公爵邸攻防戦②(国王兄弟の場合)
電波が悪かったせいで、なぜか前書きと後書きだけ消えてしまって、本文も編集前のものに戻っていましたので、再更新しました。
「公爵邸攻防戦」の続きです。
よろしくお願いいたします。
「兄上……」
そろそろ日も沈み始めた頃、朝キリア嬢に会いに行くのだと喜びを振りまきながら、公務を猛スピードで終わらせ出かけて行った弟のグウェン殿下がしょんぼりした様子で国王の執務室に姿を見せた。
ちょうど仕事を片付け、今日はもう私室に引き上げようとしていた国王は、弟の様子に驚き、慌てて椅子に座らせると、自らも隣に腰掛け覗き込むように問いかけた。
「グウェン……一体何があったのだ?」
「兄上……キリア嬢に会わせてもらえませんでした……」
項垂れたまま泣きそうな顔でそう答えるグウェンに、国王はキリア嬢の家族――アーヴァイン公爵家の面子を思い浮かべた。
「まさか、番いの話を反故にしたいとでも言われたのか?」
「いえ……まだ王宮から戻ったばかりで疲れているので、今日はそっとしておいて欲しいと言われて……」
「それは確かにその通りだな」
「……王宮だと落ち着けなかったでしょうし、目覚めたばかりの彼女に、私が色々ショックな話を聞かせてしまったので、仕方ないのはわかっていますが……会えないと思うとより会いたくて……」
そう言ってグウェンは再び落ち込む。
「まあ、恋愛事は基本『押してダメなら引いてみろ』というからな。少し距離を置いてみるのも良いかもしれないぞ?」
国王は落ち込むグウェンの肩をポンと叩きながら、優しく諭そうとした。
けれど、グウェンは泣きそうな顔をしながらも必死にそれを拒んだ。
「折角キリアと少し寄り添えたのです! 今距離を置くわけにはいきません! 私は毎日通うつもりです!」
毎日という言葉に若干引きつつも、グウェンの勢いに驚いた国王は、ため息を吐きながら追い打ちをかけるような話をしだした。
「……実は今日、アーヴァイン公からお前との手合わせの許可を求められた」
「手合わせ……ですか?」
俯いていた顔を上げ、目を見開いて国王を見る。
「ああ。『我が家の宝に手を出すのですから、殿下にはそれだけのお覚悟がおありなのですよね?』と凄まれたよ。あんなに鬼気迫ったアーヴァイン公を久々に見たな」
――鬼気迫ったアーヴァイン公……戦場で思いっきり見たような気がするんだが。しかも、息子も同じように腹黒いオーラを放っていた気が……。
グウェンは戦場でのアーヴァイン親子を思い出し、思わず身震いする。
国王はグウェンを戦わせたくなかったので、距離を置くことを提案したのだろう。
「それで、どうするんだい? 怖いからキリア嬢を諦める? それともやっぱり王命出しちゃう?」
「王命はダメです! キリアと歩み寄ると約束したばかりですし、誓約までに互いを知って行こうと話したところなのです」
「そうか……なら、頑張って義兄たちと戦うしかないね」
怖いわけでないが、彼らを傷付けて、キリアを悲しませることはしたくない。
「戦う……ということは、手合わせの許可を出されたのですか?」
「ああ。公爵は却下したけど、兄弟には許可を出した。やっぱりダメだった?? まあでもそこは仕方ないよね……アーヴァイン公や公子たちだって、キリア嬢を手放したくはないだろうし、その気持ちもわかるし。……とはいえ、往生際が悪過ぎるけども」
そう言いながら国王は黒い笑みを浮かべる。
「なるべくなら争いたくはないですが……受けて立たないのは失礼なので、頑張ってみます」
「そうか……あ、魔法は使用不可、木剣のみの使用で許可しているから、大したことはないだろう」
魔法使用不可と聞いて、少し安堵したものの、逆に回避も難しくなったことにこの時のグウェンは気づかなかった。
「ということは……キースかカインのどちらかが毎日公爵邸にいるのですね……」
「そのようだな。先の戦いのこともあるし、騎士団も好きにさせているのだろう。それに公爵がうるさいだろうしな……」
そう言いながら国王は遠くを見つめ、ため息をつく。
「アーヴァイン公自身が休むと国の機能が止まってしまうから、やむを得ない。まあ正直、お前がアーヴァイン公と戦う形にならなくて良かったよ……あいつが一番ヤバいから」
「え?」
「すまん。そこは気にしなくて構わない。とにかく、互いに怪我などしないよう、十分注意して頑張りなさい。キリア嬢に良いところを見せられると良いな」
最後に茶目っけたっぷりにウィンクすると、弟の背中をポンポンと叩いた。
「はい。頑張ります!」
こうして、この翌日から、アーヴァイン公爵邸での攻防戦が幕を開けた。
お読みいただきありがとうございます。
公爵家の後は国王兄弟側をということで、初日に追っ払われてしまったグウェンでした。
次はいよいよ、両者の攻防が始まります。
次回もお楽しみいただけますと幸いです。
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