起きたら赤ちゃん
日間ジャンル五位なら連載頑張りますと書いたら最高六位でした。
一応程度で書いていた分を掲載します。毎日更新で短編との話の分岐は十日後くらいになります。
続きを読みたいと感じた方はブクマと☆☆☆☆☆評価をお願いします。
打ち切りの場合は最新更新の後書きで書きます。
変な夢を見たな頭をグイグイ押されて超痛い夢だった。何時以来かぶりに泣きそうなくらい。どういう要因で見たんだろう。
そこまで仕事でストレス食らってたか? ……仕事だから食らってるかもしれん。温泉と家だけを往復する毎日が送りてぇ。
ま、起きよう……おう? 何かやたら動き難、あるぇ? 何この手。
変に肌が赤くて爪の形とか色々奇妙。えっと。これ赤子の手では? しかも生まれて直ぐの。
嘘でしょ思い通りに動くのですけど、あれ? なぜこうもはっきり見える?
この手が私の手ならば私が新生児という事になり視力はほぼ無く何も見えないとMHKで……いや虚偽情報だったの、ぬぉっ!?
「チエザ、ゲスチャン」
なんだ普通のおばさん……でか過ぎない?
む、私を持ち上げる気かってそんな軽い動作で……持ち上がるのね。これはやはり、マジで私赤子になったのか。
輪廻転生? 仏教は正しかった? いやいやいやいや。ゴーダマシッダルッタ王子はゼッテーーーー輪廻転生なんて考え欠片も、むぉお!?
ぐ……グリーン―――ヘア、だ。
グリーン・ヘアのお嬢さんがベッドに入ってる。欧米で特別痛い自意識を持った人が染めると聞く、緑色の髪のお嬢さんが! TVで見た限り虹色髪と同じくらい発言が痛々しい!
うわー止めとこうよそーいうの。仕事で必須なら仕方ないけど、社会的普通を越えた自己顕示欲は結局人生の害に……む?
でかいおばさんゆっくりだが私をグリーン・ヘアレディに渡そうとしてない?
あ。グリーンヘアに気を取られていたけどグリレディの周りに何人も女性が。そして地味めの茶髪ニイちゃんが彼女の隣に。
……良く見たらグリレディの顔にははっきりと疲れが出ている。しかし私を凄く熱い目で。親しみというか大切そうというかな目で見てる。
―――つまり、これは―――。
そうか。あなたが私の母になった人か。
そうか……そうかぁ。うわぁ。グリーンヘアが母親。……うゎぁ。
美人ではある。アジア系なのか何系なのか良く分からないお顔の。しかし……野菜髪。はー親は選べんのに……。
―――違う。私は間違っている。
親ガチャなんぞ口に出すだけで愚か者の証明。上司ガチャRと感じた時には口へ出すより先に転職の計画を立てる程度は最低限の知能。
この頭の上に野菜乗っけてる娘がどんな脳みそ花火だろうと、考えるべきは自分がそれにどう対応するかのみである。
それに……中々抱くのがお上手なのだろう。何処も痛くない。
こちらを見る表情も好意に溢れている。うむ。少しは期待して良いのかもしれん。
では次に私が今すべきは……ハッ!?
な、なんという無能だ私は。頭が野菜だとか人に言う余裕が何処にある。何をすべきかなんて分かりきってるでは無いか。そう、
母上! 寄越しやがりください! あなたの抗体を!! 母乳から!!!
ていっ! この薄い寝間着をめくって母乳! くれ早く! 抗体! 白血球を! 学習させるスーパー水分! ていっ! ちょうだい! 病死は苦しくて嫌! てていっ!
「ファイ? ウォーレンマターミウク?」
何言ってるか分かんないです! でもほら赤ちゃんに母乳上げるの常識でしょ!?
もしやアホ徳川みたいに、母親が子へ乳を上げない決まり事があったりしないよね!?
く、くううう! 力が無い。というか満足に手を動かせない! ち、チクショウ。目の前に人権を得るための蛇口があるのに……っ!
お。お母さま、そう。手を服へやって……そうです。ああ、いただけるんですね。有難うございます。
おお態々体を持ち上げてくださる。貴方の子は感謝の極みです。
では。いただきますの感謝を忘れず。うんぐっうんぐっ。
……美味しく無い。―――あ。いやいやいや。贅沢言ってはならん。筋トレ後のヨーグルトぷらす糖分に文句言うようなのは士道不覚悟。
有難うお母さま。この調子でいっぱいお願いします。出来れば日頃の食生活にも気を使っていただきたい。と、申し上げたいけども。あなたの言葉、何語なの。
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赤子となってから……一年近く経ったか。基本的には順調なのだろうな。
仕事で疲れて寝たら赤子だった。という根本事象が全力で不調と言えるにしても、生きてる以上は生きるのみ。それが生物のありようというものよ。
ふっ。我ながら悟りが深いさー。
まぁ別の国に住んでみたいと思ってはいたし。魂ごと別の所へ行ってしまったのも、四捨五入してラッキーと考えよう。
とにかく前向きに行動するのが賢さの基礎である。だからこそ産まれてからこれまでまずは筋肉と、出来る限り運動し。頂ける母乳はゴッキュゴッキュと飲み。
あとは必死に耳をそばたてて人々の会話を聞き取る毎日。
お陰でもう立てるし会話も出来る。が、一歳前で話などしては『自分は異常です!』と叫ぶ脳腐れになってしまう。
それにこの世界の赤子の成長速度が私の常識と違うかも。能力のお披露目は周りの会話を聞いて慎重にいこう。
……そーなんだよなー。この世界なんだよなー。ここ地球じゃねーんだよなー。
母の野菜髪がまさかの地毛とはね。そして改めて周囲の人間を観察すれば赤だの青だの色素なのか、鳥と同じ構造上の色なのかアリエナイ色の毛髪だらけ。言語も全く聞いた覚えがないし。
ここまで違えば魔法があるのでは。とまで思えたが流石にそれは無く。むしろ時間の感覚といった基礎法則が地球と酷く似通っているのこそ不思議だ。
この星は地球と同じ宇宙にある? そして環境が一緒でないと生命は産まれないのだろうか?
好奇心を刺激されるね。面白い動植物を探して旅をしてみたくなる。
ただ……父上であった地味茶髪の兄さんと体調を取り戻した母上が、定期的に剣と槍で真面目に打ち合いをしておられたのには困った。
そうですか。そういうのが必要な文明と時代ですか。遠くから弓撃つだけじゃ駄目ですかね?
少しずつ知られない範囲で訓練を始めた方が良さそうだ。
そして母上の野菜頭で絶望した産まれのお里も……実は大当たり、かも。
お手伝いさんが結構な数居て両親をローヴェレうんたら。と、呼ぶ。家名に爵位なのだろう。
どうも母が当主で父ちゃんは入り婿な気配がある。アワヒエ三杯あれば……と言うのにな。哀れな父ちゃん。
おそらくは貴族。どの程度の貴族かは分からないが、十人以上お手伝いさんを抱えてるだけで大したもの。
お陰でお世話も丁寧にして貰ってるし、部屋には年齢が上がった時ようらしきオモチャと幼児向けと思われる本まで。上級国、おっと。上流階級で大当たりと喜びたいんだが―――問題が二つ。




