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第八章 召喚の真相 ①安堵

なんとか本日3本目、間に合いました!

ようやく目覚めたキリアからです。

 どれくらいの間眠っていたのだろう。

 目が覚めるとそこは、公爵家の自室ではなく、見慣れない豪華絢爛な部屋だった。

 ゆっくりと上半身を起こして辺りを見回す。


 え? 何この天蓋付きベッド。

 フレームの一部に宝石が散りばめられてる。

 公爵家のベッドも大概豪華だったけど、さらにレベルが上だわ。

 っていうか、確か私は中年オヤジに呪いをかけられて、真っ暗な空間に閉じ込められて、見ているしかできなくて……。


 思い出すだけで、ゾワっと寒気が走り、思わず両肘を抱えて腕をさする。


 あの後、獣人化したグウェン様とキース兄様が助けに来てくれて……あれ? それからどうなったんだっけ?


「もしかして、私あのまま死んじゃったのかしら……」


「君に死なれては困る」


 甘い香りと共に急に後ろから声がして振り向くと、そこには部屋の扉を閉めながら、安堵の笑みを浮かべてこちらを見つめるイケメンが居た。


「……グ、あ、サ、サージェスト様」

「違うだろう? キリア」


 ベッドに近寄ると、悪戯っぽく微笑んで私をじっと覗き込む。

 目覚めにこのレベルのイケメンは目に痛い。

 けれど、よほど心配していたのか、軽口を叩きながらも表情には真剣さが漂っている。


「グ、グウェン、様……」


 キラキラなイケメンにじっと見つめられていることもあり、恥ずかしさに思わず顔を伏せる。


「はは。やはり君は可愛いな、キリア。体の具合はどうだ? 大丈夫か?」


 気恥ずかしそうに笑いながらそう尋ねるグウェン様の頬もほんのり赤い。


 自分から振ってきて照れないで欲しい……。


 つられてより顔が熱を持ってしまう。

 コクコクと首を縦に振りながら「だ、大丈夫です」と答える。


「良かった……。……キリア、君が動いて、話している、それだけで私はもう、嬉しくてたまらない」

「え……?」


 そう言いながら、本当に泣きそうな顔をして嬉しそうに、頬に手を当てられ見つめられる。

 今にも頭が沸騰してしまいそうだけれど、振りほどくこともできない。

 

「本当に心配したのだぞ。おかしなところがあれば、すぐに言ってくれ」

「はい」


 よほど心配させてしまったのだろう。彼の手は少し震えていた。

 私の具合を聞いて安心したグウェン様は、侍女が用意してくれていたであろう水差しからコップに水を注ぎ、私に差し出す。

 それを受け取り一口飲むと、口の中でほんのり鉄の味がした。


「鉄の味が……口の中を切ったのかしら……?」


 そうボソッと呟くと、その途端に甘い香りが強くなった気がした。


「あの、ところで私は一体どうなって……? それにここはどこですか?」


 気になっていることを次々聞くと、優しく微笑みながら頭をポンポンとされる。


 そしてグウェン様はそのままベッドの脇に腰掛け、ことの詳細を話し始めた──。



 犯人はアテルナ帝国の元宰相で、やはりグウェン様を王に担ぎ上げようとしての犯行だった。


 私の呪いは無事に解かれたと聞いてホッと胸を撫で下ろす。


 けれど、それと同時に染め上げられてしまった事実を知って、本人を目の前にしてショックの色を隠せない。

 さらには先ほどの鉄の味が、グウェン様の血だと教えられ、血の契約をも不可抗力の末に完了してしまったことを告げられた。


 話し終えたグウェン様は、「私を煮るなり焼くなり、キリアの好きにして構わない」と反省モード全開になっている。

 まるで怒られたワンコのように縮こまっているのがなんだか少し可愛らしく見える。


「……あの、グウェン様。ということは……」

「何から何まで本当にすまない……あとは、誓約を残すのみだ」

「え? あの、誓約だけって……そ、その、あの、せっ、せ、せっ」


「接吻か?」


 はっきりズバッと言わないでー!


「……はい」


 顔を火照らせながら、小さく答えた私に、それまでなんてことない顔をしていたグウェン様の耳がほんのり色づく。


「それは……だな……先日キリアが制約魔術で苦しんだ際に、君を助けることに必死で……その、魔力を込めるために、額に、口付けてしまって……」

「へ? あ、口じゃなくても良いの!? 良かったー! って、あれ? 良くない??」


 どんどん顔を染めながらたどたどしく話すグウェン様の言葉に、うっかり素の自分が顔を出す。


 まずい……気をつけなくちゃ。


 そんな私の反応にグウェン様は驚いたように目を丸くさせた。


「キリア、君は怒らないのか? てっきり知らない間に口付けたことを怒られるか、泣かれると思っていたんだが……」


 そう言って少し俯き、困ったような表情になる。


 どうやらこのこともあって、「煮るなり焼くなり〜」などと言っていたようだ。


 喋り方は気にしてないみたいで、良かった。


「あ、いえ、その、勝手に口付けされていたことは怒っていますが……でもそれは私を救うためですし……」


「見た目に反して、君は大人なんだな。ありがとう」

「へっ?」


 満面の笑みを浮かべて、さも愛しいものを見る甘い眼差しを向けたまま頬に手を当てられ、思わず妙な声が出る。


 甘い香りはさらに増し増しだ。


 でもグウェン様に触れられているとなんだか不思議と落ち着く。

 囚われの身となり、怖い目に遭ったばかりだからか、無意識にその手に頬を擦り寄せた。

 そんな私を優しく愛しそうに見つめている。


 そんな彼の手の温もりと優しい眼差しに、気付けば目からは涙が溢れ出していた。

 不安で胸が押しつぶされそうになっていたこと、味わった恐怖が次々に頭をよぎり、止められない。


 一瞬驚いたグウェン様は、私の涙を指で拭うものの、なかなか止まらない状況に、グイッと私の腕を掴むと自分の胸へと引き寄せた。


「ふぁっ」


 彼の広い胸に閉じ込められ、ギュッと抱きしめられた後、優しく低い声で「本当にすまなかった。よく頑張ったな。もう大丈夫だ」と囁きながら、頭を撫でてくれた。


 その言葉で私の涙腺は完全に決壊してしまい、とめどなく涙が溢れ出す。


 嗚咽を漏らしながら泣き続ける私を、グウェン様はずっと黙って抱きしめ続けてくれた──。


お読みいただきありがとうございます。

ようやく戦い終わりの甘い回に辿り着きました。

甘い話の後はふもふが続く予定です。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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