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第一章 第二覚醒 ①兆し

位置移動の再調整になります。

ややこしくて申し訳ありません。

以下、そのまま移植しております。


大変お待たせいたしました!

第2部の更新をスタートさせていただきます。

仮誓約を結んだ後からのお話ですので、糖度高めでいきたいと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします!

「――――ア……」

「んー……」


「――……リア」

「んん……」


 ――……あれ? なんか甘い香りがするような……。


「……キリア」

「んぁ……」


「……おはよう、キリア……ふふ」

「!?」


 目を開けるとそこには、麗しいイケメンのどアップが!

 しかも……ケモミミが生えていて……。

 目をこすりながら、私は相手をじっと見る。


 ん? あれ? グウェン様??


 え?


「きゃーーーーーーー!」

「ど、どうした!? 何か嫌な夢でも見たのか!?」


 耳をつんざくような悲鳴を上げる私に、小首を傾げながらイケメンが心配そうに告げた。


「え!? グウェン様!? な、なぜグウェン様がここに??」

「なぜって……私たちは仮誓約を結んで、番いになったじゃないか」


「確かに仮誓約は結びましたけれど……。私が聞いているのは、そういうことではなくて……なぜ公爵邸の私の部屋にグウェン様がいらっしゃるのか、ということです」


 すると、私の言葉にグウェン様は、不思議そうに小首を傾げる。


「寝ぼけているのか? ここは王宮の敷地にある離宮だぞ。覚えていないか?」

「え?? 離宮?」


 ――そういえば、ベッドをはじめ部屋の家具や壁の模様も公爵邸と違っているような……。


 辺りを見回しながら、順序だてて色々思い出してみる。


 仮誓約の後の披露宴を終え、疲れ切ってぐったりしてしまったことは覚えている。

 なぜぐったりしてしまったのかが思い出せない。

 今離宮に居るということは、きっとそのまま王宮に泊まることになったのだろう。


「あ……そういえば」


 ――確か、ぐったりするきっかけが何かあったはずなんだけど……何だったかしら?


 とはいえ、なぜグウェン様がここにいるのかはわからないままだけれど……。

 思い出しながらも考え込む私の頭をグウェン様がそっと撫でる。


「思い出したか?」

「まだ全部は思い出せていませんが、大体は。……急に叫んだりして申し訳ありません」

「いや、別に構わない。キリアに何もなくてよかった」


 そう言うと、グウェン様は安堵した表情でにこやかに微笑んだ。


 ――なんなのこの甘い笑顔! 朝から糖度が高すぎるわ! こんなの私耐えられない……。


「む、無理……」


 音を上げて、思わずシーツで顔を覆う。

 寝起きにこんな甘い笑顔のアップなんて見せられたら、顔が火照って仕方ないし、心臓の鼓動がやけに速い。よく考えたら寝顔も見られたってことで……。


 私の思いを知ってか知らずか、グウェン様はシーツを突きながら声をかけてくる。


「……何が無理なのだ? なぜ顔を隠す?」


 声が聞こえた次の瞬間、バサッと目の前のシーツが宙を舞った。


「ええ!?」


 シーツの向こう側には、いたずらに成功したような笑みを浮かべたグウェン様。

 その上、彼は私の腕を掴むと勢いよく引き寄せた。


「せっかく側にいるのに、姿が見えないのは寂しいじゃないか」


 グウェン様の顔が目の前に迫ってくる。


「ふぁ!?」


 その途端、ようやく寝起きモードが解消されたのか、昨夜の記憶をはっきりと思い出す。

 披露宴の後に、一体何があったのか……。




 昨日の披露宴の後。


 バルコニーでグウェン様にキスをされ、瞑っていた瞼の先にまぶしい光を感じて恐る恐る目を開けた。

 同じように目を開けたグウェン様と目が合い、触れていた唇が離れた。

 なぜか何かを納得するかのように、白く光る自身の身体を眺めるグウェン様を、私もじっと見つめる。


「グ、グウェン様、光って……」


 戸惑いながら出てしまった言葉に、思わず口を押さえる。

 グウェン様は私と違って、全然驚いている様子がない。


「うん……キリア、大丈夫だよ。君のおかげだ」

「私のおかげ……?」

「ああ、そうだ」


 にこやかにそう答えると、満面の笑みで頷き再び私を抱き寄せた。


「え!? 一体どういう……」

「どうやら、今ので正式に覚醒することができたらしい」

「正式に……? やっぱり額への口づけでは不十分だったんですね……」

「そのようだ。ありがとう。キリア」


 ――正式な覚醒って『完全解呪』の力は使えていたはず……他にも何か力が覚醒したということかしら?


「グウェン様……覚醒のせいかわかりませんが、なんだか急に身体が重くて眠い……」


 グウェン様の優しい声と温もりで、どんどん身体から力が抜けていく。


「キリア? 大丈夫か、キリア? ……キリア!」


 こうして、私はそのまま意識を手放したのだ。




 そして、今に至る……と。


 目の前で嬉しそうに微笑むグウェン様だけど……やっぱりいくら思い出しても、グウェン様がここに居る理由がわからない。


「あの、グウェン様……」

「どうした? そんなに不安そうな顔をして」


 それでなくても顔が近いのに、心配しながらさらに身体まで寄せてくる。


 ――近い! 近すぎるわ!?


