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チエザ。大体エリマキトカゲになる

「気を付けなさい夫人。神の祝福を得ているらしい者の敵となっていますよ。

 どいつもこいつも。神を祝福『だけ』してくれる下僕と考えている。大した傲慢さだ。

 よろしい。私から直接恨まれぬよう家臣を呼び痛めつけるがいい。私も苦痛から逃れたい一心で何の根拠も無い出たらめを喋るでしょう。

 しかしその時、私が根本の原因である夫人と、メディ家を忘れる訳は無いと知っておりましょうね。

 夫人が『程度』とおっしゃった特別が、全身全霊で、魂の全てを尽くして『恨む』と。

 夫人の子が決して健康に産まれぬよう。例え私より強い何者かの祝福で産まれたとしても暗愚になり。家臣、王、配偶者、親族。全てから疎まれ侮られ悲嘆の人生を送るよう。

 そして夫人の血筋全ての者。メディ家により幸を得ている全ての者。ことごとく。

 病におかされ、裏切られ。必ずや奴隷にさえ嫉妬する生涯を。悲嘆と臓腑が腐る激痛の中で死ぬ。我が呪いを覚悟してなさりなさい!」

  

 うんだその面ぁ。靑から土気色になりやがって。この程度の覚悟もせず拷問にかけると言ったのか軟弱者が!


「ぁ……だ、旦那様助けて! これは、こんな。助けてロレンツォ!!」


 こっちが助けて欲しいっての、おぅおぅ。夫人を背中にかばいカッコイイ騎士な感じだねぇ公爵。剣に手をかけやがって。

 抜かれたらどうする? ……どうするも家康もゴミでしょ。逃げしかない。背後の植木の闇に身を隠し庭を出られれば街だ。

 後は何処かの家に赤子として転がり込む。金持ちが良い……いや、公爵家が人を使って探すかも。移動しそうな馬車に転がり込んで出来るだけ離れるべき。うーわ。奇跡的幸運が必須じゃないの。

 あー、くそ。本の恩など忘れた方が誰にとっても幸せだったな馬鹿らしい。


「お怒りごもっともなれどお許しを。奥は無礼を言ったが、決して本心ではない。ただ子の幸福を願っているだけなのだ」


 はぁああ!? だから何だ。お前の子と、私の不幸。何の関係がある。子を産めと言われ過ぎて、お前らの子の為なら万物が都合を合わせてくれると脳が腐ったか?


「夫人より遥かに無礼をなされてるのが閣下だと、私が分かって無いとでも?

 奥様が私を見るのを止めず。拷問にかけると言ったのも止めず。

 それは全て閣下が同じ意思を持ち、私の何を踏みつぶしてでも更なる利益を得ようとお考えだからでしょうが」


「待ってくれ、(わたくし)も奥も拷問にかけようなどと」「『誤解』ですか。それで事実とどの程度の差があるのです。くだらない言葉でお互いの時間を奪わない賢さをお持ちだとも私は期待しておりました。

 やれやれです。子が欲しいと泣き、得たら今度は私『程度』には健康で賢くなる秘法を寄越せですか。

 次は世に並ぶ者の無い戦士となるを望み、そいつが戦場で無茶をして死んだら生き返らせろ。と、言うのでしょう?

 やがては何か失敗する毎に時を巻き戻せと、更には親しい人全てに同じ祝福を与え、敵を呪えと望む。分かりきってるんですよ。そして応えられなければ拷問して殺すとね。

 そんなのは神にしか不可能だ。私が神に見えるのですか。

 神の力の万分の一でもあれば、とっくに逃げていることくらい分かりませんか」


 …………。反論が遅い。二人して引き攣った顔しやがって怯えてんのか? 赤子相手に剣が欲しくなるくらいだもんな。言うまでも無く錯乱してるか。

 そして怯えを消す為に殺そうって? ったく。付き合いきれません。

 剣から手も離したし。薄い希望に頼って帰りましょ。


「一応、私の希望を言わせていただきますと。今夜の全ては無かったことにして欲しいですね。

 そうすれば私も恨みに無駄な時間と力を使わず済む。今後、私はお二人の目に留まるほど世の中へ出ないつもりでもありますので、憂慮無くご放念ください。

 そして。もし私に危害を加えようとご決断なされたなら」


 お願いですから忘れてください。しかし。不幸な結果となった時には。


「確かに。私も自分のこの異常性、神の祝福でもなければ不可能と思います。

 ゆえにお二人により殺された後、我が魂が神に挨拶できるかもしれません。

 その時は必ず。全てを捨てて。あなた方と血に繋がる全ての者を呪い。災厄を願います。それはご承知いただけますよね?

 では失礼します。もう眠くてたまりませんので」


 おらぁ。てめーらに神への如く身を投げ出してやる。

 はー。クソな時間だった帰ろ帰ろ。イライラして不安なのに寝れそうな眠さだ。

 殺すのなら寝てる間にしてくださいよ。


「貴君よ! ……最後に教えてくれ。あの夜、(わたくし)へ話しかけたこと、後悔しておられるか」


 あーん? なんというヌチャった質問だ。公爵で有能みたいな噂だったから、もう少しズバッとした論理さを持ってるかと。

 いや、考えがあるのかも。無視はすべきじゃなかろう。しかしこれで最後にする。


「失敗だったとして。悔やんでも良い変化はなくイライラと体の調子が悪くなるだけでしょう。なので意識としては後悔という物をしないよう気を付けてます。

 何せか弱い赤子の体ですから」


 ……背後に近寄って来る足音無し。ひとまずはお許しいただけたようだ。このまま全部忘れてくれるよう祈って寝ますか。

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