13.ひよっこ卒業?訓練終了。
「よーし、帰ってきたぞー!」
俺は門をくぐると同時に安堵の声を上げた。
「いやー今回の戦闘は中々苦労してたな。」
ゴードンさんは少し安心したような顔でそう言った。
「もう少し頑張るぞ。
ギルドに着いたら解体が待ってるからな。」
「はい。頑張ります。」
ギルドに着くと、横にある施設に入った。
中に入ると血の匂いが漂ってくる。
おそらく少し前に誰かが使用したのだと思われるが、道具は整理してあり、においの割には血も残っていない。
「ここで解体を教えてやる。」
そう言うとゴードンさんは例の巾着袋からオークを取り出した。
「ゴードンさん、気になってたんですが、その袋は何なんですか?
明らかにオークが入るような大きさじゃないんですが。」
「これはマジックバックだ。
見た目以上に物が入る不思議なバックだ。
少し高いが、多くの冒険者は持ってるぞ。」
そんな便利なものがあるのか。
確かに異世界ではド定番もド定番だがこの世界にもあるのか。
まあ、どんな構造になっているのかは分からないが便利なものには違いない。
買えたら買いたいが、おそらく高いのだろう。
まあ、今はそんなことより解体だ。
それから俺はゴードンさんに一通り解体について教えてもらった。
「すべてのモンスターを解体できるようになる必要はないが、基本のモンスターについては覚えておいて損はないだろう。
まあギルドに言ってもらえれば手数料は払ってもらうが解体してやるから心配する必要はないぞ。」
ギルドでも解体してくれるそうだが、手数料はモンスターによってまちまちだそうだ。
「よーしこんなもんだろ。」
解体が終わるとそこには、骨と肉、それから内臓に分けられたオークが並べられていた。
それからゴブリンのものよりも大きく赤子の拳ほどは有ろうかというオークの魔石もあった。
解体作業などしたこともない俺は解体中に少し気持ち悪くなったが、ゴブリンの首ちょんぱと魔石回収のこともあり、終わるころには慣れてきた。
「これは全部ギルドで買い取りでいいのか?」
「はい。よろしくお願いします。」
「わかった。今回の解体は訓練の内だから手数料はいらないからな。」
解体はゴードンさんにも手伝ってもらったのだが、手数料はいらないらしい。
俺は今日狩った分のゴブリンの魔石も合わせてゴードンさんに渡した。
ゴードンさんは一度ギルドの中に行くようなので、俺も一度ギルドに向かった。
冒険者が少なく、カウンターが一か所しか開いていなかったのだが、他の冒険者が使っているため、カウンターに並びゴードンさんを待っていた。
すると後ろの方で仕事をしていたアリスさんがカウンターについてくれた。
「こんにちはセイタさん。」
「こんにちは、アリスさん。
お久しぶりです。」
この世界に来てから約2か月。
ギルドにはほぼ毎日来ていたのでアリスさんと話すこともそれなりにあった。
美人のアリスさんと話すのはまだ少し緊張するが、普通に世間話をできるくらいには親しくなっていた。
まあアリスさんからすれば普通に仕事として冒険者の相手をしているぐらいのつもりなのだろうが。
そんなこんなでアリスさんと話をしているとゴードンさんが戻ってきた。
「よう、アリス。あんまりセイタをたぶらかすなよ。」
「もうゴードンさん、そんなことしてませんよ。
ねぇ、セイタさん。」
「は、はい。」
ニコっとこちらを振り向くアリスさんの笑顔がまぶしすぎるせいか顔をそむけてしまった。
「そんなことより、ほらセイタ。
これが今日の分の報酬だ。」
オークの肉が金貨14枚、魔石が銀貨1枚。
それからゴブリンの魔石分で銀貨1枚と銅貨5枚。
「これでようやく冒険者としての一歩を踏み出した感じだな。
今日の戦いを見ている限りは大丈夫だと思うが、これからも頑張ってくれよ。」
「はい、今までありがとうございました。」
そう、今日のオーク討伐でゴードンさんとの訓練は終わる。
基本的には冒険者は自己責任な部分が大きい。
怪我をしてもギルドからは休業補償も労災もない。
その分仕事を受けるも受けないも自分の裁量で行うことができる。
高ランクになればそれこそ一か月に一回働けば、後はのんびりと暮らすことができるような報酬が得られることもある。
まあそんな冒険者はほんの一握りなのだが。
「まあ何かあれば対応できる範囲で助けてやるからいつでも来いよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「それから、貸していた剣と盾だが無料でやるわけにはいかんが、合わせて金貨10枚で売ってやるが買うか?」
「いいんですか!?お願いします。」
本来であれば剣だけでも最低金貨50枚。
もう少しゴブリン狩りを続ければ買えないわけではないが、この剣も品質的に悪いものではないとおもう。
それに盾もついてくるとなれば即決であった。
「それからオークを倒せるようになったからランクアップだな。
それはアリスに任せるか。」
「そうですね。
セイタさん、ギルドカードを貸してください。」
言われた通りにギルドカードを渡すとアリスさんは後ろの機械を操作した。
「どうぞ。これで今日からセイタさんはEランクです。」
「ありがとうございます。」
帰ってきたカードは今までFと書かれていた場所にEと書かれていた。
俺は金貨10枚で剣と盾を買い、残りの金貨4枚と銀貨2枚、銅貨5枚を受け取るとゴードンさんとアリスさんにお礼を言ってギルドを出た。
ちなみにギルドの直営店はランクがDになるまでは泊まることができる。
今のところ特に不便があるわけではないので、俺はそのまま直営宿で泊まることにした。