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3.はじめてのせんとう

「セイタさんは何か得意な得物はありますか?」


「いえ、特にはないんですけど・・・」


そうだ。

異世界に来て舞い上がって冒険者になったが、俺はもともと格闘技の経験があるわけでも、何かチートをもらったわけではない。


恩恵として『異世界の才能』をもらったが何か武器を扱えるようになった気はしない。


どうしよう。

あまりに準備不足だ。


おれがオロオロとしているとアリスさんがある提案を持ち掛けてくれた。


「それではギルドで行っている訓練に参加しませんか?」


「訓練ですか?」


「はい。当ギルドでは初級冒険者の方のために訓練を実施しているのです。

強制参加ではありませんが、もし戦闘などに不安があれば利用することをお勧めします。」


そんなものがあるのか。

それはよかった。


「ぜひお願いします。」


「はい、ではこちらへ来てください。」



そう言うとアリスさんはギルドから出てギルドの裏に案内してくれた。


そこには学校のグラウンドほどの広場があり、何人かの冒険者と思わしき人たちがいた。


「ここは冒険者ギルドが所有している土地なので、冒険者の方であれば自由に使うことができます。」


「そうなんですか。」


「少し待っていてください。」


そう言うとアリスさんはグラウンドの中にいる一人のもとに向かい、何か話をして、その人と一緒に向かってきた。


「こちらギルド職員のゴードンさんです。」


「ゴードンだ。よろしく頼む。」


「セイタです。よろしくお願いします。」


「ゴードンさんにはセイタさんの教官として冒険者の基礎を教えてもらいます。」


なるほど。

俺はこの人から冒険者としての基礎を教えてもらえるらしい。


「というわけで、ゴードンさん、あとは頼みました。

セイタさんも頑張ってください。」


「ありがとうございます。」


そう言うとアリスさんはギルドの中に戻っていった。」


久しぶりに女性と話をしたような気がする。

美人なアリスさんだから余計緊張したが大丈夫だっただろうか。



そんなことを考えていると、ゴードンさんが話しかけてきた。


「改めて、ギルド職員のゴードンだ。よろしく頼む。」


「はい、よろしくお願いします。」



ゴードンさんはかなりガタイが良くなんというか体がゴツゴツとしている。


まさに戦士と言った感じだ。


「そうだなあ、まずは使う武器を決めるか。

何か使ってみたい武器はあるか?」


「いえ、特には決めてないのですが。」


「そうか、ならまずは片手剣を使え。」


「片手剣ですか?」


「そうだ。この訓練に一人で参加するということはパーティーを組んでいるわけではないんだろう。」


「そうですけど。」


「であれば、扱いやすい片手剣がいいと思うぞ。

片手剣であれば空いた方の手に盾を持ったりすることもできるしな。」


「わかりました。」



そう言うとゴードンさんは倉庫のようなところから一本の木製の剣を持ってきた。


「とりあえずはこれを使え。」


「ありがとうございます。」


俺はその剣を受け取り何となく構えてみた。


「こんな感じですか?」


「大体あってるがもう少し力を抜け、それから持ち方はこうだ。」


俺の持っているものと同じような剣を持ったゴードンさんが構えて見せてくれた。


真似をして構えなおしてみる。


「まあとりあえずはそれでいい。じゃあ早速振ってみろ。振り方は分かるか?」


「いえ、初めて握ったもので。」


「そうか、じゃあ俺の真似をしてみろ。」


「わかりました。」



ゴードンさんが何度か剣を振り、お手本を見せてくれた。

力強い振りで、木製ではあるが当たれば骨の1,2本は簡単に折れてしまいそうだ。


俺はゴードンさんの真似をして何度か剣を振る。


「いいぞ。変な癖がついてない分素直な太刀筋だな。」


「ありがとうございます。」



それから1時間ほど素振りなどを行った。


「ちょっと休憩しよう。」


「はい。」


訓練所の中にあるベンチに座り少し休憩をする。


「休憩のあとは街の外へ出てみるぞ。」


「もうですか!?」


「ああ、もう少し素振りなんかをしてもいいが、いくら素振りをしたところで実際にモンスターと戦ってみないと分からんこともあるだろ。

それにおまえはなかなか呑み込みが早い。

当然俺も一緒に行くから心配するな。」


これが『異世界の才能』の効果なのだろうか?


