4頭のふわふわ毛皮の赤ん坊達
第8章 4頭のふわふわ毛皮の赤ん坊達
2月初旬のある寒くて静かな日、赤いキツネが、岩が多い松林の奥深くに倒れた丸太に沿って走っていました。突然、彼は甲高い鳴き声とミューミュー鳴く声を聞きました。彼は立ち止まって頭を傾け、何だろうと考えました。それは彼が立っていた丸太の小さな節穴から来ていて、彼の足元のすぐ下にあるように見えました。彼はおいしいねずみの夕食を期待して節穴の匂いを嗅ぎましたが、ねずみの匂いではありませんでした。甲高い鳴き声はさらに大きくなったようでした。キツネ氏は鼻をすすって前足で引っ掻き、節穴を大きくしようとしました。
甲高い鳴き声が止まりました。少し間があり、ガサガサ、ゴソゴソという音がしました。中空の丸太の遠くにある端から、カワウソが頭を突き出しました。それはビューティでした。彼女の目には奇妙な新しい輝きがありました。一目見ただけで、彼女は音もなくキツネに向かって突進してきました。
しかし、キツネは丸太から出てくる奇妙な匂いや音にあまりにも気を取られていたので、彼女に気づきませんでした。雪の塊が割れる音を聞くまで、彼は何が起こっているのか分かりませんでした。彼が見上げた丁度その時、黒い影が彼に向かって突進してくる所でした。キツネが急いで脇に飛び退いたとき、ビューティーは彼の足から6インチのところにむき出しの歯を見せ、猛烈な叫び声を上げていました。キツネはそれらの恐ろしい歯の外観があまり好きではありませんでした。そしてネズミを一口味わうという夢を無惨にも打ち砕かれ、彼は雪の上を跳ねながら走り去りました。
十分安全な所まで離れた時、キツネ氏は腰を下ろして今起きたことを考えました。彼が中空の丸太で匂いを嗅いだのはカワウソの赤ちゃんに違いない!ふむふむ。カワウソの味が好みではありませんでしたが、例えそうであったとしても、母親からカワウソを盗むのは簡単ではないことを学びました。ねずみの巣を掘るのとは違いました。母カワウソの体重は自分の半分だったとして、と彼は計算し、鋭い黄色い目を細めました。彼は彼女がどのように戦うことができるか推定してみました。彼女の脚は短く、キツネ氏ほど速く走ることはできませんでしたが、彼女の体はすべて筋肉質で、柳の杖のようにしなやかでした。彼女は自分の体を紐のように結べるかもしれないし、皮膚を裏返すことさえ出来るだろうし、彼女を抑えるには強力なパワーが必要でしょう。
キツネ氏はすぐに、新しい隣人のカワウソ達とは仲良く暮らした方がいい、という結論に達しました。彼は小川沿いでカワウソをよく見かけました。彼等はいつも陽気な隣人のように見えました。時々彼はうらやましく思い、彼らの遊びに参加したいと思いました。一度、彼がカワウソの群れに近づき、そのうちの1頭が彼にぶつかりそうになったことがありますが、それでもカワウソは噛もうとはしませんでした。そのカワウソは驚いて鼻を鳴らして警戒音を上げ、全てのカワウソが一斉に飛沫を上げて池に飛び込みました。すぐに彼等は次々と水面から頭を突き出しました。そして、鼻を鳴らし、水の中に身を屈め、再び遊び始めました。
考えてみれば、キツネ氏はつい昨日、死んだ魚を探してウルフ川の急流に沿って旅をしていた時に、この母カワウソの仲間を見たことを思い出しました。ビューティーが赤ん坊を寝かせていた丸太から約3マイルほど離れた場所で、オッティガは急流で岩を転がし、ザリガニ獲るのに忙しく働いていました。キツネ氏は浜辺に座って、オッティガが大きなサッカーを捕まえて、その一部を残してくれることを期待して見守っていました。しかし、オッティガはその朝はサッカーを獲る気はありませんでした。彼のメニューにはザリガニやトビケラのような美味しい餌が他にありました。ザリガニが豊富にいるには不適切な時期でしたが、湧き水が急流に流れ込む岩にいくつかの巣があり、そこではほとんどの場所よりも水が暖かくなっていました。
オッティガはキツネが何を待っているかを知っていました。大きな鋏を持っている見事な青いザリガニを捕まえたとき、彼はそれを背中から咥え、キツネ氏が座っている土手まで歩いて行きました。そしてうっかりザリガニを落とし、彼は雪の中を転がりました。キツネが凍てついた天候でこわばったザリガニに飛びついてご馳走を咥えた時、彼は唸り声さえ上げませんでした。オッティガはまったく気にもとめず、雪の中でのんびりとに転がったり、体をこすったりしているだけでした。キツネ氏がそれを思い出したとき、彼は、オティガとビューティよりも良い隣人を求めることは出来ないと確信しました。
