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第八章 召喚の真相 ③もふもふ

2話更新、2話目です。

ついにもふもふ回です。

「え?」


 光がおさまったそこには、一匹の大きな銀狼が凛々しくこちらに向かって立っていた。


「綺麗……」


「そうか。綺麗か……」


「え!? グウェン様!?」


 驚く私に銀狼が近づいてきて、こくんと頷く。


「そういえば……助けていただいた際に、お耳と尻尾が生えていたのは、薄っすらとですが覚えています……あれは」


「あ、あれは……あまりの怒りで魔力を制御しきれなくて……気づけばあんな中途半端な姿に……。私もあんなことは初めてで少し驚いたんだ……」


 私の言葉を遮ると、なぜかグウェン様は恥ずかしそうに少し申し訳なさそうに答える。

 どうやらあの中途半端な姿を見られたことが恥ずかしいようだ。


「あのお姿もとってもカッコよかったです!」


「そ、そうか。今のこれが獣人である私の本来の姿だ。キリアにはちゃんと見せておきたくて……」


 ちょっと嬉しそうになったグウェン様は、そう言いながら、私の様子を伺いつつ擦り寄ってくる。

 先ほど触った髪と同じく、極上の手触りのする毛並みに、思わずゴクリと喉を鳴らしそうになる。


 前の世界で触った犬よりももっともっと柔らかくてふんわりとした毛並み……!

 これは是非とも撫で撫でしたい!


 そんな私の欲望が顔からダダ漏れていたのか、グウェン様はさらに私のそばに寄ると、私の袖を口で引っ張って自らの身体に手を触れさせ、そのまま座り込んだ。


 え!? 触れということ!?


「触っても、いいのですか……?」


「ああ、好きにするといい」


 銀狼からグウェン様の声が聞こえる。


 こんな目の前の魅力的なモフモフに抗えるわけがない!


 そのまま背中の辺りを軽く撫でてみる。


 ああ、無茶苦茶気持ち良い手触り……!


「グウェン様、最高の手触りです!」


「そうか、それは良かった。もっと撫でても構わないぞ。辛い思いをしたんだ。存分に癒されてくれ。それに私を撫でるのは番いであるキリア、君だけの特権だ」


 そう言うと、さらに身体を低くして私が撫でやすい体勢をとってくれる。


 私だけの特権……!?


 その言葉に思わず頬が熱くなる。

 熱くなると同時にそれを嬉しいと感じている自分に驚く。


「では、お言葉に甘えて……」


 触れている私はもちろんのこと、撫でられているグウェン様も気持ちがいいらしく、もっと撫でろと言うように、身体がどんどんほぐれてだらしない姿になっていく。


 それと連動するかのように、部屋の中の甘い香りが濃度を増す。


 私の撫でる手に連動して耳がピンとなったり、へにょりとなったりするのも堪らない。

 

 前の世界のイメージだと……

 見た目や艶の感じは銀色のおっきなゴールデンレトリバーみたいなのに、触ったもふもふ感はサモエドみたいにもっふもふな感じ……


 あ! 子犬の頃のゴールデンレトリバーっぽいのか!


 手触り無茶苦茶気持ち良くて、シルクの綿を触っているような、カシミアとかアンゴラを触っているような……


 ほんと何なのこの毛並みー!!!


 尻尾も最初はブンブン嬉しそうに必死に左右に動いていたのに、気持ち良さげに脱力していき、次第にはだらんとなっていた。


 そんな感じで、遠慮なく思う存分撫で回しているうちに、いわゆるほぼ腹天状態になったグウェン様が気持ちよさそうに目を細め、すぴすぴと寝息のようなものが聞こえてきた。


 こちらまで睡魔に襲われそうになり、グウェン様のお腹にもたれかかる。


 そのまま顔をモフモフに押しつけ、いわゆる犬吸いをしてみた。


 甘くて心地の良い香りがブワッと広がる。


 ああもう……何ここ、幸せ過ぎる……。


 モフモフに顔をうずめて、しばし夢見心地状態。


 私がもたれかかったことで、グウェン様が目を覚まし、一瞬ビクッと動いたけれど、私が目を瞑っていたからか、そのまま抱き込んでくれて、さらなる幸せを堪能した。


 モフモフに包まれる幸せヤバい!

 これはもう、一度味わったら忘れられないよ~~!


 そんな心の声がどうやら漏れていたのかもしれない……。

 目を開けるとグウェン様が得意げな顔をして、私を覗き込むと、一旦少し離すと元の姿に戻った。


「……あのまま抱き込んでいたら、襲ってしまいそうだ……」


 ボソッとグウェン様が赤くなりながら呟いた言葉と、急に人型に戻ったおかげで、バランスを崩してしまう。

 気づいた時にはグウェン様の胸にのしかかっていた。

 思わず顔を真っ赤にして慌てて避ける。


 ──そういえば、ここ、ベッドの上だった……!?


 私の反応を見たグウェン様はほんのり赤い色を残したまま、少し照れた表情で感想を尋ねてくる。


「……気に入ったか?」


「……時々でいいので、できたらまた、撫でさせて欲しいです」


「もちろんだ。貴女に撫でられるのは私もとても嬉しい」


 本当に嬉しそうにそう言うグウェン様に、胸の辺りが思わずキュンとなった。


「その笑顔は反則です……」


「それを言うならキリアもだ。そんな照れた可愛い顔……ずるいぞ」


「ふふっ、あははは……ずるいって……ふふふふ」


 笑う私を見て何かに気づいたような顔をするグウェン様。


「キリアのそんなに笑った顔を見るのは初めてだ」


「あ、そういえば、こちらに来てからこんな風に声を出して笑ったのは初めてです」


 自分でも気づかなかった。

 この世界に来てから色んなことがありすぎて、心から笑うことがなかったことに、今更になって気がついた。


「では、もっと笑わさないといけないな」


 楽しそうにそういうグウェン様は、なんだか悪戯を思いついた子どものようで、もう一度私は声を出して笑う。


 それを見たグウェン様も一緒になって笑って、しばらくの間、二人で微笑み合っていた。


 それから二人で互いの好きな食べ物の話をしたり、魔法の話をしたり、泣き腫らした顔を魔法で癒してもらったりして、穏やかな時間を過ごした。

 その間、甘い香りがずっと漂い続けていたのは言うまでもない……。


お読みいただきありがとうございます。

ようやくもふもふ回でした。

もふもふ書いてると触りたくなります。

次は、サブタイにも入れている召喚の真相について、あの人が語りにきます。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


評価、いいね、いつも本当にありがとうございます!

ブックマークもありがとうございます。

もうそろそろ終盤です。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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