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公爵邸攻防戦①(アーヴァイン公爵家の場合)

番外編「公爵邸攻防戦」①になります。

元々「グウェン公爵邸攻略話」で進めようと思っていたのですが、迎える公爵邸側が準備を始めてしまいまして、、、この形になりました。

こちらも1万字超えそうなので、「宮廷魔導士子育て記録」と同じくらいになりそうです。

こちらは特に視点を定めていません。

よろしくお願いいたします。

 アテルナ帝国の残党の魔の手から無事に救出されたキリアが、父と兄たちの猛反対により、経過観察途中でアーヴァイン公爵邸へと連れ戻された頃のお話。

 


 アーヴァイン公爵邸では、連れ戻したキリアの就寝を見届けた父と兄たちによって、秘密の相談が行われていた。


「このままではキリアは本当に王弟殿下に嫁ぐことになってしまう……」


「父上……気持ちはわかりますが、許可を出したのは父上ではないですか」


 応接室のソファに座りながら頭を抱える父に同意しながらも、キースは冷たく言い放った。


「わかっている。わかっているが、だが! まさか番いの契約のほぼ八割方を出会って一週間で……一週間だぞ! しかも私が許可を出してからたったの三日だと!? いくらなんでも性急すぎじゃないか!」


 到底納得できるわけがないと、向かいに座る息子たちに訴えかける。


「その点においては、私もまったく同感ですが……とはいえ、獣人の契約は解除するとなると、相当厄介なことになるかと思います。下手をしたらキリアの命に関わるかと……」


「わかっている。そこが問題なのだ……どうしたものか……」


 すると、キースの隣に座っていたカインが頭を抱える二人に向かって、とんでもないことを言いだす。


「じゃあ、二人を会わせなきゃ良いんだよ。だってまだ八割なんだろ? なら、残りの二割を進めさせなきゃ良いじゃないか」


 それを聞いた父と兄は一瞬固まった。


 普段であれば、聞く耳を持たない話だが、拉致事件の際、王弟殿下に抱きかかえられたキリアを見て、沸々と怒りを募らせていた二人には、とても良い案に思えてしまったのだ。


「そうか! そうだな。会わせなければ良いのだ! たまには良いことを言うではないか」


 父は珍しく考えの足りない息子を褒めた。


「問題はどうやって会わせないか、ですね……あの様子だと殿下はきっと明日から通ってきますよ」


「やはりお前もそう思うか……」


「ええ。ほぼ番いと言っても過言ではない状態になってしまっていますからね。確実に通ってくるでしょう……」


「とにかく会わせないようにしなくてはな。何か良い手はないか……」


「ひとまず、初日の明日は、まだ戻ったばかりなので休ませたいと伝えて帰せば良いかと。さすがに初日はそれで引くでしょう」


「そうだな」


 父とキースは、互いにそう言って頷く。

 けれどカインはそうは思わないようで、再び突拍子もないことを言いだす。


「ん~俺が思うに、殿下は普通に初日から強行突破しようとしてくるんじゃないかな? だって、会いたいから来るんだろ?」


 その言葉に父と兄は目を見開いてカインを見た。二人の反応に驚いたカインは、言葉を続ける。


「俺が殿下だったら、会いたいからできる限りのことを全力でやると思うし」


 ――そういえば、殿下は、前回の訪問時、私たちの出迎えに気にも留めず、一目散にキリアの元に走った男だ。


 そんな思いが、二人の頭によぎった。


 キリアのことに関しての殿下の感覚は、もしかしたら本能で動くカインの感覚が近いのかもしれない。


「まずいな」


「まずいですね。早速屋敷の結界の強度を上げておきましょう。あと、転移陣なども置けないように、探知バリアも貼りましょう」


「そうだな。転移陣は見つけ次第、削除する方向で」


「正直、殿下に魔法で全力突破を試みられたら、結界など意味をなさないでしょうけど、さすがにキリアが居る屋敷にそこまではしないと思いたいです。それに……」


「それに? 何だ?」


「魔法で全力突破なんてしたら、母上が怒るでしょうから……」


「確かにな……」

「母上はやばい……」


 一瞬想像したのか、急に三人の顔色が悪くなる。


「……まあ殿下もそこは想像できるでしょうから、やらないでしょう」


 キースはソファに座り直しながら、大きく息を吐くと続ける。


「……魔法での全力突破はないとして……あるとしたら、やはり正面突破ですかね」


「そうだな。殿下の性格を考えてもその可能性は高いだろう」


「俺もそう思う!」


「では、まず対策として、キリアの部屋を移動させましょう。前回来られた際に、部屋は知られているので、しばらくの間、キリアには別の部屋を使わせましょう」


「なるほど! それは良い考えだ」


「あと、その部屋自体に結界を張って、家族と侍女以外は侵入できないようにします。さすがの殿下も、キリアの部屋自体に危害を加えようとは思わないでしょうし、キリア本人か、家族の誰かの誘導がなければ入れない」


 聞きながら二人は、うんうんと嬉しそうに頷く。


「ひとまずは、正面でどう引き留めるか、ですね……王弟殿下相手に手合わせを挑むわけにもいきませんし……」


「いや、挑んでもいいのではないか?」


「父上!?」

「いいのか!?」


 息子二人が思わず声を張り上げ父を見る。


「さすがに大けがを負わせたり命を奪うのはダメだが、普通に勝負するには問題ないだろう。なんせ我が家の宝に手を出すのだから、それくらいの覚悟はしてもらわんとな……」


 そう言って、父はとても悪そうに微笑んだ。


「魔法の使用はさすがに屋敷が壊れるから駄目だが、剣術や体術なら別に構わんだろう。一応明日陛下にも話しておく」


 『陛下』と聞いた途端、キースがピクッと反応して父を見る。


「一応言っておかんとな……あとでぐちぐち言われるのが目に見えている。その覚悟で挑んで来られよと、けん制にもなるしな」


「確かにそうかもしれませんね」


「よし! そうと決まれば、稽古だ!」


 勢いづいたカインは、そう言うと一目散に応接室を飛び出した。


「わしは、そうそう休めないからな……」

「私とカインでなんとか対応いたします。別に手合わせに勝たなくても良いのですよね。キリアに会う時間さえ失くしてしまえばいいのです……ふふふ」


「なるほどな……頼んだぞ」

「承知いたしました」


 似たもの親子は、真っ黒な笑みを浮かべながら、冷え切った紅茶を口にした。


お読みいただきありがとうございます。

まずはアーヴァイン公爵家側でした。

黒い企みはこの親子の得意分野という感じです。

王宮側の②も本日中に更新予定です。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


いつもブックマークや☆評価に、いいねをありがとうございます!

物凄く励みになっております。

続きもなるべく早く更新できるよう頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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