12.オーク2mって大きすぎない?何食べてるんだよ。
今日も今日とて日が昇る前に起きた俺は訓練所で身体を動かしていた。
盾と剣を使う動きにもだいぶ慣れたし、今日はオークとの初戦闘が待っている。
はやる気持ちを抑えながら、最後の予行演習を行った。
朝食を食べた後、ステータスを確認する。
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盾術 レベル1
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盾術が手に入っている。
手に入ったからと言って格別能力が上がるわけではないが、モチベーションは上がる。
俺は昨日買った道具を簡易的なバックに入れて、冒険者ギルドに向かった。
ギルドでゴードンさんと合流し、森に向かう。
今回も森では俺が先頭に立って歩く。
ゴードンさんは基本的には俺についてくるだけだ。
俺は道中に出てくるゴブリンを倒しながら森のさらに奥に向かう。
ゴブリンを倒すことはさほど難しくない。
しかし、今回は倒すだけでなく、倒した後の武器の手入れ、魔石の確保、それから休憩の有無まで自分で考えなくてはならない。
一応お昼ご飯はもってきているが、時間が遅くなるほど疲労がたまる。
俺はゴブリンとの戦闘は出来るだけ避けながらオークの活動範囲まで向かった。
そろそろオークが出てきてもおかしくない。
オークはゴブリンに比べて体が大きいため、遠くからでも発見しやすい。
俺は周囲を注意深く見まわしながら森を歩いた。
しばらくして、前方にオークが見えた。
得物を探しているのか辺りをキョロキョロと見まわしているが、こちらには気づいていないようだ。
「いきます。」
俺はゴードンさんにそう伝えるとゆっくりとオークに近付いていく。
木の陰に隠れオークの様子をうかがう。
まだこちらに気づいていないままオークが背を向ける。
俺は木の陰から飛び出し脚の膝の裏辺りを小さな鋭いナイフで刺した。
ブシュッ
っと音がして、血が噴き出る。
このナイフは昨日のうちに買っていたもので、武器として使うには心もとないが俺の使っている剣と比べて鋭く、しっかりと刃がついている。
その鋭いナイフを刺すと同時に横に動かし、さらに傷を広げる。
「ブオッー!」
オークは突然の攻撃に悲鳴を上げ、攻撃された後ろ側に振り向く。
俺はナイフから手を離すと素早く剣と盾を構えてオークから距離をとる。
オークは攻撃をしたのが俺だと気づき俺に向かって手を振り下ろす。
ただの素手の攻撃だがこの攻撃に当たると当たると、動きが止まってしまう。
俺は攻撃を受けるというよりも盾を使って軌道をずらすようなイメージでオークの手を盾に当てる。
直撃したわけではないにも関わらず左手に大きな衝撃が加わる。
日本にいたときであれば確実に骨が折れていただろうが、こちらの世界ではレベルアップしたおかげか何とか耐えることができた。
オークは攻撃をすかされてバランスを崩した。
俺は即座に体勢を立て直し、近くの木の裏に身を隠す。
再びオークがこちらに向かってくるが、ひざの裏を刺されているため、上手く足が動かずに、前のめりにバランスを崩した。
その瞬間、俺はオークの前に出ると腕を狙って剣を振りぬく。
剣が腕の前腕辺りに当たる。
骨を折ることは出来なかったが、剣は肉を切り裂きオークがさらに悲鳴を上げた。
オークはやけになったのか腕を振り回しながら俺に近付こうとする。
俺は再び木の裏に逃げ込み距離をとる。
オークはその場で手を振り回しながら俺をにらむ。
先ほどのことがあるためか安易にこちらに来ずにその場で待っているが、オークの傷はすでに2か所。
膝の裏と右手の前腕から血を流している。
俺は何度か剣で切りつけるようなフェイントを入れてみるが動く気配はない。
このままここで戦闘を続けていると他のモンスターが来るかもしれない。
運よくオークのほうに向かってくれればいいが、俺のほうに来た場合は一気にピンチになる。
俺は意を決して左手を前にしてオークのほうに向かっていく。
オークが俺のほうに向かって攻撃しようとする。
振り上げた手を振り下ろそうとしたその瞬間、おれは左手でそれを止めると同時にオークの目に向かって剣を突き出した。
剣の先はオークの右目をとらえると、そのまま奥深くまで突き刺さった。
オークの動きが止まった瞬間を逃さず、俺は目から剣を引き抜き膝に向かって振りぬく。
石でも殴ったかのような感触が剣から手に伝わり、一瞬手がしびれる。
俺は必死に剣をつかみ続けもう一度膝を切りつける。
その衝撃に耐えかねた膝が曲がり、オークが地面に膝をつく。
俺は一歩下がると同時にオークの様子をうかがう。
オークは両手で目を押さえ、痛みに悶絶しており、俺のほうを確認する余裕もない。
俺は盾を離し、両手で剣を持つと体の力を抜いて首に向かって思いっきり剣を振りぬいた。
確かな手ごたえを感じ、剣はオークの首をとらえた。
オークは一瞬動きを止めたかと思うと、そのまま前のめりに倒れた。
俺はもう一度剣を構えると、倒れたオークの首に向かって剣を突き刺し、確実に息の根を止めた。
「はあっ、はあっ。」
今までにない激戦にかなり体力を消費した。
それどころか、一歩間違えば大けがという戦いに緊張しないという方が難しいだろう。
しかし、今は森の中である。
他のモンスターも闊歩する中では気のゆるみは許されない。
俺は盾を拾いなおして、掌の汗をぬぐった。
「よしよし、よくやったぞ。」
側で戦いを見ていたゴードンさんが出てきた。
「あ、ありがとうございます。」
「それじゃあ、一回草原に戻るか。」
「はい。」
ゴードンさんはオークの足を持つと巾着のような袋を取り出し、その中に突っ込んだ。
「よし、帰りも先に歩いていけるか?」
「はい、行きます!」
俺は何とか森を出るまで先頭で歩き、街に帰った。
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