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第七章 獣人の魔力 ②金色の光

キリア視点続きです。

少し重い展開がまだ続きますが、ついにモフモフ(?)殿下が登場です。

 再び視界が開けて、スクリーンに映し出されたのは、最初に居た何もない倉庫の部屋だった。

 そして、その画面にはニヤニヤと笑みを浮かべたあの男の姿があった。

 どうやら魔導士によって、あの男の元へ転移させられたらしい……。

 

 身体の感覚は先ほどまでと変わらない。

 スクリーンに映る景色が振り出しに戻っただけだった。


 だけど、どうも見え方がさっきまでと違うような……。

 なんだか視界までもがぼやけているように見える。

 目を凝らしてスクリーンをよーく見る。


 何かの結晶? ガラス? のようなもので囲われているらしい。

 そして、目線の位置から察するに、私の身体は椅子のようなものに座らされているようだ。


 白いドレスを着た状態で、座ったままケースに入っているって……

 まさに『お人形』ということね。


 そこでふと、自分の思考力が先ほどまでよりも改善していることに気づく。


 ──あれ? 考えられるようになってきてる?


 スクリーンを見ると、少し遠くのほうに小さく金色にぼやけて光っているものが映っている。

 その隣には、真逆のドス黒いものが……。

 何かはわからないけれど、金色の光が妙に気になる。


 この光を見ていると、なぜか少しずつ頭がクリアになっていくようなそんな気がする……。


 ──この光はいったい何?

  

 金色の光はどんどん私の方へと近づいてくる。

 

 手を伸ばしたい思いに駆られるけれど、身体は相変わらず動かない。

 手を、手を伸ばして、あの光に触れたい──。


 思いが通じたのか、次の瞬間その光はひと際大きく光を放った。

 そして、その光の影響か、ガラスのようなものはまだあるものの徐々に視界がクリアになっていく。


 目を凝らして金色の光を見つめていると、光の大元がだんだんと見え始めた。


 ……金色のオーラを全身に纏った人影?

 銀の髪に金色の瞳でこちらを凝視するイケメン……!


 ──グウェン様だ! 助けに来てくれたの!?


 その姿を認めて、なぜか妙に心が切なくなる。

 助けに来てくれたことへの安心感ともまた違う、心がざわつく感覚が……。



 グウェン様の隣にはドス黒いオーラと魔力を放ち続けているキース兄様の姿もあった。

 けれど二人は私に近づくにつれ、どんどん表情が険しくなっていく。


 すると、私を覆い隠すように、先ほどの男と数名の魔導士たちが私の前に群がりだした。

 右隣にはあの男が立ち、意気揚々とグウェン様たちに何かを言いながら、ガラスケースを指でなぞる。

 私は二人の様子を見ようと、スクリーンに向かってより目を凝らした。


 男はさも得意げに高笑いをしながら威勢よくグウェン様たちに何かしらの言葉をぶつけているらしく、話が進むにつれて二人の纏う魔力が増していく。


 私を盾にしているから、絶対に攻撃されないと思っているのだろうか。

 男の表情と身振り手振りだけで、調子に乗っていることが伺える。


 そこからさらに男はケースに向かって、何かの魔石を翳して言葉を放った。


 すると突然目の前にぱちぱちとした光の筋が一斉に走ったかと思うと、ケースの中に電流のようなものが流れだした。

 それが見えたと同時に私の全身を電流のようなものが駆け抜けていく。

 感覚がないはずの身体に、びりびりと痺れるような痛みだけが全身に響く。


 ──っああああああああ! 


 身体の痛覚は繋がっているの……?



 それを見たキース兄様は異常な目で、今にも射殺(いころ)してしまいそうなほどに男を見据えると、何かの呪文を叫んだ。

 兄様の足元に魔法陣が展開される。

 

 咄嗟にグウェン様が兄様を止めようと手を翳すが、その次の瞬間、男の周りでかまいたちのように細かい風の攻撃が巻き起こった。


 ところが、男へと放たれた攻撃を突然発生した黒紫の(もや)が吸い上げたかと思うと、いきなり私の全身を再び激痛が襲う。


 ──っ!


 どういうこと!? 靄が男への攻撃を吸い上げて、私に転送した……。



 しかも私の身体自体もダメージを受けたらしく、風魔法の攻撃によって白いウェディングドレスのような衣装はところどころ裂け、そこには赤い染みが滲んでいる。

 感覚が遮断されているはずの身体と同じ部分に、肌が紙で切れたような鋭い痛みが走った。


 キース兄様がそれに気づき、呆然と立ち尽くし、拳を強く握りしめている……。

 きっと私を傷つけてしまった自分が許せないのだろう。

 けれど、それと同時に、敵に攻撃ができないと知り、さらに苦渋の顔つきになる。


 その様子を受けて、横の男がさらに二人を煽っているのか、グウェン様の怒気が一気に増す。

 その手はわなわなと震え、今にもどこかを殴りそうな状態だ。


 一体どうすれば……。


 そう思っていると、突然グウェン様が何の躊躇いもなく、何かを叫びながら物凄い形相でこちらに向かってズンズン歩きだした。


 金色の光を帯びながら向かってくる彼は、どんどんその光の強さを増し、さらには銀髪が少し伸びたかと思うと、その隙間からモフモフな耳がピンと生え、髪と同じく銀色の毛並みの尻尾が服の隙間からちらつき始める。


 ──獣人化……!?


 金の瞳がさらに見開かれ、まさに獣の目つきで男をどんどん威圧していく。


 そして、ついには先ほどまでとは比べ物にならない神々しい光を放ち始めた……。


 ──グウェン様、とっても綺麗……。


 何でだろう? 彼の姿を見ていると、無性に心を揺さぶられる……。



 グウェン様のあまりの威圧と存在感に、男は一瞬怯んだものの、再びケースに魔石を近づけようとし始める。

 けれど、男の手は大きく震え、怯える口は先ほどの言葉を上手く紡げない。


 それを見たグウェン様はさらに猛スピードで、男に向かって距離を詰めた。


 焦った男は魔導士たちにしどろもどろに指示を出し、再びケース内に靄が充満し始める。

 一方でケースの向こうのグウェン様からは金色の光がそれを凌駕する勢いで迫ってくる。


 そして私は、迫りくる金色の光を目の前に、再び混沌の中へと堕ちていった──。

お読みいただきありがとうございました。

半モフですみません。もう少し先にガッツリもふもふありますので、もう少しお待ちください。

ちなみにこの回のキリアのイメージはガラスケース入りの西洋人形という感じです。

次のグウェン視点で、敵の正体とどんな会話をしていたかが明かされます。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマーク、評価、いいね、それに感想まで本当にありがとうございます。

大変励みになっております。これからも毎日更新頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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