17.魔法職って後衛のイメージだけど、後ろから魔法が飛んでくるのはかなり怖そう。
食後少し休んでから、俺たちは森に向かった。
まずはお互いの戦い方を知るために一人ずつ戦ってみることになった。
まずは俺から。
いつも通り向かってきたゴブリンの首を狙って剣をふるう。
首の骨を折られたゴブリンたちはなすすべもなく地面に沈んだ。
「なかなかやるわね。
前衛の動きに詳しいわけではないけど、基本に忠実な動きね。」
ナハナさんはそう評価してくれた。
そう言えば俺も他の片手剣を使っている人がどういう動きをしているのかは見たことがない。
唯一見たことがあるのはゴードンさんだけだが、果たしてゴードンさんの主力が片手剣であるかどうかは聞いたことがない。
今度聞いてみようかな。
「次は私の番ね。」
そう言うとナハナさんはゴブリンを探し始めた。
魔法使いと言えどもソロで活動しているだけあり、森を歩く速度などは俺とそう大差ない。
すぐにゴブリンが現れ戦闘になる。
ナハナさんは手に持った杖を構えると呪文を唱え始めた。
「水の心よ、わが問いかけに答えたまえ。雨垂れは一筋の光となりて石を穿つ。ウォーターショット!」
どこからともなく現れた水のしぶきが弾幕のようにゴブリンたちを襲う。
ゴブリンたちはナハナさんにとびかかるまでもなく地面に倒れた。
「どうかしら。
私の魔法は。」
「す、すごいですね。」
悲惨な姿で倒れているゴブリンたちを見て少し引いてしまった俺は顔を引きつらせながらそう答えた。
「まあ、それほどでもあるかもね。
私これでも村ではなかなかの魔法使いだったもの。」
自慢げにそう言いながらナハナさんはゴブリンの胸から魔石を取り出す。
「でもこれ僕に当たったら痛いじゃ済みそうにないですけど・・・。」
「だ、大丈夫よ。
そんなへまはしないわ!
・・・たぶん。
まあちょっとは覚悟しといてもいいかも。」
おい。
そんな宣言はうれしくないぞ。
「まあでも実際当てることはないわよ。
魔力制御にも自信あるから。」
そんなことを言っているが、信用してもいいものなのだろうか・・・
「まあでもとりあえずやってみるしかないですよね。
次のゴブリンから二人で戦ってみますか?」
「そうね、一撃で倒さないようにしながら戦ってみましょうか。」
そう言うわけで、次のゴブリンが出てくる。
今回は3匹。
前に2匹が出ており、その後ろにもう一匹ついてきている形だ。
「後ろの1匹をお願いします。」
「わかった。任せて!」
俺が前に出て2匹のゴブリンを止める。
「清らかなる水よ、悪を退け、わが身を守れ。ウォーターショット!」
後ろのゴブリンにナハナさんの魔法が飛んでいき、当たったゴブリンが衝撃を受けて倒れる。
「セイタ、右によけて!」
ナハナさんの指示に従って左のゴブリンの前を空けて魔法が通る道を作る。
すぐに魔法が飛んできてゴブリンに当たった。
最後の一匹は俺が剣で仕留めた。
ナハナさんの魔法に当たったゴブリンたちは動いているが、ダメージが大きいのか攻撃ができるほどではない。
俺が剣で首を折り、仕留めた。
「どうかしら?」
後ろから満足そうな顔でナハナさんが近付いてきた。
「上手くいきましたね。
指示も分かり易くてよかったです。」
「そうね。
後はこれをオークとの戦闘の時のようなもっと緊迫した場面でできるかどうかだけど・・・それは練習を重ねるしかないわね。」
「はい。
頑張りましょう。」
それから俺たちはゴブリンの群れを5グループほど倒してから街に帰った。
「疲れましたね。」
「そうね、一人の時とは違う戦い方だし、もっと練習が必要そうね。」
「明日もしますか?」
「セイタが良いならぜひやりましょう。」
ということで明日もナハナさんとの共同戦線が組まれることになった。
まあ俺もぶっちゃけナハナさんのような美人と一緒に行動できることはうれしい。
いや、すごくうれしい。
このままパーティーを組めたらな、なんて思うがそれはナハナさんの気持ちもあるため分からない。
それに気を焦って今の関係が崩れてしまうのももったいないし。
今俺にできることは訓練を重ねて、ナハナさんに必要とされるような冒険者になることだ。
宿に帰った俺はしっかりとご飯を食べて体を休めた。
それから1週間ほどはナハナさんと一緒にゴブリン狩りを続けた。
少し慎重すぎるかもしれないが、冒険者なんて身体あってのものだ。
準備不足で怪我をするくらいなら、過剰なほどの準備をしておいた方が良い。
と俺は思っている。
幸いナハナさんも俺と似たような慎重派な人だったので、俺たちはコツコツとゴブリンを倒していた。
「そろそろオークに挑まないか?」
宿屋での夜ご飯の後、ナハナさんがそう提案してきた。
確かにもう準備は十分できたと思う。
連携の確認も取れたし、いいころ合いかもしれない。
「そうですね。
行きましょう。」
「よし、じゃあ明日はオーク狩りだな。
しっかり準備をしておこう。」
「オークを倒すのはいいですけど、倒したとしてどうやって持って帰りますか?」
ああ、それなら朝ギルドに行ってマジックバックを借りていこう。」
「え、マジックバックって借りられるんですか?」
「なんだ知らないのか?
オーク狩りに必要なものぐらいだと一日につき大体銀貨5枚で借りられるぞ。
ただし、紛失したり、破損した場合は買い戻し分の費用を請求されるがな。」
「そうなんですか。」
そうなのか。
ゴードンさんも教えるのを忘れていたのだろうか。
いや、それとも俺が無茶な狩りをしないようにわざと伏せていたのだろうか。
まあどちらにしろこれで荷物の運搬なんかは大丈夫そうだ。
「明日は大変だからな、早めに寝るか。」
「そうですね。」
「ああ、じゃあお休み。」
「おやすみなさい。」
俺たちはそれぞれ部屋に戻ると早めに布団に入って体を休めたのだった。
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