岸に沿って歩きましたが、オッティガは飛び跳ね、滝と渦巻く水の中を泳ぎました。父親の巧みな泳ぎを見て、幼いネセダは勇気を出して、オティガと一緒に泳ぐことにしました。彼が岸を離れたとき、速い水が彼の足を押し流しました。小川を何度も何度も転がりながら、彼は転がり、岩にぶつかり、半分の時間は水中にあり、ほとんど窒息する所でした。どんなに頑張っても、彼は荒れ狂う水の中で泳ぐために体をまっすぐにすることができませんでした。水流が彼を水面に放り投げるたびに、彼は息を吸って恐怖の囀り音を上げました。
ネセダが静かな渦の中で再び泳げるようになるまでには、非常に長い時間がかかったように思われました。打撲傷を負い、鼻が水でいっぱいになった彼は、川の中流にある丸太に泳ぎつきました。渦の両側に高速の水が流れ、彼は岸にたどり着く方法がわかりませんでした。
この時になって、オッティガはネセダに追いつ来ました。彼は岸に向かって勢いよく泳ぎ出しながら、ネセダについてくるように呼びかけましたが、ネセダは丸太にしがみつき、怯え、さらに大きな囀り音を上げました。オッティガは戻ってきて、鼻で突っつき、首の皮膚を咥え、慎重に捕まえ、ビューティが残りの子供達と一緒に心配そうに待っているところまで泳ぎました。安堵のあまりぼうっとしたネセダは、静かに土手に横たわっていました。彼は、母親が、指示に従わずに勝手な行動をした自分を罰すると思っていました。しかし、ビューティーは彼が十分に罰せられたと信じていたようです。彼女は彼を鼻でつつき、優しくキスしました。一番小さな子が無事に戻ってきたことで幸せそのものでした。
急流のふもとで、彼らは再び川に入り、泳いだり漂ったりし、水に流されるがままにして下流に流れていきました。いくつかの場所では、急流でのように岩だらけで浅いのではなく、流れが非常に速くて深い箇所がありました。ここで子供達ちは、かつてない速さで移動できることに気付きました。急流の水路を素早く滑っていくのはスリリングでした。なぜオッティガとビューティがそれほど興奮していないのか、彼らには理解できませんでした。ブラックホークとトマは、イルカ泳ぎでダッシュし、自分のペースで泳いでいる母親の下を潜ったりしました。ネセダは、この流れが急流よりも安全であることを発見しました。彼もレースに参加し、彼等が漕いで泳ぐよりも速い流れに乗って、オライタをおいかけました。
多くの場所で、川は曲がったりねじれたりして、大きな屈曲部やヘアピンカーブを作っていました。屈曲部がある度にオッティガとビューティは上陸場所(pulling-out place)で水から上がりました。そして葉の堆積物を調べ、自分たちの標識をつけた後、子供達を陸路の近道に導きました。多くの場合、彼らは陸路を1/4マイルほど歩くことで、水路での移動を1~2マイル節約しました。
それぞれの上陸場所には、カワウソ、ミンク、ビーバー、および他の動物が何年も、おそらく何世紀にもわたって近道を作ってきた小道や交差点がありました。いくつかの小道は森の地面の1~2フィートの深さまですり減っていて、森の歴史についての多くの物語を語っています。近道の中にはロッドの長さが15~20mに満たないものもありましたが、カワウソ達はそれらをたどることで、移動時間を数時間短縮することができました。
一週間以上後、彼らはオッティガが彼らのために見つけた新しい家に到着しました。それは、ラングレード郡にあるウルフ川にある小さな森で覆われた島でした。大きさは長さ約300ヤード、幅11ヤードでした。水位が高い時に島の頭上に流木と丸太が山積みになり、カワウソ達はこの流木に仮の巣を作りました。彼らは丸太の山から誰にも見られないように水に飛び込み、島の東側の急な土手の下を泳いで、沈んだ丸太の下の土手に続いている、空き家のマスクラットのトンネル(run)まで泳ぎました。
そのトンネルは大きな松の木の下で上方に傾斜し、カワウソ達が眠れるいくつかの大きな部屋に広がっていました。様々な高さで岸辺に続く多くのトンネルがありました。1つのトンネルは角度を変えて正面入り口から7.5mほど下の水に入っていました。そして、この開口部は緩い(loose)根の塊で包み隠されていたので、完璧な秘密の出入り口になっていました。この巣穴を使っていたマスクラットは、その前の秋に罠で捕えられていたので、オッティガと彼の家族は、引っ越しの時に誰かを追い出す必要はありませんでした。
