第一章 第二覚醒 ③再覚醒?
位置の再調整をいたしました。
(結局元に戻しました)
ややこしくて申し訳ありません。
以下は、そのまま移植しております。
離宮から出て、一旦王宮内へ移動した私は、父様の執務室に併設された応接室にいた。
向かいには、なぜか筆頭宮廷魔導士であるジェイシス様が座り、私は朝食をとりながら昨夜の説明を受けている。
昨夜の披露宴の後の光……もとい、魔力覚醒をどうやらジェイシス様は当然のことながら知っていたのだ。
「あんなデカい魔力波動を起こしておいて、気づかないわけがないだろ。俺以外でもある程度魔力感知ができる奴はみんな気づいてるんじゃないか? うちの宮廷魔導士は全員気づいていたぞ」
「はあ……そんなに凄いことだったんですね……」
「キリア嬢、君は相変わらずだな……」
私の呑気な返答にジェイシス様が頭を抱える。
そんなこと言われたって、こちとら、前世を合わせても、まごうことなきファーストキスだったのよ!?
その衝撃のほうが大きくて当たり前じゃない!
あの光にしたって……その前のキスの衝撃のほうが大きい状態だったし……まあ、「光ってるな〜。一体これは何?」くらいには思ったけども……。
あの時のグウェン様があまりに落ち着いていたので、私の中では所詮その程度の感覚だったのだ。
しかもその後、私は覚醒を見届けて力尽きて眠ってしまったのだから、何が起きたかなんて知る由もない。
「殿下がおっしゃっていた今回の『正式な覚醒』のきっかけについては……ひとまずサイには黙っておいてやろう」
「……んん? え!? 何で知って……!? ……まさか!」
「もちろん、知っている。殿下は君と何かあると、すぐに魔力に現れるようだからな。昨夜の魔力波動からして、ようやく口付けでもしたか?」
「いや〜〜〜〜〜!!! まさかの筒抜けなんて……」
「今ここにサイたちがいなくて良かったなあ〜」
思わず叫び声を上げ、私はそのまま頭を抱える。
顔が火照って仕方がない。
そんな私の慌てる様子を見ながら楽しそうに茶化すジェイシス様には、一体どこまで伝わっているのか。
今後のことを考えると正直、嫌な予感しかしない。
――これはグウェン様に一度相談したほうが良いかもしれないわね……。
ちなみに今父様とキース兄様は、私を屋敷に送るために、隣の執務室で急ぎの仕事を必死に片付けている最中だ。
あの誘拐事件以来、必ず父様と兄様たちのどちらかが私の移動に同行するようになってしまった。
用心に越したことはない、と言っているけれど、過保護が加速してしまっているのは確かだ。
今後の羞恥対策と家族の過保護具合について頭を抱えていると、ジェイシス様が話を元に戻す。
「とりあえず、そんな君たちの進展度合いなんか別にどうでもいい」
彼はさも面倒くさそうにそう言い切った。
「どうでもいいって……私にとっては死活問題なのですが!?」
むしろ、どうでも良いなら茶化さないで欲しい!
「そこは当人同士の問題だし。まあ殿下の能力の可能性は君次第かもしれんが……今はそこは問題じゃない」
――え? いやいや、殿下の能力の可能性は私次第って、それ実は結構大事な部分なのでは……?
