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第六章 偽りの真実 ③出陣(グウェン視点)

本日は2本更新予定です。まずは1本目。


前回の補足。

囚われたキリアは、アテルナ帝国の残党らしき誘拐犯によって、無理やり薬を飲まされ、何やら魔法をかけられ昏倒させられてしまいました。


そして、そうとは知らないグウェンたちが、ようやく王宮を出発したところから。

今回はグウェン視点です。

◆グウェン視点◆


 キリアの捜索に乗り出した私は、魔力の反応のあったアテルナ帝国との国境付近、アドラー辺境領へと向かっていた。


 迅速な行動が功を奏し、天候にも恵まれたおかげで、現地には夕刻までには到着できそうだ。



 結局あれから近衛騎士団とサージェスト騎士団、それにアーヴァイン騎士団が集結し、かなりの大所帯になってしまった。

 さすがに五百人を超える騎士をゾロゾロと引き連れて移動する訳にもいかない。


 そこで、できる限り速くキリアに辿り着くため、騎士団の垣根を越えた効率の良い部隊の再編成を行うことになった。


 まず、風魔法が使える者は飛空魔法を使い、召喚魔法が使える者は各々の飛空系騎獣に乗り、空から向かう。

 この飛空部隊を第一陣とし、次にそれ以外の騎獣乗りや騎馬隊、馬車で向かう救護部隊などの地上部隊を、第二陣とした。


 そして私は当然最速で到着できる第一陣、飛空部隊で総指揮を執ることとなった。



 ──王宮を出発してから半刻ほどが経過していた。


「殿下! そろそろアドラー辺境領です!」


 私と共に飛空魔法で向かっているキースが右後方から近づきつつ声を掛ける。

 上空で声が届きにくいせいか、いつもより少し高めの声が響く。


 アーヴァイン公と共に一度は部屋を離れたキースだったが、近衛騎士団の副団長であるため、結局こちらに招集されたのだ。


 一方で、アーヴァインの騎士団と共に私の指揮下に加わったカインはというと……

 風魔法が使えないため、地上から向かう騎馬隊の指揮をとることになった。


 だが、騎馬隊は今回、第二陣……後方支援扱いである。


 そのため、カインは第一陣に加わりたいとギリギリまでごねていたのだが、最終的にはキースによる鉄拳制裁が加えられ、無言のまま地上部隊へと担がれていった……。


 

 そんな弟に容赦の無いキースだが、先陣を切って高速で飛ぶ私に涼しい顔でついて来ている。

 なかなか優秀な風魔法の使い手のようだ。


「キース、辺境伯への連絡は?」

「既に済んでおります。国境門の封鎖も完了済みです。必要な際はアドラー辺境伯の騎士団も加わるとのことです」


「そうか。まあ、これ以上増兵する必要はないだろうが、協力は有り難い。そろそろ、詳細な居場所を探知する」


 そう言うとキースに目配せをして真下にある街を見渡す。

 その少し北には国境門が見えている。


 国境門と街の間を指さし、おもむろに口を開いた。


「国境門近くの街道で一度降りよう」

「承知しました」


 キースは後方の部隊へ戻ると、テキパキと指示を始める。

 彼のおかげでいつものように声を張り上げて指示したり、念話伝達しなくて良いのは大変助かる。


 やはりキリアの兄だけあって優秀なのだな。

 後方を気にすることなく、自らの思うがままに動けるというのはこんなに楽なのか……。


 そう思いながら、指さした先の街道に降り立つ。


 国境が封鎖されているからか、辺境伯からの通達が行き渡っているおかげか、街道には馬車はおろか、人の姿が全くない。


「さて、早速取り掛かるか」


 街道の真ん中に一人ポツンと立ち、魔力を展開させていく。

 先ほど王宮で行っていたものとは違い、薄い網を張るイメージで、魔力を広げていく。


 展開して数秒も経たないうちに、とても濃度の濃い自分の魔力に行き当たった。


 ──間違いない、これだ。


 けれど、その魔力はどこかおかしい……。

 ガラス玉か何かに封じられているような、直接感知することができない状態になっていた。


「一体これはどういうことだ……先ほどはこんなもの、感じられなかったぞ」


 考え込んでいると、キース率いる後方部隊がゾロゾロと降り立つ。

 全員が降り立ち、隊列を整えたところで、キースが私に報告と、目的地の確認にやってきた。


「殿下。場所は特定できましたか?」

「ああ。だが、少し厄介な事態になっているようだ……」


「厄介な事態? 詳細をお願いします」


 キースは眉間に皺を寄せ、探るような瞳でじっとこちらを見る。


「キリアの魔力が何かに封じられているようなんだ」

「封じられているというと……魔法が使えないように拘束されているということですか?」


 先ほど私もそれを一瞬考えはしたが、そもそも魔力枯渇を起こしたばかりのキリアに、抵抗できるほどの魔力はない。

 それは魔導士がいるなら気づくはずだ。

 わざわざ魔力封じなどという魔力を多く消費する高位魔法で拘束する意味がない。


 拘束されているというよりも……むしろ、何か器に入れられているような感じだ。


「いや、そんな単純なものではないだろう……」

「どういうことです?」


「これはたぶん、呪いの類だ。封印系か拘束系の呪いがかかっている」

「呪い!? なぜキリアがそんな目に!?」


 キースはそう言いながら恨めしそうに私を睨み上げる。


 まあ確かに、さぞかし私が憎いのだろう……

 私の番いでなければ、キリアがこんな形で狙われることなどなかったのだから。


「すまない……私がキリアを王宮に呼び出したせいでこんなことに。予想はできたはずなのに、なぜ私が自ら迎えに行かなかったのか……」


「殿下……。そんな、頭をお上げください。私の方こそ、母からどんな叱責を受けようとも、私とカインが一緒に向かうべきだったのです……殿下のせいではありません」


 互いに頭を下げ合い、先に私が頭を上げると、少し時間を置いて、ブツブツと何か呟きやならキースが頭を上げた。


「……キリアが可愛いのは百も承知ですし、今までも何度も誘拐されそうになってきました……あーゆー奴らは地の底に屠って、滅ぼしてしまわねば……。生まれてきたことを後悔させてやりましょう……」


 地を這うような禍々しい声でそう言うと、ニヤリと笑った。


「奇遇だな……私も同じ気持ちだ……」


 そして二人で不敵な笑みを浮かべて笑い合う。


 後ろの部下たちが私たちの殺気に震えているようだが、そんなもの知ったことではない!

 私の宝を奪ったのだから、それくらい覚悟してもらわねば。


 それに今回はアテルナ帝国が絡んでいるということは、母上の親族辺りが犯人な可能性が高い。

 きっと私を国王、いや、皇帝にでも担ぎ上げようとしているのだろう。

 そんな気を二度と起こせないほどに叩き潰しておかねば……。


「では、場所も特定できたし、ここから先のキリア救出作戦の詳細を話すとしよう……」


 そう言って、キースと飛空部隊と作戦会議を始めようとした時だった──。


お読みいただきありがとうございます。

ついにグウェンがキリアの詳細な居場所を突き止めました。

ここから一気に向かうのかと思いきや……。

まさかの方々がやってきます。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


そして、気付けば連載開始10日足らずで、ブックマークが100件を超えました!

これもひとえに読んでくださる皆様のおかげです!

ブックマークに、評価に、いいねといつも本当にありがとうございます!!

これからも更新頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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