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メディ公爵閣下の登場

「公爵閣下のお屋敷、見えたわね。……そうだ。チエザ様起きてくださいつきましたよー。綺麗な庭ですよー」


 ……む? 我が眠りを妨げるものは誰、あ、到着ね。

 お? 窓際へ移してくれるのか。うむ苦しゅうないぞ。と、もう立てるの知ってるだろうに支えなくても……いや、揺れる馬車の中だし赤子を立たせるのは不安か。

 よしよし苦しゅうない苦しゅうな……。うわぁ綺麗。

 なにこの庭ベルサイユなの? 流石におクソおフランス人の見栄ほど広くはないが……。う、美しい……。


 このあちこちの領地から集めてのパーティーに、呼んでくれた公爵へ感謝だな。

 まったく母ちゃんてば私一人だけお留守番させようとするのだから。

 偉大なる公爵閣下が招待状に私の名前も書いててくれなければ、この庭も見られず。この国の貴族様たちがどんな人たちか社会勉強する機会も失われた。

 酷い話だプリプリしちゃう。赤子を置いていくのが普通なら仕方ないが、変なのを表に出したくなかったからだもんね。……より仕方ない理由かもしれない。


 ま、お陰で一人だけ使用人の馬車に乗せていただき、思ったより快適な旅でした。

 無駄に緊張した家族の会話へ聞き耳を立てるより、使用人の娘さんたちのとりとめのない話を聞いてた方がよろしい。


 ふっ。思えばこの娘たちも哀れよ。愛らしい外見に騙されおじさんのウンコ! がついたオムツを洗い、今も気を使って庭を見せてくれてるのだから。

 ……私が彼女たちに出来るのは笑顔を振りまくくらいさ。にぱーっとね。


「あ―――。かわい……。き、綺麗ですねー。チエザ様もうこの庭がお好きになるなんて賢いですねー」


 そういうお嬢ちゃんも嬉しそうね。なら良かったです。表情筋動かした甲斐がありました。

 さて。公爵閣下主催のパーチー。うちのご両親は私の扱いどーすんだろ。


******


 大量の着飾ったお貴族様。服飾文化は……どう表現したものか。男はズボンで女はスカート。産まれてより超寒い日が無かったし、一年中温暖でハッピーな土地柄なのだろう。お陰で男女共にかなり薄着。

 デブは服どうしてるんだろこの国。見た限りデブというデブは居ないけども。そもそも剣と槍の時代にデブは中々居ないか? 


 それはそれとして。何か我が家の服周りから浮いてない? 動物の皮がちと多めというか。少し蛮族な気配というか。

 もしかして我が家、文化圏的に主流から外れたお家なんでしょうかね。面倒ごとの気配がする……けど気にしても仕方ないか。


 してママ上よ。この私の……全知全能を尽くして地味にした感じの赤子服。もしかして新しく作ったんですか? 我伸びまくりのジャスト一歳ぞ? 勿体ない。

 そんな気を使わなくても隠れるつもりですよ。それに赤子と小さい子はそれなりに居るじゃん埋没するって。


 で我が一家は……これ挨拶待ちか?

 幾つかある人の集団。その中でもここが一番重要な所かな。服の平均値が一番高そう。我が家はここでは一番下の方みたいだけど。


 しかし母親のスカートの中に入らんばかりに不安そうな長男と、赤子の私を会場に置いて立ちっぱなし。他の方々もだが、子供なんて子供部屋に集めて管理しないと面倒の塊で大変

「なんと! メディ閣下はいまだ子が居らぬのですか!?」


 なんと! 無神経な! そしてでっけぇ声。声元は……順番待ちしてる中心かよ。

 脳まで筋肉そうなおじさんと、大変立派な服を着た美丈夫の兄さん。メディ閣下と言ってたし、やはりご当主である公爵……え。

 待て。待て待て待て。今、子が居らぬと言った。そして確か……以前お手伝いさんから、私の礎である本を公爵閣下の願掛けと聞いたような。つまり……事の深刻さは。


 うわぁどういうこと。あの脳筋、喧嘩を売りに来た敵対貴族の方?

 周りの表情は……違うな。敵へじゃない。迷惑な身内への反応だ。だから人の波が割れたのか。関わり合いになりたくないと。

 やっべぇおっさんだ素でアレを大声なのか。脳に障害ありです。


「閣下、自分は不安でなりませんぞ。お美しい公爵夫人を大事に思われるのは当然でありますが、お家の一大事とあれば、

 なんだ。自分は今大切な話を……こ、こら。分かった分かったゆえ。

 失礼をお許しください閣下。問題が起こったようで」


 あれは筋肉の息子か? 全身真っ青で引っ張ってるが……そらそうだろう。

 何にしても若造なのに立派な公爵閣下。最後まで苦笑程度しか見せなかった。

 手招きされて近づいてる貴族がビビってるのに。


 しかし、そうか……子供か……。……心から可哀想。大貴族で子が居ないって。素直に自殺したくなる話だ。家臣も子を産むのを自粛しかねん悲惨さ。


 その欲しくて溜まらない見た目の身としては……どういう態度とるべきか。

 まずは観察だな。お、赤ちゃんづれが挨拶するじゃん。……わぁ。抱くのか。どう見ても赤子が好きなように見える。……更に悲惨に感じてしまうな。


 あ、そろそろ我が家の順番ね。うーむ。態度の問題は悩ましいが……。

 多分これ飯と宿泊費用あっちもちでしょ? その分の義理があるよなぁ。加えて……と、手を引っ張らなくても行きますよボンクラ父上。


「公爵閣下。素晴らしい集いにお呼びいただき感謝いたします。夫人にもご挨拶を。相変わらず月も嫉妬する美しさですわね」


 ほぉ。母ちゃんそういうの言えるんだ。確かに飛び切りの美人。

 お肌は光り輝き。服もコルセットみたいなの付けてないだろうにすっごい体型。

 まだニ十歳くらい? しかしこの娘さん筋肉さんが居た時は居なかったような。

 あー、あのオッサンはそういう話をしそうだ。と、どっかの有能な人が席を外すよう手配したんですかね。家臣も気を遣うなぁ。


 ほぅほぅ。挨拶は私でも予想できる季節の話感ある。だがこういうのが大事か。税収に直結するもん、お? こちらをご覧に。―――うん。欲しくて溜まらないであろう生物を見てるのに、変な感情は見えない。……立派な青年だ。


「こちらが次男のチエザ君。で良いのかなローヴェレ伯。抱きあげる名誉はいただけるかね?」


「あ……はい。どうぞ、お願いいたします」


 おいおい。母ちゃん顔が不景気になりかけてますよ。公爵兄さんが訝し気にしてるじゃないですか。

 お。両脇で持ち上げ、即お尻を持つ。流石に慣れておるのぅ若者よ。

 むむむ。態々顔の前まで持ち上げ……私を見定めようというのか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 連載になるかな??と思って期待してました。楽しみです!!
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