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第六章 偽りの真実 ④合流(グウェン視点)

2本更新予定の2本目です。

よろしくお願いいたします。


あの人たちが付いてきちゃいました。

◆グウェン視点◆



「その作戦会議に、俺たちも参加させてもらえませんかね?」


 聞き覚えのある声にキースと共に振り返る。


 現れたのは、筆頭宮廷魔導士のジェイシス率いる魔導士の一団と、アーヴァイン公爵だった。


 ──どうやら私を起点にして転移魔法で追ってきたらしい。


「父上……なぜここに?」


 キースが私の横で物凄く嫌そうな顔をして尋ねる。

 ジェイシスはそう言われることがわかっていたのか、「それみたことか」と言わんばかりに公爵を見ている。


「キリアの危機に、私がただ王宮でじっとしていられる訳がないだろう? そんなこと、わかりきっているではないか」

「いやまあ、それはわかっていますが……父上にはお立場というものが……」


 キースが私をチラ見しながら気まずそうに言うと、公爵はケロッとした顔で言い放った。


「そんなもの、お前の横に居るお方に比べたら、大した立場では無いさ」

「まあ、確かにそうですが……」


 そんなやり取りをしながら二人揃ってじっとこちらを見ている。


 この似たもの親子め……。


 とはいえ、彼の気持ちは私にも痛いほどわかる。

 大切な存在を奪われて、大人しく城で待っているなどできるはずがない。

 

 ましてや、その大切な存在は、あのキリアなのだから。


「よし! 魔導士がそれだけ居るのは心強い。存分に活躍してもらおうか!」

「まあ、そうなるだろうと思って精鋭を連れてきましたよ。では殿下、ご指示を!」


 そう言うと、公爵以外が私の前で一斉に跪く。


 そして、各々が得意の属性の杖や魔導具を手に、顔を上げ、私に向かってやる気に満ちた目を向けてきた。


 過去の他国との戦争ですら、こんなに魔導士が前線に出陣したことはないのではないだろうか……

 ふと、そう思いながら彼らを眺めていると、ジェイシスと目が合った。


 その表情から、キリアの状況について何かしら知っているのではないかと思い、思わず声をかける。


「ジェイシス……キリアの状況について、把握しているか?」

「殿下も気づきましたか……」

 

 そう言うと、ジェイシスは立ち上がり、後ろの魔導士たちを控えさせた。


 ──やはり気づいていたのか。ということは、それほど強い魔法ということか。

 

 ジェイシスは強い魔法が使用されると感知できる能力を持っている。

 だが、感知と、その豊富な知識からその判別はできるものの、探知ができないというのが厄介だったが……今回は役に立ちそうだ。


「あれは何だ? 呪いの類だと思っているのだが、一体何だ?」

「ええ、あれは……恐らくは禁忌の従属魔法です」

「従属魔法だと!?」


 私の声にキースやアーヴァイン公が目を見開いてこちらを見る。


「敵はキリア嬢を操って、それを囮にして、殿下を手中に収めたいんでしょう」


 淡々とそう述べるジェイシスを見ながら、わかってはいたことではあるが、実際に話を聞いてハラワタが煮え繰り返る。

 その隣に立つアーヴァイン公も同じ思いのようで、険しい顔をしながら拳を強く握り、あまりの怒りのせいで魔力が漏れている。


「キリア嬢を操られてしまっている以上、下手に手出しができないのは厄介ですね……特にあの魔法は、術者や保護対象を攻撃すれば、全てのダメージがキリア嬢にいってしまう」


「何だと!? それでは攻撃できないではないか! ジェス、何か術を解く方法は無いのか?」


 ジェイシスの言葉にアーヴァイン公が食ってかかる。

 すると、頭を掻きながら困った顔をしたかと思うと、次の瞬間、真剣な顔で私を見てきた。


「無くはないが……殿下の覚醒度合い次第、ですかね」


「……私の覚醒度合い?」


「ええ。ここまでキリア嬢の内にあるご自身の魔力を追ってこられたと聞いてます」


「ああ、そうだ」


「つまり、番いの契約の一つである魔力染めは済んでいるということ……ただ、聞いた話の感じだと元々魔力枯渇を起こしていたせいで、まだ彼女は染まりきっていない状態にあるとは思いますが……」


 私の後ろめたい思いにも気づいているのだろう。

 見透かしたような顔をして楽しそうに言ってくるのが腹立たしい。


「何が言いたい?」


「獣人の魔力はあらゆる呪術や従属魔法を跳ね除ける性質があります。まあ、簡単に言うと、獣人の魔力が強過ぎて、人間の魔法や魔力では抑えておけないだけですが」


「なるほど。それで私はどうすれば良い?」

「キリア嬢を殿下の魔力で染め上げちゃってください」


「はっ!?」


 ジェイシスの言葉に、思わず三人の声が漏れる。


 染め上げるということは、キリアはもう番いから後戻りできなくなるということだ。

 正直私としては願っても無い状況ではあるが、キリアの気持ちを無視して強制的に完全に染め上げることには抵抗がある。


 けれど、今のままではキリアは従属魔法に縛られ、どう利用されてしまうかわからない。

 それがわかっているから、誰も次の言葉を切り出せずにいた。


「染め上げてしまえば、術は勝手に解けます。もしかしたら染める際に多少苦しむかもしれませんが、命に問題ないですから、躊躇わずに染め切っちゃってください」


 そう淡々と言うジェイシスを三人ともがジト目で睨む。


 けれど、全く気にしない様子で眼鏡のふちをクイっと上げて、こちらに不敵な笑みを寄越した。


「それじゃ、作戦は決まりですね。我々は殿下が突入しやすいよう、後方支援に徹します」

「……わかった」


 わかってはいないけれど、わかったと言うしかない。

 公爵とキースの視線が痛い……。


「あ、それと……」


 後方支援のために移動しようとしたジェイシスが忘れ物をしたかのように軽く振り返る。


「国境向こうから膨大な魔力と魔法を感知してるんで、最悪国境を破って乗り込んで来る算段なんでしょう。そちらの押さえ込みも併せてやっときますね」


「……では、そちらは任せた」


「はっ! 早速準備にかかります♪」


 気軽に言うべきことじゃないはずの言葉をとても軽く言い放ってから、ジェイシスは何か言いたげにこちらを睨んだままのアーヴァン公を無理やり引きずりながら去っていった。

 それに慌ててついていくかのように、魔導士たちは各々散り散りに消えていく。


 その様子に唖然としながらも、私とキースは飛空部隊へと向き直る。


「それでは、こちらも向かうとしよう!」

「はっ!」


 ──こうして私は、キリアが囚われている国境門付近の倉庫へと向かった。


お読みいただきありがとうございます。


父様たちの来ちゃった♪回でした。

ジェイシス、実はかなり破天荒な人です。

さて、次の章はいよいよ救出回。

あれからキリアがどうなってしまったのか……。

そして、ついに殿下のモフモフが……!?

(すみません。急遽この後に閑話を挟みました。この回のジェイシスたちの裏話です【追記】)

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブクマに、評価に、いいねといつも本当にありがとうございます!

大変励みになっております!!

これからも頑張って毎日更新続けてまいります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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