この島には、理想的なカワウソの住処となるすべてがそろっていました。島のすぐ上でウルフ川に合流する大きな小川があり、たくさんの獲物が見つかりました。カワウソ達が到着した最初の日、彼らは疲れていて空腹でしたが、子供達はすぐに丸太の溜まり場と流木の山を探索したいという誘惑に抵抗できませんでした。遊び好きなカワウソが隠れんぼをすることができる隠れ場所がたくさんありました。オライタは、丸太の山の頂上までよじ登ることが出来ることに気づき、兄弟達は彼女をまったく見つけることが出来ませんでした。彼らは慌てふためき、お互いを追いかけて走り回りました。そして、隅々の角や丸太の後ろに彼女がいると思って探し回りましたが、結局見つからず、結局、彼女は囀り声を上げながら高い所から姿を現しました。
まもなくビューティーが彼らに呼びかけ、食事の合図を出しました。子供達は流木の山(drift pile)のふもとにある張り出した土手に全速で走りました。オッティガは夕食のために大きなカワカマスを捕まえていました。彼らはカワカマスを見たことがなかったので、その周りに群がってじっと見ていると、大きな魚が激しくバタバタ暴れて彼らを怖がらせました。
ビューティーは魚の首の後ろをかみ、背骨を切断し、尾の近くの皮膚を引き裂き始めました。トマは母親の例に習い、一口食べました。そしてすぐに全ての子供達が魚を齧り始めました。それぞれが頑丈な小さな歯で塊を引き裂き、鼻面を空中にまっすぐ上げ、一口ごとに慎重に噛み、皮、骨、その他すべてを噛み砕き、楽しみながら残さず食べました。
カワカマスの長さは2フィート以上だったので、家族全員に十分な量がありました。ビューティーとオッティガは、自分たちの子供達が大きなカワカマスを食べ尽くすのを誇らしげに見守っていました。子供達が満腹になった後、ビューティとオッティガは残ったものを食べ、背骨まで食べて、魚の頭だけを残しました。ご馳走を食べた後、子供達は疲れて眠くなっていましたが、寝る前に、流木の山の下の池でもう一度泳ぎました。食事の残骸が毛皮とひげからすべて洗い流されると、彼らは岸に這い出して体をこすって乾かしました。
ビューティが彼女について来るように彼らに呼びかけたとき、子供達は吹き溜まりの山の葉のベッドで丸まる準備をしていました。オッティガとビューティは、この地域にどのような危険があるかをまだ知らなかったので、日中に流木の山の下で眠るのは安全ではないと判断しました。ビューティは東岸に向かって泳ぎ出し、マスクラットの巣窟の入り口に飛び込み、続いてブラックホークとネセダが続きました。オライタとトマは少し後ろにいて、母親と兄弟がどこに消えたのか不思議に思って、水面をうろついていました。
オッティガは流木溜まりから心配そうに見守っていましたが、すぐにビューティが再び泳ぎ出して浮上し、2頭の子供達を呼びました。トマとオライタが前足で彼女の体にしがみつくと、3頭全員が再び潜り、ビューティは彼らにマスクラットの巣穴への秘密の入り口を教えました。
中は暗いがかなり広く、通路の岩棚でネセダとブラックホークが彼らを待っていました。彼らは、木の根元に草や葉が敷き詰められた大きな空洞に達するまで、傾斜した巣穴を登りました。この部屋から別の通路が続いていました。しかし、それらをこの朝に探検するには子供達はあまりに疲れていました。彼らは母親と一緒に横になり、長い眠りにつきました。丸くなったオライタは尻尾の端を吸い、ブラックホークは前足の1つを吸いました。トマはビューティの耳をしゃぶり、ネセダは彼女の毛皮を少し分けてもらいました。2分で全員が寝静まりました。
6月の朝のまばゆい光の中で、オッティガは家族が無事に落ち着くまで待ちました。それから彼は少し下流に泳ぎ、大きな古いカエデの木が川に倒れたところに行きました。彼は根の下のくぼみに巣を作り、丸くなり、安心して眠りに落ちました。