そう思いはするものの、どうやらジェイシス様には話したいことがあるらしく、身を乗り出してきたので、一旦大人しく聞くことにする。
「覚醒した後に、また再度覚醒するなんて話は聞いたことがない。君と殿下については本当に異例ばかりだ」
「う〜ん……確かに渡された本にも再覚醒なんて載ってなかったですね。そもそも仮誓約なんて本来はないとも伺っていましたし……」
私の言葉に、ジェイシスは力強く頷いた。
「その通りだ。殿下の我儘で、資料を漁って影響のなさそうな方法を取りはしたが、仮誓約なんて本来は存在しないし、どこまで誓約の効力があるのかもハッキリしない。だから何が起きるかわからない。今回の覚醒がまさにその良い例だ」
「何が起こるかわからないって……」
「最初の覚醒時は見ていないから知らんが、たぶん今回殿下が正式な覚醒と思っているものは再覚醒で、次の能力に目覚めた可能性が高いだろうな」
「再覚醒……次の能力に目覚めたって……?」
「まあ、言ってしまえば第二覚醒だな。元ある能力が更なる力を帯びたのか、全く別の新しい能力に目覚めたのかはわからんが、殿下に確認してみないと……」
また面倒なことになってしまったと言わんばかりの表情でジェイシス様がため息をつく。
「あ、それとキリア嬢。今回の覚醒だけじゃなく、さっき言った『何が起きるかわからない』というのは君にも当てはまる。だから、本当は殿下とあまり離れないほうがいいんだが……」
その言葉に、私たちは同時に隣の部屋に続く扉を見つめた。
「サイがなあ……」
「難しそうですね……」
二人揃って「面倒すぎる」と声を合わせて項垂れる。
愛情深いのも、過保護なのも悪いことではないのだけれど、実際に何が起きるかわからない今の状況下では、できるだけ安全と思える策を取りたい。
「あの……私は屋敷に帰っても大丈夫なのでしょうか?」
「う〜ん……」
腕を組みながら唸り始めるジェイシス様。
時々眼鏡をクイっと上げる仕草を入れつつ、考え込む。
――え!? そんなに悩む状況なの!? 私帰っちゃダメなんじゃ……?
不安がる私に気づいたジェイシス様が手をひらひらと振る。
「そんな深刻に考える必要はない。いざとなれば、殿下が駆けつければ問題ないし、実際殿下は駆けつけたがるだろうから」
「それは……安心していいことではないような気がしますが……」
「ま、何かが起きた時のために、一応コレを渡しておく」
差し出されたそれは、真ん中に大きなルビーのような赤い宝石が入った金色のペンダントだった。
そのルビーを中心に周りには小さなダイヤモンドが埋め込まれている。
「これは……?」
「魔道具だ。その中心の宝石には転移の魔法陣を埋め込んである。今の君であれば、どこへ行くか念じながら、少し魔力を流すだけで起動するだろう」
私は手のひらのペンダントをジッと見つめた。
赤い宝石の中には、確かに細かい魔法陣が刻まれている。
こんなものをひょいと一令嬢に渡してしまえるとは、さすが筆頭宮廷魔導士様だ。
「転移……つまり、何かが起きた場合、このペンダントに魔力を込めて、グウェン様の元へ飛べということですね」
「その通り。あとはきっと殿下がなんとかしてくださる」
――え? それってほぼ丸投げって言いませんか?
思わずそう口から出かかったけれど、なんとか堪え、「わかりました」とだけ答えた。
まあ、これまでのこともある……。
きっと殿下が自身の番いのためにと全力でなんとかしてくださるのだろう。
◇
話が一段落したところで、ちょうど父様とキース兄様が入ってきた。
朝から姿が見えなかったカイン兄様は、今日は騎士団で普通に仕事に励んでいるらしい。
父様たちも本当は同じように仕事のはずなんだけれども……。
そんなことを考えていると、扉の向こうに不思議な気配を感じた。
そして、甘い香りも……。
目を瞑って、気配と香りをたどると、そこにグウェン様の存在をハッキリと感じる。
なぜか急にグウェン様の存在を直感的に感じるようになっている自分に驚く。
――これも番いの契約の力なのかしら……?
甘い香りはもちろん、ほんのり暖かく感じる気配。
仮誓約を終えたことで、もしかしたら、彼との繋がりがどんどん増えているのではないか。
その矢先に離れることを不安に感じながらも、私は父様とキース兄様に連れられ、馬車に乗り込んだ。
やっぱり嫌だと叫ぶグウェン様を必死に押さえ込むジェイシス様に見送られながら……。
お読みいただきありがとうございます。
早速ジェイシスによる説明回でした。
グウェンの我儘をもう少し抑えたい……早く大人になっておくれと願うばかりです。
次は、まあ、渡したら発動するのがお決まりですよね。
次回もお楽しみいただけますと幸いです。
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