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第四章 王弟殿下の来訪 ④母様の爆弾

今回は少し短めです。

 ──皆が紅茶を飲んで、少し落ち着いたところで、母様からいきなりとんでもない爆弾が投下された。


「殿下、詳しいお話をされるのに、私どもが居るのは無粋というものでしょう。お二人でキリアの部屋でお話されてはいかがでしょうか?」


「!? 母様一体何を言い出すのです!?」

 

 驚きのあまり素っ頓狂な声を上げてしまう。


 成人前の娘の部屋に、男性を通すだけでなく、二人きりで話をしろだなんて!

 あまりの衝撃に頭がクラクラする。


 父様は口を開けたまま、言葉を失っている。

 兄様たちは何か言おうとしたのだろうけれど、母様の笑顔の圧に負け、今にも叫ぼうとする口を一生懸命手で押さえている。


 一方、提案されたサージェスト様は、パアッと目を輝かせ、私と母様の顔を交互に見ている。

 まるでお散歩の許可が出た子犬のようだ。


「夫人! 良いのですか!? それにキリア嬢も。まだ私についてよく知らない状態で、自身の部屋に招くなど、キリア嬢は不安なのでは?」

「ですが、こんな大勢の前で、込み入った話なんて……ましてや本心なんて話せないでしょうし。ねえ、キリア。そうなのではなくて? まだ二人きりの方がお互いきちんと向き合ってお話ができると思いませんか?」


 母様の圧が強い……。


「……は、はい」


「それに……獣人は番いをとても大切に、それはもう自分自身以上に大事にすると聞きます。キリアの嫌がることなど、決してなさらないでしょうし。だから、キリア、きちんと二人でお話しして来なさい」

「母様……」


 一瞬、父様と兄様たちが凄い形相でこちらを見たけれど、正直私もジェイシス様から聞いた話を彼にしたかったので、二人だけで話ができるのは有り難い。


 でもでも、ほぼ初対面の、それも異性を部屋に、しかも二人きりだなんて……

 有り得ない! 有り得ないのよ〜〜!


 私の心の叫びは露ほども届かず、笑顔を貼り付けた母様が、サージェスト様をグイグイ促す。

 その動きに、控えていた家令がすかさず指示を出す。

 きっと今頃、私の部屋では準備が始まっていることだろう。


 その様子を見て諦めたのか、先ほどの凄い形相のまま固まっていた父様が、しぶしぶではあるもののサージェスト様に声をかけた。

 ここで拒めば、王弟は不埒な輩だと認定したことになってしまうしね……。


「……殿下。それでは、ご案内いたします。キリア、殿下をお部屋にご案内して差し上げなさい」

「はい、父様。承知いたしました」


 私は応接室の入り口へと向かうため、ソファから立ち上がった。

 すると向かいのサージェスト様もなぜか立ち上がり、私の座るソファの脇へスタスタと早足で移動してくる。


 ええ!? 何でサージェスト様がこちらへ来るの?

 案内するのは私なのだから、殿下は私が移動してから立ち上がるのが普通では?


「キリア嬢、どうぞお手を」


 どうやらサージェスト様はエスコートしてくださるつもりのようだ。

 どうしたら良いのか、視線を彷徨わせる私に、母様が小声で「失礼のないように」と告げると、そっと私の背中を押した。


「よろしくお願いいたします」


 家族が見守る中、差し出された手に私がそっと手を添えると、とても愛しげにその手を見つめるサージェント様。

 隣に並ぶと、一瞬天を仰いで、なんだか幸せを噛み締めるように少し震えていた。


 ああもう、恥ずかしい……!

 しかも、そんな幸せそうな顔しないで!


 内心ドキドキとアワアワが止まらない私は、顔が熱い。


 ああもう、この後二人きりだなんて……

 ジェイシス様に聞いた話ができるのは嬉しいけど、私の心臓持つのかしら?


 ──こうして私はサージェスト様にエスコートされながら、応接室をあとにした。


お読みいただきありがとうございます。


母様のトンデモ提案です。

普通ならあり得ない話なんですが、相手は王弟殿下で、母様はとっとと婚約させたい上に兄たちを諦めさせたいので、グイグイ行きます!笑


次はキリアのお部屋で二人きり回になります。

次回もお楽しみにいただけますと幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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