「昨日あの後、一体何があったのでしょうか?」


 私の問いに「そういえば、キリアは途中で眠ってしまったんだったな」とようやく思い出したかのように言うと、事の顛末を話し始めた。


 あの後、眠ってしまった私を、グウェン様は普通にサージェスト公爵邸へ連れ帰ろうとしたらしい。

 もちろんそのまま帰してもらえる訳はなく……帰るなら私を置いていくよう父様たちに詰め寄られたそうな。


 ――まあ、あの父様たちだもの。そうなるよね……。


 けれど、グウェン様が私を手放そうとしなかったため、ジェイシス様と国王陛下が必死に説得したらしい。

 どうやらグウェン様本人の中では、私たち二人を引き裂こうとする悪者たちから、私を必死に守っていたという感覚だったようだ。


 ――眠りながらしがみついて放さなかったとか言ってるけど、果たして真相はどうなのか……そんな記憶、私にはないのだけれど。


 何を言っても折れないグウェン様に、陛下が折衷案として、私をこの離宮に泊まらせることを提案して、なんとか話を収めたというのは想像に難くない。


 そして、グウェン様的には収まったのでしょうけれど……

 きっと父様を説得するのにさらにジェイシス様辺りが苦労をされたのは言うまでもないだろう。

 主に国王陛下とジェイシス様の苦労が目に浮かぶ。


 ――次に会ったら、謝っておいたほうがいいかしら?


 そんなことを真剣に考えていると、グウェン様が私の顔を覗き込んだ。


「私はキリアにとって、悪いことをしたのだろうか? アーヴァイン公爵邸へ帰りたかったか?」


 こんな捨てられた子犬のような目で悲しそうに告げるグウェン様に、本当は家に帰りたかっただなんて言える訳もない。


「い、いえ、起きてすぐは驚きましたけど、グウェン様が私のためを思ってしてくださったことですから、大丈夫です」


 ――まあ、さすがに寝起き一番にイケメンのアップは心臓に悪かったけども。でも、それは私にとってもある種のご褒美なわけだし……。


「キリアにとって、悪いことでないのであれば、良かった」


 そう言って満足そうに微笑むグウェン様。


 気に障ったり、悪いこととは思っていないけれど、気になることはある。

 なぜグウェン様が私の寝起きにここに居て、なんならきっと私の寝顔を眺めていただろうということ。


「あのグウェン様……」

「そんな思いつめた表情でどうした? やっぱり何か気に障ることをしてしまったか?」


「いえその……どうしてグウェン様がこちらに? グウェン様のお話では王族居住区にあるご自分のお部屋に泊まられたのですよね?」


 私の質問に、グウェン様の視線が彷徨う。

 明らかに何か後ろめたいことを隠している反応だ。


「グウェン様」


 さらに名前を呼んで詰め寄ると、下を向いて縮こまり、うずくまった身体からこれまで聞いたことのない、か細い声が聞こえてきた。


「も、申し訳ない……」


 今度こそ、なぜかさっきから生えたままのもふもふの耳がペタンと垂れ下がる。

 グウェン様はそのか細い声のまま、詳細をぼそぼそと話し始めた。


「本当はキリアが起きてくるまで待つつもりだったんだ。だが、同じ敷地内、同じ空間に君が居ると思うと、我慢ができなくて……気が付いたら、結界を突破して部屋で眠るキリアを眺めてしまっていた……」


「……!? ということは、寝顔もバッチリ!?」


 私の反応に、グウェン様は嬉しそうに顔を上げると、なぜかテンションを上げて語り始めた。


「ああ! スヤスヤと眠るキリアは本当にかわいく美しく尊くてたまらなかった。許されるのであれば、ずっと眺めていたかった……!」


 何かを思い出しているのか、目を細めながらウットリと力説される。

 けれど、その話している表情もまたキラキラしていて、とっても美しい。


「本当は眺めるだけのつもりだったのだが、私が近づくと急に甘い香りが溢れ出して……キリアの声が聞きたい、その瞳に映りたい、あわよくば抱きしめたい……と欲が抑えきれなくなってしまったのだ。すまない」


 番いの本能だから仕方ないのだと言い訳をされても、それは不法侵入では……。

 獣人は番いの側を離れたがらないと本にも書いてあったから、それが本能なのかもしれないけれど、この状況を父様たちに知られてしまうと厄介なことになる未来しか見えない。


「グウェン様……さすがにこの状況はマズいので、ひとまずお部屋にお戻りください。父様たちが王宮に来てしまったら、とても面倒なことになりますから」


 今が一体何時なのかもわからない。

 もしかしたら、もうすでに王宮に着いているかもしれない。

 もしそうなら、非常に危険な予感がする……。


「だが、キリア。私たちは仮誓約とはいえ、番いの契約をすでに済ませた身なのだ。そんなに怯える必要はないのではないか? そんな些細なことよりも、私は君との時間を大切にしたい……」


 些細なことなんかでは決してない……はずなのだけれど。

 自分を救ってくれた上に、大切にしてくれる存在から、甘いマスクでそんなことを言われて、揺れない訳はない……。


 私は、トキメキながらうっかりコクンと頷いて、さらに彼の手を取ってしまった。


 この後、その行動を非常に後悔する羽目になるとも知らずに――。

お読みいただきありがとうございます。

いよいよ第2部スタートいたしました。

以前のように毎日更新は難しいとは思いますが、できる限り更新してまいりたいと思っております。

再び、どうぞよろしくお願いいたします。

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