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第七章 獣人の魔力 ⑤獣人の力(グウェン視点)

グウェン視点続きです。

キリア視点の続き部分にいよいよ突入です。

◆グウェン視点◆


 ──キースは唖然とした表情でキリアを見つめた後、がっくりと肩を落とし、音がしそうなほどに自らの拳を強く握りしめた。


「だから止めたのだ! ジェイシスが言っていただろう。呪いによって奴への攻撃は全てキリアへ転送される。下手に攻撃すればキリアが傷つくのだ」


「……つい頭に血が上ってしまいました……」


 私の言葉にさらにキースは項垂れ、俯いたまま小さく呟いた。

 目の前のキリアの惨状に我を忘れてしまったらしい。


 これがジェイシスの言っていた呪いの力か……。

 まさかオーガスのみならず、魔導士への攻撃まで吸収するとは……思っていた以上に厄介だ。


 そんな我々の様子を見て、オーガスはニヤリとすると、嫌味のような言葉と共に、先ほどの続きをを語り始めた。


「……『お人形』が話せないようなので、私が説明して差し上げましょう。あなたの番いの魂は王妃によって異界に送られていたのです。そして、その魂を()()()が異界から呼び寄せたのですよ! 王子は私に感謝して欲しいものですね~」


「なんだと!?」


 「この世界には存在しない」と言われた私の番い。


 そもそもこの世界に存在しないのではなく、故意に異界に送られていたというのか……?


 それも王妃の陰謀で……?


 あまりの衝撃に頭が付いていかない。

 その上、この男がキリアの魂を異界から連れ戻したなど……一体、何を信じればいいのだ。


「あなたは王妃に、そして王国に、長年騙されてきたのですよ。番いを奪われてまで王国に尽くすなど……ただ良いように利用されていただけとも知らずに」


 混乱している場合じゃない。

 キリアを助けることが先決なはずだ。

 こいつの話に耳を傾けてはいけない……わかっているのに、気になってしまう。


「そ、そんなことどうでも良い! お前の狙いは私なのだろう? さっさとキリアを解放しろ! 話はそれからだ!」


「ええ。ですから、王子は私に感謝して、私のために皇帝になっていただかないといけないのですよ。そうすれば、おのずとこの番いもあなたと一緒です。まあ、お人形のままですけどね」

 

「ふざけるなっ! 誰が皇帝になどなるものか!」


 怒りがこみあげてきてどうしようもない……。

 声を張り上げる私に、オーガスは肩をすくめて、困ったていを装う。

 それからこれまでとは異なる妙に圧のある笑顔で、座った眼をしてゆっくりと語りかけた。


「立場がわかっていないようだな……あなたの番いがこのままどうなっても良いのですか?」


 そう言って、男は再び魔石を手に取った。

 それを見た瞬間、怒りが限界を突破して、体中の魔力が沸騰するような感覚に襲われる。


「貴様~~~~!」


 怒りを露わにオーガスに向かって歩き出す。

 一歩進むごとに魔力が体中からどんどん湧き出してくるのがわかった。

 それは、いまだかつて味わったことのない感覚ではあったが、不思議と心地の良い感覚。


 気が付くと銀の耳と尻尾が現れ、私の姿は狼の獣人へと変化していた……。


「く、来るな! そ、それ以上近づくとこの番いを──」


「させるか~~~~~!!!!」


 獣人化した私の姿にオーガスと魔導士たちは一斉に慌て出し、ガタガタと震えて動けなくなったオーガスは、手にしていた魔石を落とし、舌も回らないのか呪文も唱えられない。

 その間にも私は、オーガスに向かって魔力を増しながら迫っていく。


 魔石を諦めたオーガスはしどろもどろになりながらもなんとか魔導士に命令を出す。


「お、堕とせ! に、人形を、堕とせ~~~~~!」


「キリア!!!!!」


 オーガスの言葉に嫌な予感を覚え、私は咄嗟にキリアの名を呼ぶと獣人の魔力を全力で解き放った。

 その獣人の魔力を全身に直接浴びたオーガスはその場に倒れ込み、そのまま気絶する。

 魔導士たちは私の力におびえ、どんどん後ずさったり、必死に逃げようとするけれど、そんなものはどうでも良い。

 ケースの中は既に黒紫色の靄で充満し、キリアの姿が確認できない状態になってしまっていた。


 ──キリアを、キリアを助けなければ!!



 人を操る魔法は、何度も重ねることで、心を保てなくなり人格が壊れてしまう。

 ケースの前に行き、破壊を試みる。

 剣を使うかどうか悩む時間さえもが惜しい。

 この靄を早く取り除いてしまわなければ、キリアの心が壊れてしまう。


 そう焦れば焦るほど、選択肢がなくなり、気づくと私は自分の拳に魔力を込め、一気に振り下ろしていた。


 辺り一面にガラスの破片が飛び散る。

 キリアに傷が付いてしまわないように、すべての破片を魔法で自らに引き受けたせいで、あちこちから細かい痛みが走る。

 けれど、そんなことはもうどうでも良かった。

 

「キリア!!! キリア! 目を覚ますんだ! キリア!!」


 何度も何度も彼女の名前を呼ぶ。

 そうしてキリアの状態を確認しようとケースから彼女を出し、必死に抱き寄せた──。


お読みいただきありがとうございます。

ついにオーガスを倒して、キリアのケースをぶち破りました。

次は、またあの人が来ます……。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


明日は2話更新予定です。(戦いを全部終わらせます)

日曜更新分は甘々回を予定しております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


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