その間に、ビューティは中空の丸太の赤ちゃん達の所に戻っていました。彼女が這って戻ってくると、何もかも可能な限り静かでした。見知らぬ者が彼女の巣穴を覗き見したなら、落ち葉の山しか見えなかったでしょうが、ビューティは、乾燥して腐った木材、コケ、落ち葉の山の真ん中に貴重な宝物があることを知っていました。彼女がキツネを追い払うために巣を離れた時、彼女は赤ん坊を葉と草で覆っていました。今、彼女は覆いを押しのけ、母親がこれまでに持っていた中で最も愛らしい物、4つの小さな毛皮の束、を見下ろした時、彼女の目は喜びで輝いていました。
カワウソの赤ちゃん達は生後4日で、子猫ほどの大きさでした。3頭の兄弟と1頭の姉妹がいました。彼らは、大きくてブロック状の小さな頭と顔、そして大きく広い口を持っていました。ビューティーは彼らの口が頭の下で開いているように見えたので、仰向けにしない限り彼らの口を見ることができませんでした。顎の両側にひげが生え、両目の上にひげの房が生えていました。それぞれが小さな黒い鼻と、頭の側面に小さな半月のような小さな耳を持っていました。赤ちゃんの子猫のように、生まれた時は盲目で、生後35日か36日になるまで目が開きませんでした。
彼らの毛皮は綿毛のように柔らかく、ねずみ色の灰色で、それぞれ約2インチの長さの、ずんぐりした三角形の尾がありました。彼らの短くぽっちゃりした脚には、それぞれの足に5つの爪の付いたつま先があり、4つの足すべてのつま先の間に水かきがありました。後ろ足は前足よりも長く、後ろ足のかかとには非常に特別なカワウソの装備がありました。これは、各かかとにある4つの粗い角のような滑り止め(calk)で構成されていました。自然はカワウソにこれらの滑り止めを与えてくれたので、氷の上や滑りやすい岩や急流の丸太の上を歩いているときに滑ることはありません。滑りやすい場所をこのように確実に移動できる水生動物は他にいません。
ビューティは彼女の4頭の赤ん坊の周りに丸くなって巣の中に落ち着きました。赤ん坊達に寄り添うと、彼女はドーナツのように丸まり、ドーナツの穴の中央に4頭の小さな赤ん坊がいました。赤ん坊達は目を覚まし、鳴き声を上げ、ビューティーが彼らを覆っていた葉を押しのけたので、少し肌寒かったようです。しかし、ビューティーがドーナツの穴を頭で覆うと、冷たい空気が届かなくなりました。彼女の体の熱で彼等は居心地良くなり、すぐに貪欲にお乳を飲み始めました。彼らが授乳しているのを、ビューティは優しく見守っていました。有名なインディアンの酋長にちなんで名付けられたブラックホークは、一番大きな赤ん坊でした。その名前が「インドのカウンセラー」を意味するトマは、ブラックホークとほぼ同じ大きさで、「インドの王女」である妹のオライタも同じくらいの大きさでした。「黄色い水」を意味するリトル・ネセダは、彼等の中で最も小さい子でした。ビューティーはすべての赤ちゃんを心から愛していましたが、小さなネセダには最も多くの世話をしました。彼は生きて成長するために特別な励ましが必要なようで、母親はいつも彼に乳を吸うのに最適な場所を与えました。
赤ちゃんたちが飲める限りの母乳を飲むとすぐに、ビューティーはそれぞれの赤ん坊の体を綺麗にしました。彼女は舌を使って、小さなカワウソ達の毛皮を手入れし、滑らかにしました。子供達は、これはまったく必要のないことだと考え、不快感をキーキー声で表明し、母親の視界から隠れようとしました。そのうちの1頭が身をよじらせ逃げようとすると、ビューティーは嫌がる子に前足を置き、動かないように抱き締めました。その子は抗議の声をますます大きくして、キツネ氏が丸太の外で聞いたのはこのキーキー鳴く声でした。ビューティは子供達をそれぞれ綺麗にし終えた後、見落としていない場所がないか、隅々まで注意深く匂いを嗅ぎました。
ネセダの番になったとき、ビューティは出来るだけやさしく扱うように気をつけました。どういうわけか、彼は他の子よりも弱々しく見えたので、ビューティは、彼が大きく強くなるのを助けるために彼を少し甘やかさなければならないことを知っていました。外が暖かくなり、雪解け水が再び流れ始めるとすぐに、家族は長い旅とザリガニ狩りを始めることになります。その時には、すべての子供達、特にネセダは、急流や森の小道に沿って安全に進むためには、タフな筋肉と丈夫な背中と脚が必要となります。