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DEATH▶AGREEMENT ですぷれいあぐりーめんと

 契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約契約。



 死神を名乗る何かは、一定速度で音を置くメトロノームのように一単語を連呼し続ける。呪いやら刷り込みの(たぐい)の現象が起こりそうな圧を持って、秀でた点のあるわけでもない少女を口説く。




『メイシェル、そう名前を呼んでくれるだけで契約は組まれる』




 危険人物として晒される事態となった少女から離れ、モノクロカラーの車の中で応急処置を受ける男が一人。



 下手に触り、細胞が並んだ断面を崩し、馬鹿の書いた論文のように陀羅駄等(だらだら)と、「あいつはやばい」だの「あれは危険だ」だの「奴に近づいてはいけない」だの好き勝手言い荒れる。初めて直視したであろう幼子に向け、この人間があまり偉そうに吐くではないか。




『まさかまさか迷惑をかけられないだとかそれとも言っても意味はないんだとかそんなことを思ってたりするのかなもしそうとすれば「自惚れ」るな子雌女(こむすめ)これは君が為に()されるのではなくこのカルカミメイシェルの為のみであり君の事情の介入如きで左右されることではないし拒否権の用意もない』




 数刻前まで道路を走っていたスクラップから、火花が散る音を捉える。誰もが鉄塊に背を向け、我が先にと脚を前に回す。この場にいる、少女を除いた全が二次災害を察し、脳が冷静に思考するよりも早く、筋肉を奮わせ、その一瞬だけ心臓は気狂いする程にゆったりと、深い鼓動を二撃三撃、日常よりも低速に刻まれた。



 爆発。それが察せられた結果だ。何かの線や窓の硝子が嵐のように()い、衝撃は地震を誘発させる勢いがあった。



 惨状を背に、黒い(もや)が立つ。それを覆う雰囲気は、有らぬ身で()愉快に踊り、存在せぬ口で、不気味に眩暗(くらくら)と笑っている。だがそれを観測する者はいない。在する世界が違う、分割された別次元に棲む“死神”であるから。




『一体どれほど待ったことか……ようやく…………今、初めて第一歩を天地に打った!』




 一番近くにいた警察の首が飛ぶ。見えない何かが血に塗れ、鎌の刃らしい形を(かたど)る。大気を揺らす叫びを起こす時間すら与えず、ほんの一瞬で、権力の(いぬ)の喉骨が横一線に両断されていく。恐らく全員が即死だ。たった一人回避行動をするのもいたが、漏洩なく生首となった。




『ふぅー。(じつ)の悪い(にえ)だったが、少しの足しにはなったろう。さ、行こうか。目撃者が出るのは面倒だ……ん、必要なことを忘れていた』




 屍を量産した何かとは違うまた別の何かが、少女の舌中心・右首筋・胸中央・左太腿内側の四箇所を捉える。



 その部位の内側から発生するのは、液体が肉を焼き巡るような感覚。生者の特権である痛みに頓着のない少女は目立った反応がないが、実際は相当の苦痛を伴う。単なる肉体的損傷だけでなく、前記の感覚に対し拒絶反応を示す。それも人間基準のではなく、死神と呼ばれる人智以上の存在に干渉する対価と見ても割高なもの。それを知ってしまえば、旧き拷問すら所詮は人為的な痛みだ、と割り切れる異常性を手に入れられる。



 異物の通った痕として、魔法世界的な刻印が遺る。模様の違う四種の刻印だ。上から、二十四芒星型・片翼の悪魔を象った型・心臓を連想させる型・(まる)く曲がった悪魔の尻尾型。



 舌に印された二十四芒星の中心部の余白に、数字らしき文様が浮かび上がった。それは『366』に類似している。




『ああ、その数字は残り日を示している。一年後、契期を終えて(みじ)めに死ぬ』




 少女は死神を目視する。闇と見(まが)う赫黒に変色した瞳は、本人の意志に沿わず、血味の殺気が溢れている。だが、その視界に死神は宿らない。契約を経てなお、少女が死神を見ることは()()()までない。



 だが、声だけは不自由なく交わすことができる。




『感謝しよう。浪費した数世紀に意味が生まれた。さて色々あるだろうが、悪魔やら死神と契約すると言うことは、あれがあるわけだ。まずはそれから済ませよう。


 少女よ、君の願いを聞こうか』

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