日本にいたときよりも明らかに体が動かしやすいのだ。

真似をするにも頭で考えたことが体に伝わりやすいような気がする。


日本にいたときも運動音痴というわけではなかったが、こんなに早くできるようになるとは思わなかった。


「わかりました。頑張ります。」


「そんなに気負う必要はないぞ。

今日のところはせいぜいスライムを相手にするくらいだ。

スライムなら攻撃されてもまあ大丈夫だろ。」


「そうですか。」


なんか俺のイメージではスライムと言うと酸とかで色々溶かしたりすることもあるんじゃないかと思うが、この世界ではそんなことないんだろうか。



しばし休憩をした後、俺とゴードンさんは門から外に出て草原のようなところに来ていた。



「スライムくらいは見たことがあると思うが、あれの攻撃は当たっても少し衝撃を受けるくらいだ。

怖がらずに振れば倒せるはずだ。」


この世界で20年も生きていればスライムは普通に見るのだろうが、あいにく俺は一度も見たことがない。


「あそこにいるぞ。」


そう言ってゴードンさんが指さす先にはバスケットボールほどの大きさの青い塊がノソノソと動いている。


なるほど、あれがスライムか。


「まずは俺がやってみよう。」


そう言うとゴードンさんはスライムに近づいていく。


「そろそろ攻撃が来るぞ。」


スライムまで1mちょっとのところでゴードンさんがそう言うとスライムが動き、飛び跳ねた。


まさしくバスケットボールのパスぐらいの早さだろうか。


「よいしょ!」


ゴードンさんが木剣でそれを斬り返す。


木剣はスライムの身体を割き、地面に落ちたそのままスライムは動かなくなった。


「まあこんな感じだ。

切り裂くのは難しいと思うがはじき返すくらいならできるはずだ。

スライムが落ちたら木剣で突き刺せば倒せるだろう。

次はお前がやってみろ。

ほらそこにいるぞ。」


「わかりました。」


俺は近くにいたスライムに近付いていく。


「そろそろ来るぞ。」


スライムが飛び跳ねてこちらに向かってくる。


俺は木剣でスライムを叩き返す。

柔らかめのバスケットボールを叩いたような感触だ。


ドスッとスライムが地面に落ちる。

落ちたところを木剣で突き刺す。


グッと突き刺すと剣が刺さりスライムは動かなくなった。


「どうですか?」


「ああ、大丈夫だ。」


やった、初めてモンスターを倒したぞ。

なんだかあっけなかったが嬉しい。


「これを見てみろ。」


そう言ってゴードンさんはスライムの身体の一部を剣の先で示す。


そこには小さな石のようなものがある。


「これがスライムの魔石だ。

まあギルドで買い取りも行っているが、子供の駄賃程度にしかならん。

まあ一応取っとけ。

この袋に入れておけ。」


そう言うとゴードンさんは小さな革製の袋を渡してくれた。


魔石があるのか。

親指の爪ほどの大きさの魔石を取り出してみる。


紫色のそれはスライムの体液で少し濡れているが、俺が異世界で初めて倒したモンスターの魔石だ。


俺はそれを袋に入れた。


「よし、初めての戦闘はどうだ?」


「少し緊張しましたが、意外と大丈夫でした。」


「まあそうだろう。スライムであればおおよそ冒険者ではない街の住人でも倒すことができるしな。」


まあたしかにあの弱さなら特に訓練をしてない人でも倒すことは出来るだろう。


「ただ、モンスターを相手にするときはたとえそれがどんなモンスターであろうと油断はするな。

その慢心が後々大きなけがにつながるからな。」


「はい、わかりました。」



「じゃあ次はスライムの攻撃を受けてみるか。」


「わざとですか?」


「ああ、モンスターが強くなれば攻撃を受けるとやばいものもいるが、さっきも言ったがスライムであれば多少衝撃を受けるくらいだ。

それに攻撃を受けるつもりで受けたものと不意に受けたものではダメージも変わるからな。

まずはわざと受けてみろ。

一回受けたらとどめを刺していいぞ。」


「わかりました。」



近くにスライムを見つけたので近付いていく。


そろそろ来るだろうか。


スライムが俺に気づき飛び跳ねてきた。

ドスッと体に当たり地面に落ちる。


落ちたスライムに剣を刺して倒す。



「よし、いいぞ。

どうだ?」


「はい、少し衝撃が来ましたが大丈夫です。」


内心はかなりビビっていたのだが、意外と大丈夫であった。


「まあ、スライムだとそんなもんだな。

じゃあもう少し、モンスターに慣れるぞ。」


「はい!」


それから俺は10匹ほどのスライムを倒して街に帰った。


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