30.今後の目標と魔法の才能。
「セイタ、ちょっといいかしら。」
ナハナさんはドアの前まで来てそう言った。
「ええ、どうぞ。」
無化に寝転がっていた俺は起き上がり、ドアを開けた。
「今後のことについて話さない?
トレントにも慣れたし、狩りの目標を変えるのかどうかも含めて。」
「わかりました。」
俺たちはまだ机以外に何も置かれていないリビングに移動して、椅子に座った。
「まずはモンスターについてですが、僕はもう少しトレント狩りを行いたいです。」
「どうして?」
「新しい武器を買いたいんです。
ナハナさんもそろそろ武器を新調しますよね?」
「そうね。
そのためにもお金を貯めないといけないわね。」
「そのためにトレントを狩り、武器が買えたら次はオークリーダーが良いんじゃないかと思うんですが、どうですか。」
「オークリーダーね、いいんじゃないかしら。
強さはかなりだけど、お金にはなるわね。」
オークリーダーの肉はオークの肉よりもかなり高く売れる。
一匹で金貨50枚ほどになるらしい。
ただその分危険でオークよりもかなり強い。
レベルアップして身体も頑丈になっているが、それでも一発でも攻撃を食らえばかなりやばい。
それにオークリーダーがいるのはトレントの森の奥の方なので基本的には日帰りができない。
危険な森の中で日をまたぐことになってしまう。
夜になれば視界も悪くなるし、これからの季節的には気温のことも考えなくてはならないだろう。
「とりあえず今の目標は武器の新調ね。」
「そうですね。
オークリーダーを狙うかどうかはその後に考えましょう。」
「それから、私たちもそろそろマジックバックを買った方が良いと思うのだけど、どうかしら?」
「いいですね。
どれくらいのを買いますか?」
「安いのを買っても使いずらかったら嫌だし、それなりの値段のものを買いたいわね。
出来れば金貨300枚以上のものが良いわ。」
「金貨300枚ですか・・・
結構大きな出費ですね。」
「まあその分しっかり働いてくれると思うわ。」
「そうですね。
これからもしばらくはトレント狩りの日が続きそうですね。」
「はー、頑張りましょ。」
「はい!」
「そう言えば、この前魔法について聞いたじゃないですか。」
「ああ、そうだったわね。」
「これから暇なときに教えてもらうことは出来ますか?」
「いいわよ。
と言っても私が教えられるのは火と水だからセイタにその才能がなければ教えられないけど。」
「頑張ります!」
「それから確か教会に行けば光魔法を教えてもらえるはずよ。
お金はかかるけど。」
この街にも一つ教会がある。
何という宗教を信仰しているのかは分からないが、特に厳しい教義があるわけではない。
むしろ教会というよりかは孤児院と言った方が近いものなのかもしれない。
そこでは街の孤児を保護したりしているほかに街の人がけがをしたときに直してもらうことができる。
教会には最低でも一人、光魔法を使える人がいる。
光魔法は主に支援や回復などをすることができる魔法で、光魔法を使える人が冒険者になることはあまりないそうだ。
光魔法を使える人は基本的には医者になるか、教会で働くためだ。
冒険者として危険な道を歩まなくても光魔法が使えれば安定した生活を送ることができるためだ。
一応この世界にも光魔法を使うことができない医者もいるのだが、光魔法を使える人の方が圧倒的に多い。
それでも光魔法を使える人が皆医者に慣れるわけではない。
医者になるには資格を得る必要があり、性格や素行に問題があれば医者にはなれない。
そういった問題のある光魔法使いが冒険者になることはままあるらしい。
というのはナハナさんから聞いたことであった。
「光魔法使えればかなり便利そうですね。」
「そうね、でも光魔法の才能があるのは結構少ないのよ。
私も習ったことがあるけど使えなかったわ。
せっかくだし、セイタの火と水の才能調べましょ。」
「どうやって調べるんですか?」
「簡単よ。
ちょっと手を出して。」
言われた通りに手を出すと、ナハナさんは俺の手の平の上に自分の手を重ねた。
柔らかなナハナさんの手に少しドキドキしてしまう。
「私が今から少しだけ魔力を流すわ。
それを感じ取ることができれば、その魔法を使えることができるの。」
そう言うとナハナさんは目を閉じて集中する。
俺も目を閉じて見様見真似で集中してみる。
これで何も感じることが出来なければ俺は魔法を使えないことになる。
せっかく異世界に来たのに魔法が使えないなんて悲しすぎる。
じっと黙って掌に集中していると、掌に何か違和感を感じた。
何といったらいいのだろうか、暖かい空気が流れてきているような感じがする。
その空気のようなものがナハナさんの手から俺の手に伝わってくる。
「どうかしら?
分かった?」
「はい、何か暖かいものを感じました。」
「ほんとに?!
じゃあセイタは火魔法の才能はあるわ。」
どうやら今のは火魔法の才能を判定するものだったらしい。
「よかったわね。」
「はい!」
これで魔法が扱えないということはない。
「じゃ、続けてやるわよ。」
そう言うとナハナさんは再び俺の手に手を重ねた。
再度目を閉じて掌に集中する。
すると今度はひんやりとした空気のようなものが流れてきた。
「来ました!
冷たい空気みたいなものが来ました!」
「すごいわ!
二つとも使えるのね。」
やった!
これも『異世界の才能』のおかげだろうか。
俺は火魔法と水魔法が使えることが分かった。
「せっかくだし練習してみましょ。」
そう言うとナハナさんは俺の手を引っ張って訓練所へと向かった。
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