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2話 脅威

 5匹のフラワースライムを倒したあと、私たちは奥深くまで進み、道中で遭遇したフラワースライムも順調に倒し、袋の中の花は11束になっていた。

 あと9匹、9束だ。

 途中で遭遇したフラワースライムも何とか先ほどと同じような戦い方で――マティアスは剣を振り投げ、複数のスライムをまず一気に倒す。

 私は後方支援として――マティアスが危なくなったら、私が前に出て盾で防御する。

 私は、基本敵には防御に徹し、マティアスが攻撃に回る、という感じだ。


 「フラワースライム討伐、慣れれば意外と楽勝ですね!この調子でどんどん先に進みましょう!」


 という彼は、何度も戦闘を繰り返しているのに疲れている様子は無い。

 だが、私は直接戦っているわけでもないのに、体はヘトヘトだ。


 「そうですね……ですが、少し休んでもいいですか?」


 体力的な疲れというより、精神的な疲れが溜まっているようだ。

 戦闘時は、常に気を張っていて、集中状態。

 自分の身を守るのはもちろん、マティアスの動きも同時に注意して観察し続けなければならない。

 その繰り返しが、精神的な疲れに繋がるのだ。

 そのことを少し察したのか、そうですね、とマティアスは承諾してくれた。

 私たちは茂みのところで休むことにした。

 しばらくすると、マティアスは畏まった態度でおもむろに口を開いた。


 「駆け出しの冒険者の僕からこういうこと聞いて良いのか分かりませんが……ヴェスタリカさんはなぜ、あの支援ギルド、【アシスタンゼ】に入ったんですか?」


 彼の口から出たのは、なぜあのギルドへ所属したのか、という所属したきっかけについてだった。

 その問いに少し悩み、逆に私は口を閉じてしまう。

 私は正直、自分のことはあまり話したくはなかった。

 理由は少し複雑なような気がして――


 「あ、もしかして話しづらいことでしたか?すみません、あなたにとって少し悪いこと聞いてしまいましたね……」


 「いえ、そういう訳ではないです……が――」


 しどろもどろの言葉しか出てこなかった。

 私のせいで変な空気になってしまった。

 そんな私の雰囲気を察して、そのように判断したのだろう、マティアスはそれ以降、何も聞かなかった。

 だが、この質問はこれから多くの冒険者と関わる中で、いつかまた、聞かれる質問だろう。

 その時に、また黙ってしまうのか。

 そもそも自分の胸の内を隠して話さない人に、悩んだり、困っていること、相談したいことを打ち明ける冒険者はいないだろう。

 せめて、背中を預けれるようになり、戦闘面の息が合うようになってきたマティアスになら話してもいいのではないか?

 そう思い、私は言葉を選ぶように、恐る恐る口を開いた。


 「実は私――弟がいるんです。私より3つ年下で…………」


 私が意を決して、話し始めたからか、真剣な顔で聞いてくれるマティアス。

 だが――マティアスは何かに気づいたかのように目を大きく見開き、探るように遠くを見つめた。

 突然、後ろの方でガサガサと音がした。


 ――しまった、考えることに夢中になりすぎて警戒を怠っていた!


 意識を全方位に向ける。

 だが、極度の緊張状態になってしまっていて、その影響で感覚も狂ってしまっているようだ。

 気配を追えない――

 いや、追う必要が無かった。

 感覚が狂っているのではなく、大きすぎる気配を無意識に体が感じ取ったことで、極度の緊張状態になってしまったのだ。

 体全体を覆い尽くすような恐ろしい、今まで感じたことがない感覚に私は、動けなくなっていた。


 「ヴェスタリカさん、危ない――あなたの真後ろです!」


 マティアスは、大きな気配から守るため、私を真横に突き飛ばした。

 緑が生い茂る木々から、たくさんの色鮮やかな花が、目線斜め上に見える。


 ――あれを倒せば、依頼数達成、しかも余剰分もある!


 一瞬、変な考えが頭をよぎったが、壊れかけた頭を両頬を叩いて現実に引き戻す。

 そして深く、大きな深呼吸を何度か繰り返し、心を落ち着かせ、冷静になる。

 今まで通りのサイズなら複数でも良かったが、そんなに生易しいものではない。

 いままでのサイズのスライムが可愛く見えるくらい、目の前の魔物は大きい。


 (数倍?いや、数十倍はありそうだ。)


 「マティアスさん、ここは一旦引きましょう。無理に戦う必要はありません!」


 このまま戦ったら全滅する。

 悪い結果しか、予想できない。


 「そうですね、引きましょう。」


 もと来た道へ引き返すため、体の向きを変える。

 完全に背を向けるのは危険なので、後ろも気にしながら――


 私は2度見した。

 視界の8割を占める巨大な図体が消えていた。

 違う――


 「マティアスさん、止まって!」


 私はマティアスの腕は力いっぱい掴む。

 先ほどまで何もなかった地面に、少しずつ影ができ、そして――


 ドオォォォン


 勢いよく落ちてきた、それは私たちの唯一の脱出経路を塞いだのだった。

 土煙をあげ、顕にしたのは、キング・フラワースライム――

――いや、よく見るとその上に何かがくっついている。

 フラワースライムの生息エリアの事前調査では確認されていなかった、そもそもこの地域にはいるはずのない、魔物。

 キングフラワー・スライムの後ろに寄生している、ローズフラワネスだった。



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